2026-10-29 コメント投稿する ▼
【東京地裁】李琴峰氏へのアウティング、村松裕美市議に110万円の賠償命令
2026年10月29日、東京地裁は、芥川賞作家の李琴峰氏がトランスジェンダーであることを暴露するアウティングに当たる投稿をSNSにされたとして、甲府市議の村松裕美氏に550万円の損害賠償を求めた訴訟で、村松氏に110万円の支払いを命じました。李氏は、性別変更は極めて高度なプライバシー情報であり、プライバシー権と人格権が侵害されたと訴えていました。一方、将来にわたる投稿の差し止め請求は退けられています。村松氏側は、著名な作家であることから公表する必要性があったと反論していました。
李琴峰氏へのアウティングで村松裕美氏に110万円の賠償命令
2026年10月29日、東京地方裁判所は、村松裕美氏(甲府市議)に対して、110万円を支払うよう命じました。訴えを起こしたのは、台湾出身の芥川賞作家である李琴峰氏(作家)です。李氏は、トランスジェンダーであることを暴露するアウティングに当たる投稿をSNSにされたとして、550万円の損害賠償を求めていました。
アウティングとは、性的指向や性自認、性別を変更した経歴など、本人が公にしていない情報を、本人の同意なく他人に明らかにすることです。李氏は、性別変更は極めて高度なプライバシー情報であり、プライバシー権と人格権が侵害されたと訴えていました。今回の判決では賠償が命じられた一方で、将来にわたって李氏に関する投稿を禁じる差し止めの請求は退けられました。
問題とされた投稿と提訴までの経緯
訴状によると、李氏は法律上の性別を女性に変更したあと、2013年に来日しました。日本では女性として生活し、性別を変更したことが周囲に知られないよう注意してきたといいます。2021年には小説「彼岸花が咲く島」で芥川賞を受賞しました。その後、SNSなどでは李氏の性別に関する投稿があふれるようになりました。
2024年に入り、李氏は、村松氏がSNSで自分の身体について断定する投稿をしていることに気づきました。李氏が抗議すると、この投稿は削除されました。しかし村松氏は、今度は別の人物のSNSに載っていた、李氏の性別変更前の写真を投稿しました。
李氏は2025年6月に提訴しました。提訴のあとも村松氏が李氏に関する投稿を続けていたことから、李氏は賠償だけでなく、将来にわたる投稿の禁止も求めていました。提訴から判決まで、およそ1年4か月かかったことになります。
市議側の反論と、過去の裁判所の判断
李氏側は訴訟で、性別変更が暴露されれば人間関係や社会生活が崩壊する恐れがあると主張しました。そのうえで、平穏に生活する人格権が侵害されたと訴えました。これに対して村松氏側は、著名な作家である李氏について、トランスジェンダーを公表する必要性があったと反論していました。
報道によると、判決は、トランスジェンダーだと暴露する投稿や、性別変更前の写真の掲載について、プライバシーの侵害などに当たると判断しました。アウティングをめぐる賠償命令は異例だと伝えられています。トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別と、自分が認識している性別が異なる人のことです。法律上の性別を変えるには、法律に基づく手続きが必要になります。
アウティングをめぐっては、過去にも裁判所の判断があります。一橋大学の事件の控訴審で、東京高裁は2020年11月25日、アウティングを「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するもの」で「許されない行為」だと判断しました。2026年5月27日には、東京地裁が李氏をめぐる別の訴訟で、李氏の性別に関する情報を投稿した弁護士に22万円の賠償を命じています。この判決は、機微な情報を本人の同意なく明らかにすることを「プライバシーを侵害する違法な行為」としました。
自治体にも動きがあります。東京都国立市は、2018年4月1日に施行した条例で、本人の了解なく性的指向や性自認を第三者に明らかにするアウティングを禁止しています。本人が望まない公表から暮らしを守るために、自治体が明確なルールを設けた例の一つです。
公職者に問われる言葉の重みとネット上の声
村松氏は、2023年4月の甲府市議会議員選挙で初当選し、市民の代表として議会に席を置く公職者です。公職にある人の発信は、一般の人の投稿よりも多くの人の目に触れ、重く受け止められます。作品や政策への批判は自由ですが、本人が公にしていない性別の情報を同意なく広めることは、別の問題として考える必要があります。
判決の報道を受けて、SNSでは次のような声が見られます。
「意見の違いがあっても、本人の同意なしに性別の情報を広めてよい理由にはなりません。」
「議員という立場で、特定の個人の身体のことまで書き込む必要がどこにあったのか分かりません。」
「有名な作家だから何を書いてもいいわけではないはずです。公の人にも守られるべき私生活はあります。」
「110万円が高いか安いかは別として、裁判所が賠償を命じた意味は大きいと思います。」
「差し止めまでは認められなかったので、今後も同じことが続かないか心配です。」
法の下では、どのような立場の人であっても、他人の権利を尊重する責任があります。意見の違いを論じるときほど、越えてはならない線を知っておくことが大切です。今回の判決は、SNSでの発信にも法的な責任が問われることを示しました。
まとめ
- 2026年10月29日、東京地裁は村松裕美氏(甲府市議)に110万円の賠償を命じました
- 李琴峰氏(作家)は550万円を求めていましたが、将来の投稿を禁じる差し止めの請求は退けられました
- 村松氏側は、著名な作家であることから公表する必要性があったと反論していました
- 過去にもアウティングを「許されない行為」と判断した裁判所の判決があります
- 公職者の発信には、他人の権利を尊重する重い責任があります
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