生活保護費の引き下げをめぐって、国を相手取った違憲訴訟で原告側が勝訴する判決が相次いでいることを受け、日本共産党の田村貴昭衆院議員は4月2日、衆議院厚生労働委員会で、政府に対し「過ちを認め、真摯に謝罪すべきだ」と訴えた。あわせて、2012年以前の生活保護基準への復元も強く求めた。
「公約ありき」の引き下げ
安倍政権下の2013年から2015年にかけて、生活保護の生活扶助基準は平均6.5%引き下げられた。これにより、国の支出は約670億円削減されたが、その過程で生活実態や物価動向が十分に反映されなかったことが、今になって問題視されている。
田村議員はこの点について、「引き下げの根拠が薄弱だったにもかかわらず、自民党の選挙公約に基づき、先に結論ありきで制度改変が進められた」と批判した。
「風呂は週1回」「熱中症2度」 利用者の切実な声
田村議員は委員会の中で、生活保護利用者の実情を紹介した。
「お風呂は週に1回。寒さをしのぐために毛布を何枚も重ね着した。おかずは味噌汁と瓶詰めの海苔だけという日も多かった」「体重が減り続けている」「物価高の中でますます苦しい。昨年はクーラーを我慢した結果、熱中症に2度もなった」といった生々しい声が次々と寄せられているという。
田村議員は「本当に、保護利用者が健康で文化的な最低限度の生活を営めているといえるのか」と政府の姿勢を問いただした。
高裁でも国に厳しい判断
生活保護費の引き下げを違憲とする訴訟は全国各地で行われており、今年3月には大阪高裁が京都の原告勝訴の判決を言い渡した。福岡高裁の佐賀訴訟では原告敗訴となったが、高裁段階でも判断が分かれ始めており、最終的には最高裁の判断が注目される。
厚労相の答弁は歯切れ悪く
質疑に応じた福岡資麿厚生労働相は、「物価高騰の影響で生活に困窮している方が増えている」と現状を認めたものの、「健康で文化的な生活が保障されているかどうか」については、明確な答弁を避けた。
「過ちを正す姿勢が必要だ」
田村議員は、「裁判所が国の対応を違憲と断じる判決を下している。政府は潔く過ちを認め、生活保護利用者に謝罪すべきだ」と重ねて強調。さらに、基準の引き下げを撤回し、2012年以前の水準に戻すことが、最低限の責任であると訴えた。
今後の焦点
生活保護をめぐる司法判断は続いており、最高裁での統一的な判断が出るまでは、行政と司法の間で見解が割れたままの状態が続くとみられる。社会的弱者の生活を支える制度がどこまで機能しているのか、政府の姿勢が今、問われている。