立憲民主党は4月8日、党内の「選択的夫婦別姓実現本部」(本部長:辻元清美代表代行)の会合を開き、今国会への提出を目指す民法改正案の内容を正式にまとめた。ポイントとなる「子どもの姓の決め方」については、1996年に法制審議会が示した案にならい、結婚のタイミングであらかじめ決めておく方式を採用する方針を固めた。
長年議論されてきた選択的夫婦別姓制度だが、他党との温度差や優先順位の問題もあり、今国会での成立には依然として不透明感が漂っている。
要点
- 立憲民主党が選択的夫婦別姓制度の法案要綱を決定
- 子どもの姓は「結婚時に夫婦が決定する」方式に
- 他党との協議を意識し、過去の法制審案に沿った形へと修正
- 改正案では「個人の尊重」や「多様な価値観への対応」を強調
- 今国会での成立を目指すも、他党との温度差は依然として大きい
「今回は法制審案でいこうと思った」と辻元氏
今回の改正案では、「国民の価値観の多様化」や「男女の対等な関係の構築」を背景に、希望する夫婦がそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」の導入を明記した。立憲民主党は、2022年に国会提出した法案をベースに検討を進めていたが、その中では子どもの姓を「出生時に両親の話し合いで決める」としていた。
しかし、「兄弟姉妹で姓がバラバラになるのは好ましくない」という指摘が党内外から相次いだ。こうした懸念を受けて、立民は一転、子どもの姓を結婚の時点で決める、より保守的ともいえる1996年の法制審案に回帰した。
会合で辻元氏は「批判や懸念を真摯に受け止め、今回は法制審案でいこうと考えた」と語った。
広がらない機運 与野党に慎重論根強く
法案提出を目指す立民だが、他党との温度差は大きい。国民民主党の玉木雄一郎代表は、同日行われた記者会見で「家族や社会の在り方に関わる重要な問題であり、自民から共産まで幅広い合意が必要だ」と指摘。制度導入に積極的だった公明党からも、「今、最優先で取り組む課題ではない」とする声が漏れており、法案審議への追い風とはなっていない。
さらに、トランプ米政権による貿易政策の影響など、国際情勢の変動も国会の議題に影を落としている。物価対策や安全保障といった他の重要課題が山積する中、夫婦別姓問題の優先度はどうしても後回しにされがちだ。
30年越しの議論、立民が踏み出すも
選択的夫婦別姓をめぐる議論は、実に30年近くにわたり棚上げされてきたテーマだ。「夫婦同姓を義務付ける民法の規定が、現代の多様な生き方にそぐわない」との声は、特に若年層や女性を中心に根強く存在する。
立民の姿勢は「今こそ政治が決断を下すとき」とするものだが、制度の中身だけでなく、それを巡る国民的議論の成熟度も問われる。改正案の今後の行方は、与野党の駆け引きだけでなく、世論の動向によっても大きく左右されそうだ。