3月24日に開かれた参議院の環境委員会で、日本共産党の山下芳生参議院議員が、アジア諸国へのCO₂輸出や化石燃料支援をめぐる日本政府の姿勢を厳しく追及した。とくに、海外でのCO₂地下貯留(CCS)やアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想を通じた化石燃料の延命策が、地域の再生可能エネルギーへの移行を妨げていると批判している。
「CO₂の輸出」は新たな環境植民地?
山下氏はまず、日本が国内で排出したCO₂をアジア諸国に送り、地下に長期間貯留しようとするCCS構想に疑問を投げかけた。世界中の市民団体や環境団体、90団体が日本政府に抗議文を提出しており、山下氏は「200年、300年もCO₂を海外で貯留し続けるような制度を、他国が簡単に作れるはずがない」と懸念を示した。
資源エネルギー庁の木原普一政策総括調整官は「受け入れを模索する国もある」と応じたが、山下氏は具体例としてマレーシアを挙げた。同国ではCCSの受け入れ法案が検討されているものの、市民からの強い反発が起きているという。
「マレーシアは過去に日本などのプラスチックごみを受け入れ、その処理で市民が健康被害を受けた歴史がある」と山下氏は述べ、「廃棄物植民地主義」とも言える状況を繰り返すべきではないと強く批判した。
AZEC構想の裏に見える“化石燃料延命策”
山下氏はさらに、日本が主導するAZEC構想についても問題点を指摘した。この構想のもとでは、日本企業がアジア各国と結んだ70件以上の覚書に基づき、石炭火力発電所でのアンモニア混焼や液化天然ガス(LNG)の活用などが進められている。
「これらはアジアの再エネシフトを妨げ、海洋生態系や漁業への悪影響、さらには住民の健康被害にもつながる」と山下氏は批判。名目上は“ゼロエミッション”を掲げつつ、実態としては化石燃料への依存を延命しているだけではないか、という問題提起だ。
環境相は前向き答弁も、議論は平行線
こうした批判に対し、浅尾慶一郎環境相は「CO₂の海外貯留は有力な選択肢だ」と述べ、政府としてはCCSを含めた多様な手段での脱炭素を模索している姿勢を示した。
しかし山下氏は、「リスクがあり、将来の見通しも立たない化石燃料延命ではなく、再生可能エネルギーの導入支援にこそ力を入れるべきだ」と述べ、化石燃料に依存し続ける日本のエネルギー政策の転換を求めた。
見えてきた課題と今後の展望
日本政府が進めるAZEC構想は、「脱炭素」と「経済成長」の両立を掲げているが、その具体策には国際的な批判が高まりつつある。特に、CO₂を他国に押し付けるようなCCS戦略は、過去の「ごみ輸出」と同様の構図を生みかねない。
再生可能エネルギーの普及を本気で後押しするのか、それとも技術的名目で化石燃料の延命を続けるのか。いま、日本のエネルギー外交のあり方が問われている。