2026-10-22 コメント投稿する ▼
介護老人保健施設の経営危機、基本報酬と処遇改善の抜本的見直しを
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、全国大会の場で、老健の持続可能な運営のために処遇改善と基本報酬の抜本的な引き上げを強く訴えています。 この提言は、日本の介護保険制度全体が直面する構造的な課題を浮き彫りにするものであり、来たる2026年の介護報酬改定において、政府がどのような判断を下すかが注目されます。
老健が担う重要な役割と直面する経営課題
介護老人保健施設は、要介護者が在宅復帰を目指す上で重要な役割を担っています。医療と介護の中間施設として、利用者のリハビリテーションや医療ケアを提供し、在宅生活への移行を支援する地域包括ケアシステムの中核を担う存在です。しかし、その重要な役割に反し、多くの老健が厳しい経営環境に置かれています。
全老健の調査によれば、医療連携強化型老健や在宅強化型老健など、特に高度なサービスを提供している施設ほど赤字幅が大きい傾向が見られます。これは、高い質を追求すればするほど経営が困難になるという、現在の介護報酬制度の矛盾を示唆しています。物価高騰や人件費の上昇が続く中、介護事業者の努力だけでは吸収しきれない状況が慢性化しているのです。
物価高騰と人件費上昇の重圧
施設運営を圧迫する最大の要因の一つが、光熱水費や食材費といった物価の継続的な高騰です。特に、電気代などのエネルギーコストは、円安の影響も相まって過去に例を見ない水準で上昇しており、医療機関併設型の老健では、医療部門と共通の光熱費を老健部門に転嫁せざるを得ないケースも少なくありません。
また、介護人材の確保と定着を図るための人件費上昇も、経営に大きな負担となっています。介護職員の賃上げは、国の政策として推進されていますが、現在の介護報酬ではその原資が十分に確保されているとは言えず、事業者が自己負担で対応するケースも多く見られます。これは、職員の処遇改善を真に進めたい事業者にとっては、大きなジレンマとなっています。
処遇改善加算の課題と基本報酬の必要性
介護職員の処遇改善は喫緊の課題であり、政府もこれまで処遇改善加算を導入してきました。しかし、その加算率が低く、事務負担も大きいことから、期待されたほどの効果を上げていないという声が現場から上がっています。特に、医療職と比較して介護職の給与水準が低いことは、若年層の介護分野への参入を阻む大きな要因となっています。
全老健の東会長は、処遇改善加算の抜本的見直しに加え、基本報酬の大幅な引き上げこそが重要であると強調しています。加算制度だけでは、施設全体の安定経営や質の向上には繋がりません。安定した経営基盤があってこそ、職員のモチベーション向上やサービス向上への投資が可能となります。基本報酬が低迷したままでは、施設の存続自体が危ぶまれ、結果として利用者に提供されるサービスの質の低下に繋がりかねません。
2026年介護報酬改定に問われる国の姿勢
来たる2026年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本の人口構造が大きく変化する「2025年問題」を乗り越える上で極めて重要な年となります。この年の介護報酬改定は、超高齢社会における介護提供体制の持続可能性を左右する大きな分岐点となるでしょう。人材の確保なくして、質の高い介護サービスを安定的に提供することは不可能です。
政府、特に厚生労働省には、介護現場の実態を深く理解し、物価高騰や人件費上昇を十分に反映した、抜本的な介護報酬改定が求められます。単なる小幅な改定ではなく、老健がその役割を全うし、将来にわたって地域社会の高齢者を支え続けることができるような、力強い支援策が不可欠です。この改定が、介護保険制度の信頼性と持続可能性を高める機会となることを強く期待します。