2026-10-10 コメント投稿する ▼
田中甲・市川市長、モスク公園礼拝禁止の根拠に事実誤認 発言を訂正
千葉県市川市の行徳モスクが約30年にわたって市立公園で続けてきた集団礼拝を、田中甲市長が2026年5月に初めて不許可とした。田中氏は記者会見でモスク隣の住人が「精神的に耐えられず転居した」エピソードを方針転換の根拠として繰り返し語っていたが、取材によって事実と大きく異なることが判明した。元住人は老朽化した家を売却しただけと証言し、情報源の不動産業者も別の物件の話だったと語った。田中氏は2026年10月6日に誤りを認めたが、集団礼拝を認めない方針は維持している。
行徳モスクと南沖公園 約30年の慣行
千葉県市川市の行徳モスクは1997年の設立以来、毎年2回、イスラム教の主要な祝祭に合わせて、モスクに隣接する南沖公園を文化交流行事の会場として活用してきました。礼拝者がモスク内に収まりきれない際は、公園の一角でシートを敷いた集団礼拝も行われており、市川市はこれをおよそ30年にわたって認めてきた経緯があります。行事は地域住民にも開放され、食文化の紹介など多文化交流の機会としても根づいていました。
ところが2026年5月、田中甲氏(市川市長)は同年の犠牲祭に合わせた公園使用申請に対し、「公衆の公園の利用に支障を及ぼさないとは言い切れない」として初めて集団礼拝を不許可としました。条例や内規は変えず解釈の変更によって対応を転換したもので、田中氏は5月29日の定例記者会見で「本来の公園の使用目的から逸脱し始めたと認識した。私が判断した」と述べ、今後も方針を変えることはないと強調しました。この問題は市議会でも6月に取り上げられ、市の担当者は「これまでの利用でトラブルの事例は確認できていない」と答弁しています。
市長が語った「隣人は精神的に耐えられず転居した」
田中氏はその5月29日の会見で、方針転換の根拠の一つとして市内の不動産業者から聞いたエピソードを語りました。モスクに隣接する空き地に元々あった家について触れ、そこに住んでいた人が「イスラム教徒の皆さん方が出入りする場所の隣に生活することが気持ちの上で難しいということで、撤去された」と発言しました。田中氏はこれを「均衡が取れた多文化共生社会をつくるために、公園で礼拝する姿を作ってはならない」という考えの根拠として位置づけました。
この話は同年7月17日の定例会見でも再び持ち出され、「公園で礼拝する姿を、住民の方々はどのように思っているかというのを、私の中で判断した上で結論を出した」と語りました。首長が公式の会見で同じエピソードを2度繰り返したことで、「隣人の転居」は地元住民の意見を示す重要な根拠として受け止められてきました。
「公園は誰でも使える場所。30年続いてきても、ルールは状況に合わせて見直せると思う」
「市長が地元の声を聞いた上で判断したなら、首長として責任を果たしたと思います」
「でも根拠が事実じゃなかったなら話は違う。30年の慣行をそれで変えていいんですか」
「行政が情報を確認せずに判断したとしたら大問題。法的根拠はどこにあるんですか」
「隣の人が嫌で引っ越したって話、最初から本当なのかなとずっと気になっていた」
取材が明かした元住人と不動産業者の証言
取材によって、この「隣人転居」エピソードの実態が明らかになりました。モスクの隣にある3階建ての家で一人暮らしをしていた元住人の男性によると、転居の理由は「家が老朽化した上に大きすぎてもてあましていた」からでした。モスク側から売買を持ちかけられた際に「願ったりかなったり」と感じ、5年前に売却したといいます。男性は信者たちとの関係に問題はなかったとも述べており、田中氏の発言について「事実と乖離している気がする」と困惑を示しました。
また、田中氏が話を聞いたとされる市内の不動産業者も取材に応じました。業者は「モスクがあることで土地が売れないという話はした」と認めながらも、それはモスクに隣接する土地ではなく、近隣の別の物件についての話だったと証言しています。田中氏がこの二つの異なる話を混同し、誤った認識のまま公式会見で2回にわたって語り続けていたことが浮かび上がりました。
誤りを認めたが「方針は変わらない」
取材を受けた田中氏は2026年10月6日、メールで見解を回答しました。改めて不動産業者に確認した結果、「伺った話は、モスクに隣接する土地ではなく、近隣の土地について『モスクがあることで土地が売れない』という趣旨のものだった。これを隣接地の方の転居と結びつけて受け止めていたが、両者は別の話だった」と誤りを認めました。
ただし田中氏は「モスク周辺の住民にさまざまな声があるという認識に変わりはない」と述べており、集団礼拝を認めない方針を維持しています。行政が政策判断を行う際に事実に基づいた根拠を示すことは市民への説明責任の根幹です。事実誤認を含む発言が公式の場で繰り返され、30年近い慣行の変更を正当化する根拠として機能していた事実は、市川市行政の意思決定プロセスへの信頼性に深刻な疑問を投げかけています。
まとめ
- 田中甲・市川市長は、行徳モスクによる市立公園での集団礼拝を2026年5月に約30年ぶりに不許可とした
- 市長は記者会見で「モスク隣の住人が精神的苦痛で転居した」エピソードを判断根拠の一つとして2回公言した
- 取材で元住人は「老朽化した家を売っただけ」と証言し、情報源の不動産業者も「別の物件の話だった」と語った
- 田中氏は2026年10月6日にメールで誤りを認めたが、集団礼拝を認めない方針は変えないとしている
- 事実確認が不十分な情報が行政の公式判断根拠に使われた点で、透明な意思決定のあり方が問われている
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