衆議院本会議で4月10日、教員の給与や勤務体系を定める「給特法(教育職員給与特別措置法)」の改正案が審議入りした。これに対し、日本共産党の田村貴昭議員は、「現場の教員が置かれている実態からあまりにも乖離している」として、政府の姿勢を厳しく問いただした。
教員の長時間労働、限界に
田村議員はまず、教員の過酷な勤務実態に言及した。政府の2022年調査によれば、小中学校の教員は平均で11時間半勤務。休憩時間はほとんどなく、土日の出勤も当たり前のように続いている。
2023年には精神疾患による病休者が7,000人を超え、過労死に至った例もある。「このままでは学校がもたない」と、田村氏は危機感をあらわにした。
教員不足が加速、現場は火の車
さらに問題は人手不足だ。全日本教職員組合が1月に発表した調査では、全国で約4,700人の教員が不足していることが判明。ある学校では担任が不在で、複数の教職員が交代で授業を回しているという。教員採用試験の倍率も過去最低レベルにまで落ち込んでおり、「先生になりたい」と思う若者が減っているのが現状だ。
改正案では根本的解決にならない
しかし、今回の法改正案で示されたのは、教育委員会に「業務量管理・健康確保計画の策定」を義務づけることだけ。田村氏はこれを「形式的な対策に過ぎない」と批判。「時間外労働を減らせ」と上から圧力がかかれば、現場では“時短ハラスメント”や持ち帰り仕事の増加につながりかねないと懸念を示した。
小学校では1日5〜6コマの授業が普通だが、6コマの授業と決められた休憩時間を確保すると、授業準備などに使える時間はたったの25分しか残らない。田村氏は「1日4コマ以下に抑えるべきだ」とし、そのためには教員の定数を大幅に増やす必要があると主張した。
「残業代ゼロ制度」温存では改革にならない
給特法が制定されたのは1971年。この法律により、公立学校の教員には時間外勤務手当が支払われない。「定額働かせ放題」の構造が今も続いているのだ。田村氏は「残業代制度は人間らしく働くためのルール。法律の趣旨から外れている」と強く訴えた。
改正案では、教職調整額(残業代の代わりに支給される手当)を4%から10%に引き上げるとしているが、それに伴って他の手当が削減され、実質的な月額増はわずか1,500円程度。田村氏は「かえって長時間労働の固定化につながる」と指摘した。
「主務教諭」創設が現場に与える影響
さらに、今回新たに導入される「主務教諭」というポストについても問題視。人事評価が強まり、管理職の意向を気にする働き方が広がれば、現場に新たなストレスが加わる。学校の階層化が進み、かえって働きにくくなるのではと警鐘を鳴らした。
本当に求められているのは何か
田村氏は最後にこう締めくくった。「教員が子どもと真正面から向き合えるようにする。それが政治の責任ではないか」。形式的な改革ではなく、現場の声に耳を傾けた実効性ある対応が、いま求められている。