JR北海道、地域交通網維持へ「上下分離」提案 自治体負担増に懸念、改革の遅れも

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JR北海道、地域交通網維持へ「上下分離」提案 自治体負担増に懸念、改革の遅れも

特に、広大な北海道で鉄道網を維持するJR北海道は、厳しい経営状況にあり、一部路線の維持が困難であるとして、沿線自治体に対し、線路などの鉄道設備を譲渡し、運営のみを担う「上下分離方式」の導入を相次いで提案しています。

JR北海道、4割の路線で「上下分離」提案へ 維持困難路線の実態


全国各地で経営難に直面するローカル鉄道網の維持が、喫緊の課題となっています。特に、広大な北海道で鉄道網を維持するJR北海道は、厳しい経営状況にあり、一部路線の維持が困難であるとして、沿線自治体に対し、線路などの鉄道設備を譲渡し、運営のみを担う「上下分離方式」の導入を相次いで提案しています。これは、鉄道事業者が自社で負担してきた線路や駅舎などの設備投資・維持管理コストを、自治体に委ねる仕組みです。

JR北海道は、輸送密度(1キロあたりの1日の平均利用者数)が200人以上2000人未満で、自社だけでの維持が難しいとされる「黄線区」と呼ばれる路線について、その総延長の4割に相当する約900キロメートルを対象とする、前例のない規模での提案を行いました。JR北海道によりますと、対象路線の2024年度の収支は147億円もの赤字が見込まれており、利用者促進策などを講じてきたものの、依然として厳しい状況にあると説明しています。

自治体側の負担増懸念と消極姿勢 連携への課題


しかし、この提案に対し、沿線自治体の間には強い警戒感が広がっています。上下分離方式は、鉄道事業者の設備維持負担を軽減する一方で、そのコストは自治体の負担となります。特に、人口減少や高齢化が進む地方において、自治体の財政状況も決して楽観できるものではありません。北海道の鈴木直道知事は、「上下分離ありきではなく、沿線地域や関係者と目線を合わせ、経営自立に向け幅広い方策を議論してほしい」と述べ、JR北海道の提案に一定の牽制を行いました。

自治体側からは、具体的な負担割合や、上下分離後の運営組織をどのように構築するのかといった詳細な計画が示されていないことへの戸惑いの声も上がっています。「JRの考えの詳細が分からず、現時点で判断に至ることは難しい」との意見もあり、51にのぼる沿線自治体との間で、具体的な議論を進めるには、まだ多くのハードルが存在するのが現状です。

10年前からの課題放置? 改革遅延の背景と国の要求


JR北海道が今回提案した「黄線区」は、実は10年前の2016年にも、同様の基準で示されていました。しかし、その際には、さらに利用者の少ない「赤線区」(輸送密度200人未満)として、5つの路線区間が廃線やバスへの転換対象として提示されていました。これらの路線の廃止や代替交通手段への移行に向けた自治体との調整が難航し、具体的な進展には長い年月を要しました。

今年3月末に留萌線の一部区間(深川―石狩沼田間)の営業終了をもって、ようやく10年前の課題が一段落した形ですが、その遅れが、今回対象となっている「黄線区」への抜本的な対策を遅らせる一因ともなりました。名古屋大学大学院の加藤博和教授(地域交通政策)は、「もし廃線がもっと迅速に進んでいれば、黄線区の抜本的な見直しにも早く着手できたはずだ」と指摘しています。こうした状況を受け、国はJR北海道に対し、2027年3月までに「黄線区」に関する抜本的な改善策を示すよう求めており、JR北海道は2026年9月にも具体案の中間的な取りまとめを行う方針です。

上下分離方式の可能性と課題 先進事例と専門家の指摘


一方で、上下分離方式の導入は、近年、全国的に広がりを見せており、一定の成果を上げている事例もあります。滋賀県を走る近江鉄道では、2024年度から上下分離方式を導入した結果、31年ぶりに鉄道事業で営業黒字を達成し、2025年度も黒字継続が見込まれています。保守コストを自治体側が負担することで、経営資源を列車の利便性向上やサービス改善に振り向けることが可能になり、収益拡大につながった形です。

また、和歌山電鉄の貴志川線でも、2028年4月をめどに上下分離方式へ完全移行することが沿線自治体と合意されました。同線は、経営難から長年「みなし上下分離方式」という公費支援策が取られてきましたが、新型コロナウイルス禍や物価高の影響で経営環境は依然厳しい状況にあり、完全移行による黒字化を目指しています。国土交通省によると、2024年時点で、上下分離方式は全国28の鉄道事業者が採用しており、主に利用者減少で経営が悪化したローカル線で導入が進んでいます。海外、特に欧州では一般的な方式となっています。

加藤教授は、「沿線の人口を維持することは本来、行政の重要な役割である」としながらも、「自治体が鉄道の『下』(設備)を持つことで、鉄道を活用した地域の魅力向上や活性化に、より主体的な役割を果たすことができる」と、この方式の持つ可能性についても言及しています。公共交通網の維持は、地域社会の維持と発展に不可欠であり、上下分離方式がその一助となるのか、今後の議論と取り組みが注目されます。

まとめ


  • JR北海道は、経営難のローカル線(黄線区)約900kmについて、自治体への設備譲渡と運営の分離(上下分離方式)を提案。
  • 自治体側は、設備維持費負担の増加を懸念しており、北海道知事は慎重な姿勢を示唆。
  • 10年前から同様の課題が指摘されていたが、廃線調整の遅れなどにより抜本的対策が遅延。
  • 国は2027年3月までに改善策を求めており、JR北海道は2026年9月にも中間案をまとめる方針。
  • 近江鉄道や和歌山電鉄など、上下分離方式による黒字化や改善を目指す先進事例も存在する。
  • 専門家は、自治体が設備を持つことで地域活性化に貢献できる可能性も指摘。

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2026-05-05 20:04:15(櫻井将和)

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