日本共産党の志位和夫議長は4月9日、国会内で行われた「神奈川・国会議員要請行動」に出席し、米国が打ち出した追加関税、いわゆる「トランプ関税」について厳しく批判した。あわせて、日本政府に対し、毅然とした態度で撤回を求めるよう訴えた。
志位氏はまず、2019年に結ばれた日米貿易協定において「追加関税を課さない」と明記されていたにもかかわらず、トランプ政権がそれを反故にし、一方的な関税措置に踏み切ったことを「経済覇権主義そのもの」と厳しく指摘。「これはもはや、外交というより“恐喝”だ」と表現し、強く批判した。
注目されたのは、石破茂首相の対応に対する言及だ。志位氏によると、7日に行われた参院決算委員会では、山下芳生議員の質問に対し石破首相は「撤回を求める」と答えたにもかかわらず、その日の夜に行われたバイデン大統領との電話会談では、単に「遺憾だ」と伝えただけで、撤回要求までは踏み込まなかったという。志位氏はこれを「なんともだらしのない態度だ」と批判し、「日本政府は対米投資額が世界最大だという事実に寄りかかって“お願いベース”ではなく、堂々と抗議すべきだ」と力を込めた。
暮らしを直撃する関税と物価高、政府の責任とは
さらに志位氏は、関税が大企業のコスト増を引き起こし、そのしわ寄せが中小企業や労働者に及ぶ構造を問題視。「企業の負担が、結局は国民に跳ね返ってくる。そんな社会でいいのか」と問いかけた。そのうえで、政府には国民の雇用と生活を守る責任があるとし、実効性のある対策を求めていく考えを示した。
志位氏は「いま世界で起きていることは、新自由主義の限界を示している」と述べ、経済主権や食料主権を尊重する新しい国際経済秩序の構築を呼びかけた。「多国籍企業の横暴に歯止めをかけ、フェアで民主的なルールづくりにこそ力を注ぐべき」と提案した。
「アメリカ頼み」の時代は終わった
志位氏は演説の中で、「日米関係はこのままで本当に良いのか」と問いかける場面もあった。トランプ政権下での国際合意の離脱――たとえばパリ協定、WHO脱退、国際貿易ルールの破壊的運用――を例に挙げ、「これが“同盟国”のすることか」と疑問を呈した。
また、東京大学の吉川洋名誉教授が「戦後80年続いた“アメリカの世紀”が終わった」と発言したことにも触れ、「いつまでもアメリカの背中を追い続ける時代は、もう終わりにすべきだ」と主張。「今こそ、対等・平等・友好を基盤にした新しい日米関係を築くべきだ」と語気を強めた。
物価高騰にあえぐ市民の声に応えよ
物価高の問題にも、志位氏は深刻な懸念を示した。帝国データバンクの調査によれば、4月から値上げされる飲食料品は実に4,225品目にのぼるという。「私たちが行ったアンケートでも、“物価がつらい”という声が最も多く寄せられている。これはもう無視できない」と述べ、具体的な対策を提示した。
- 消費税の減税とインボイス制度の廃止。これにより年間12万円の家計負担が軽減されると見込まれ、中小企業への支援にもなる。財源は大企業や富裕層への課税でまかなう。
- 賃上げの実現。内部留保への時限課税を通じて財源を確保し、最低賃金を時給1,500円に引き上げる。
- 医療・介護分野の立て直し。物価高騰で現場が悲鳴を上げているなか、国費を投入しケア労働者の待遇改善を図る。
「軍拡ではなく暮らしに予算を」
最後に志位氏は、日本の軍事費が過去最大の8.7兆円に達し、米国からは「GDP比3%以上」を要求されている現状を挙げ、「こんな軍拡を続けていては、国民の暮らしは守れない」と強調。「外交の力で平和を築く道こそ、いま私たちが進むべき方向だ」と訴え、参加者の賛同を得ていた。