東日本大震災から14年が経過した今も、福島県の農業現場では原発事故による放射性物質の影響が色濃く残っている。11日に開かれた参院の東日本大震災復興特別委員会で、日本共産党の紙智子議員は、福島の農家の健康を守るための対策を国に強く求めた。
未だ高濃度の放射性物質が検出
紙氏は、福島県内2600カ所で土壌の放射性セシウムを測定した福島県農民連のデータを紹介。中でも桑折町の桃園では1平方メートルあたり20万8800ベクレル、野菜畑では15万9400ベクレルと、非常に高い数値が出ていると指摘した。
「こんな環境で農作業を続けていれば、粉じんを吸い込んでしまうこともある。健康への不安は切実です」と紙氏は訴えた。実際、これらの値は放射線管理区域の基準(4万ベクレル)を大きく超えており、農家の身体的リスクは看過できない水準にある。
農家に法的保護なし
放射線に関わる作業では、原発や医療機関で働く労働者には厚生労働省や原子力規制庁が定める規則があり、健康被害の防止が義務付けられている。一方で、農業従事者には明確な法的保護がないのが実情だ。
農林水産省の方針では「厚労省のガイドラインにのっとって作業する」としているものの、義務ではなく、実効性に乏しい。「国は14年間も福島の農家を置き去りにしてきた。農水省が責任を持って健康を守るべきだ」と紙氏は厳しく追及した。
これに対し、江藤拓農水相は「ご指摘を踏まえて福島に寄り添っていく」と答えるにとどまり、具体的な対策には踏み込まなかった。
生活再建支援にも不満
また、災害救助法の適用地域で貸し付けられた災害援護資金についても、紙氏は「償還猶予では足りない。困窮している人には返済の免除など踏み込んだ支援が必要だ」と主張した。
- 福島の農地では、現在も高濃度の放射性物質が確認されている。
- 農作業従事者には、放射線障害を防ぐ法的な安全策が整っていない。
- 紙議員は、農水省による健康対策と土壌汚染の抑制支援を要請。
- 災害援護資金についても、返済免除など生活再建支援の強化を訴えた。
原発事故の風化が進むなかで、最前線の農家はいまだにリスクを抱えながら日々働いている。国が本気で「復興」を掲げるのであれば、現場の声に耳を傾け、具体的な支援を急ぐべきではないだろうか。