2026-05-07 コメント投稿する ▼
再審制度改正で自民と法務省が平行線 抗告禁止「本則か付則か」で決着つかず、高市早苗首相の政治決断が焦点に
再審制度を見直す刑事訴訟法改正案をめぐり、自由民主党(自民)の法務部会と司法制度調査会の合同会議が2026年5月7日に開かれましたが、協議は3時間を超えながら平行線に終わりました。法務省側は検察の抗告を「原則禁止」する規定を刑訴法の付則に盛り込む再修正案を提示しましたが、「本則への明記を求める」自民側との隔たりは最後まで埋まらず、了承は見送られました。冤罪被害者の救済を長年阻んできた検察抗告の問題と、証拠開示のあり方が争点となっており、高市早苗首相(自民)の政治決断が求められる局面となっています。
袴田事件9年・福井中3殺害13年 被害者救済を阻む「抗告の壁」
今回の法改正をめぐり、最大の焦点となっているのが検察の抗告の問題です。
袴田巌氏の再審については、静岡地裁が2014年3月に再審開始を決定しましたが、検察官の即時抗告により東京高裁は再審開始決定を取り消しました。最高裁が東京高裁決定を破棄差し戻した後、東京高裁が2023年3月に再審開始を認め、再審開始決定の確定までに実に9年の歳月を要しました。
1986年の福井市中学3年女子生徒殺害事件(前川彰司氏が起訴・服役)でも、高裁金沢支部が2011年に再審開始を認めたが、検察側が異議を申し立て、名古屋高裁が2013年に取り消しました。第2次請求でようやく2024年10月に再審開始が確定するまで約13年が費やされました。
こんなに長い時間がかかってしまったのか。被告人にとっては、その間の何年もの人生が奪われ続けていたということを考えると胸が痛い
3月に始まった党内議論では、検察抗告の是非が最大の焦点になっています。再審開始決定に対する検察抗告を一切制限しない政府案に対し「審理の長期化を招いている」などと反発が相次ぎ、法務省は4月、修正案を提示したものの理解を得られず、再修正を進めていました。
自民9割が「本則に書くべき」 法務省は付則主張を譲らず
法務省側が検察抗告の原則禁止を刑訴法の付則に盛り込んだ再修正案を提示しましたが「本則に書くべきだ」との異論が相次ぎ、了承には至りませんでした。出席した議員の約9割が抗告禁止を本則に位置付けるよう訴えたとされています。
協議後、稲田朋美元政調会長(自民)は記者団に「4月の修正案と比べて法的には全く同じものを法務省は出してきた。評価できない」と批判しました。自民党中堅議員は「付則に原則禁止と書いても、『気を付けて抗告しろ』ということにしかならない」と断じています。
検察が自ら抗告するかどうかを判断する運用では意味がないと思う。本質的な問題が何も解決されていない気がする
法務省側が提示した再修正案では、焦点の抗告については「十分な理由」がある場合に限ると規定し、裁判所には抗告から1年以内に決定がされるよう努めなければならない、という努力義務を課す内容でした。証拠開示の在り方に関しては「範囲が不当に狭くならないよう留意しなければならない」とする規定が盛り込まれました。
政権を揺るがす可能性も 「造反」懸念で法案提出見送りに含みも
弁護士資格を持つ自民ベテラン議員は協議後、「どこかで高市早苗首相に政治決断をしてもらう必要が出てくるかもしれない」との見方を示しました。
改正案は高市早苗首相が質疑に臨む「重要広範議案」に指定されており、今月中旬までの閣議決定が今国会提出の現実的な期限とされています。与党が参院で過半数を持たないことも自民側の姿勢に影響しており、参院ベテラン議員は野党の追及を受ける可能性に言及し「その時に政権は持つのか」と懸念を示しました。
付則でも何もないよりはましという考え方もわかるが、冤罪被害者のことを考えたら一刻も早く実効性ある改正をしてほしい
一方、自民内には早期合意を優先すべきとの声もあり、自民若手議員は「法務省が要求をのまないから改正案を出さなくていいとはならない。少しでも現状を変えられるならば変えた方がいい」と主張しています。政権幹部は「自民から造反者を出したり、国会で修正されたりしてはいけない」と指摘し、提出見送りにも含みを残しています。
袴田事件、布川事件、福井中3殺害事件など、証拠のねつ造や改ざんが認定された冤罪事件が相次いでいます。抗告禁止の本則への明記と証拠開示の充実という本質的な改革を実現するために、高市首相がどのような政治決断を下すかが問われています。
まとめ
- 2026年5月7日、自民党の合同会議で法務省が再修正案を提示したが、3時間以上の協議でも決着つかず、了承見送り
- 法務省は抗告禁止を付則に盛り込む案を提示したが、自民出席議員の約9割が「本則への明記」を求め異論
- 稲田朋美元政調会長(自民)が「4月の修正案と法的に全く同じ。評価できない」と批判
- 袴田事件は再審開始決定から確定まで9年、福井中3殺害事件は約13年を要した
- 自民ベテラン議員は「どこかで高市早苗首相に政治決断をしてもらう必要が出てくるかもしれない」と述べた
- 「重要広範議案」に指定されており、今月中旬が閣議決定・国会提出の現実的な期限
- 政権幹部は造反者や国会修正を警戒し、提出見送りにも含みを残している