2026-10-29 コメント投稿する ▼
西表島の客数制限は合憲 西尾洋介裁判長の判決と観光業者に問われる節度
2026年10月28日、那覇地裁の西尾洋介氏(裁判長)は、世界自然遺産・西表島でガイドが案内できる客数を制限した竹富町の条例は憲法22条に反しないと判断しました。条例の制定は行政処分にあたらないとして訴えは却下し、制限を受けずに営業できる権利の確認を求めた請求も退けています。原告のツアー会社は、判決理由を精査したうえで控訴する方針を示しています。西表島では免許制度や立入人数の上限、年間33万人・1日1200人を上限とする管理計画など入域管理が進み、屋久島や富士山でも利用ルールが広がっています。自然は特定の事業者のものではなく住民全体の財産であり、観光業者に求められる節度と常識を考えます。
客数制限は合憲 那覇地裁が示した判断
訴えを起こしたのは、地元最大手とされるツアー会社です。竹富町が定めた観光案内人条例による客数制限は、営業の自由を保障する憲法に違反するとして、町に制限の取り消しなどを求めていました。2024年2月には、提訴する見通しだと報じられていました。
那覇地裁は、条例を作ること自体は裁判で取り消しを求められる行政処分にあたらないとして、この部分の訴えを、中身の判断に入らずに退ける「却下」としました。さらに、客数制限を受けずに営業できる権利の確認を求めた請求も退けています。理由として、客数制限は、観光客が増えすぎて地域に悪影響が出るオーバーツーリズムを防ぎ、環境を守るためのものだと指摘しました。そのうえで、規制の目的は公共の福祉に合致するとし、職業活動の自由を保障する憲法22条には反しないとしました。客数制限は憲法に違反しないという判断です。
「自然は事業者の持ち物ではありません。島の人みんなの財産なのに、稼ぐ道具みたいに扱われるのは違うと思います。」
原告側は、判決文をまだ受け取っていないとしたうえで、受け取り次第、代理人弁護士とともに判決理由を精査し、控訴する方針を示しています。控訴は法律で認められた権利であり、この判決は確定したものではありません。それでも、環境を守るための客数制限に、司法が憲法上の問題はないとの判断を示した意味は小さくありません。
世界自然遺産・西表島で進んだ入域管理
西表島は2021年7月26日に世界自然遺産に登録されました。竹富町は2020年4月に観光案内人条例を制定し、その後の改正で、基準を満たしたガイドに事業を認める免許制度を導入しています。陸域の川のカヌーガイドでは、案内できる客数にも上限が設けられました。
島全体の入域管理も進んでいます。2022年12月7日に国が認定したエコツーリズム推進全体構想では、1日あたりの立入人数が、ヒナイ川200人、西田川100人、古見岳30人、浦内川源流域50人、テドウ山30人と定められました。2019年の島の入域観光客数は約29万人でしたが、2023年3月には、年間33万人、1日1200人を上限とする観光管理計画が発表されています。
「上限の人数を決めるのは当たり前ですよね。一度壊れた森や川は、お金では元に戻りませんから。」
これらの数字は、島の自然が耐えられる量を、人の側が考えて決めたものです。限られた川や山に人が集中すれば、植物が踏み荒らされ、生き物のすみかが傷むおそれがあります。守るべき自然が目の前にあるからこそ、上限という線が必要になります。
他の観光地にも広がる利用ルール
こうした動きは西表島だけの話ではありません。世界自然遺産の屋久島では、2017年3月から、山岳部を訪れる人に環境保全の協力金をお願いしています。日帰りで1人1,000円です。富士山では、山梨県が吉田ルートで2024年7月1日から9月10日まで、登山者の人数を調整する規制と、1人4,000円の通行料の徴収を行いました。
国も動いています。2025年12月に閣議決定した2026年度予算案には、オーバーツーリズムの未然防止などを含む観光地の受け入れ環境の整備に、100億円が計上されました。前年度の約8倍の規模です。
「入山料も協力金も、守るための費用だと思えば納得です。使う人が払うのは筋が通っています。」
各地で入山料や協力金、人数の上限といった仕組みが広がっているのは、自然や暮らしを守るための負担を、利用する側にも求める流れが強まっているからだと考えます。自然は黙って耐え続けてくれるわけではありません。
観光業者に求められる節度と常識
観光は地域に収入をもたらす大切な産業です。しかし、その土台である自然は、事業者だけのものではありません。島で暮らす人々全体の財産であり、次の世代に引き継ぐべきものです。観光の利益が一部の事業者に偏り、混雑や環境への負担ばかりが住民に残るのであれば、地域の理解は得られません。
「観光客が増えても、島で暮らす人が静かに暮らせなくなったら本末転倒です。住民の声をもっと聞いてほしいです。」
2025年7月には、竹富町が仲間川で免許を受けずにツアーを行った事業者に、条例に基づく停止命令を出したと公表しています。この訴訟とは別の件ですが、決められたルールを守らない営業が実際に問題になった例があります。ルールは、自然と地域の暮らしを守るために決められています。その範囲の中で知恵と工夫を重ねて稼ぐのが、観光に携わる者の本来の姿ではないでしょうか。
「ルールの中で工夫して稼ぐのが商売の基本でしょう。節度のない営業は、結局は自分の首を絞めることになりますよ。」
決められたルールを守り、地域と対話し、節度と常識をもって営業する。それが、観光で食べていく事業者に求められる最低限の姿勢だと考えます。
まとめ
- 2026年10月28日、那覇地裁の西尾洋介氏(裁判長)は、西表島の客数制限を定めた竹富町の条例は憲法22条に反しないと判断しました
- 条例の制定は取り消しを求められる行政処分にあたらないとして訴えは却下し、客数制限を受けずに営業できる権利の確認を求めた請求は退けました
- 原告のツアー会社は、判決理由を精査したうえで控訴する方針です
- 西表島では、免許制度、立入人数の上限、年間33万人・1日1200人の管理計画など、入域管理が進んでいます
- 屋久島の協力金や富士山の通行料など、各地で利用ルールが広がっています。自然は住民全体の財産であり、観光業者には節度と常識が求められます
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