2025-05-06 コメント投稿する ▼
【合併30年でようやく動く新庁舎構想】さいたま市政が問われる「停滞の代償」と新リーダーの資質
新庁舎構想に30年
さいたま市の本庁舎が、ようやく「さいたま新都心」への移転に向けて本格始動した。4月には市民参加のワークショップが開かれ、「カフェや広場がある庁舎にしてほしい」「青空市議会も見てみたい」など、未来の市役所像を描く声が多く聞かれた。だがこの構想、合併から実に約30年もかかってようやく動き出した。
旧浦和・大宮・与野の三市が合併したのは2001年(平成13年)。当初から新都心への庁舎移転は示されていたが、旧浦和市役所がそのまま本庁舎として使われ続けてきた。庁舎のスペース不足、老朽化など物理的な問題もありつつ、政治的な綱引きが長期にわたって移転を遅らせていた。
旧市間の対立とリーダーシップの欠如
移転を阻んできた最大の要因は、旧浦和と旧大宮の対立だった。ベテラン市議は「市議会でも旧浦和VS旧大宮の綱引きが続いていた」と回顧。さらに、浦和の自治会からは「市役所は浦和であるべき」とする声が根強く、移転論議は何度も足踏みした。
潮目が変わったのはここ数年だ。新たに市外から転入してきた住民が増え、「本庁舎はどこでもよい。それよりも使いやすく、誇れる市役所を」と意識が変わってきた。浦和区在住の68歳男性は「もはや『浦和でなければ』という声は聞かれない」と話す。
この長すぎた空白の30年。市政の停滞を放置した責任は誰にあるのか。4期16年にわたり市長を務めた清水勇人市長のリーダーシップが問われる。市民に寄り添う姿勢は評価されながらも、政治的調整に時間をかけすぎた感は否めない。
財政リスクと市民の期待
新庁舎の完成は令和13年度を予定している。地上18階建ての行政棟と議会棟、広場などから成る複合施設として設計されているが、事業費は物価高騰の影響で基本構想時から162億円増となり、約400億円へと膨らんでいる。
今後の経済情勢次第では、さらなる見直しも避けられない。市の財政に重くのしかかるこのプロジェクトは、次期市長の手腕に大きく左右されるだろう。
一方で、ワークショップに参加した18歳の大学生は「新庁舎が完成しても、それが終着点ではない。時代の変化に合わせて柔軟に変化していくことが大事だ」と語った。その言葉に、市民が行政に求める新たな価値観がにじむ。
さいたま市長選が焦点
さいたま市長選は5月11日に告示、25日に投開票される予定だ。新庁舎問題に象徴されるように、これまでの「のらりくらりとした市政運営」からの脱却が市民の強い願いとなっている。
市長に求められるのは、合併から30年の停滞に終止符を打つ決断力と、対立を調整し前に進める推進力だ。新庁舎建設という一大プロジェクトは、都市としての品格と未来像をどう描くかという問いに他ならない。
* さいたま市の本庁舎が新都心に移転へ、完成は令和13年度予定。
* 合併から約30年、旧浦和・大宮間の対立で移転が遅延。
* 市民意識の変化が合意形成を後押し。
* 新庁舎事業費は当初より162億円増、約400億円。
* 市長選では「決断力あるリーダー」の登場が期待される。