2026-09-25 コメント投稿する ▼
障害福祉、訪問時の車移動を報酬改定で評価 2025年度から
これまでサービス提供時間に含まれず、実質的に事業者の持ち出しとなっていた移動コストの負担軽減と、利用者へのきめ細やかな支援提供の向上が期待されます。 こうした課題を踏まえ、厚生労働省は、2025年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討を進める中で、訪問サービスにおける移動支援、特に自家用車等を利用した場合の移動時間を、サービス提供時間の一部として評価することを提案しました。
訪問サービスにおける移動支援の現状と課題
障害者総合支援法に基づく居宅介護や重度訪問介護などの訪問サービスでは、支援が必要な利用者の自宅を介護職員等が訪問して、身体介護や生活援助を行います。多くの事業所では、公共交通機関の運行が十分でない地域や、利用者宅間の移動時間短縮のために、職員の自家用車や事業所の車両を利用した移動が行われています。
しかし、現行の報酬制度では、こうした車両を使った移動に要する時間や、ガソリン代、車両の維持費などは、原則としてサービス提供時間に含まれていませんでした。そのため、移動にかかる費用や時間は、事業者がサービス外のコストとして自己負担するか、あるいは職員が持ち出しで対応せざるを得ない状況が続いていました。これは、特に地方や過疎地域で事業を展開する事業者にとって、経営上の大きな負担となっています。
この状況は、利用者にとっても無関係ではありません。移動コストの負担が大きいために、事業者がサービス提供を敬遠したり、十分な人材を確保できなかったりするケースも考えられます。結果として、利用者のニーズに応じた訪問サービスが提供されにくくなり、地域によるサービス格差が生じる一因ともなっていました。
厚労省、移動時間を報酬で評価する方針へ
こうした課題を踏まえ、厚生労働省は、2025年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討を進める中で、訪問サービスにおける移動支援、特に自家用車等を利用した場合の移動時間を、サービス提供時間の一部として評価することを提案しました。これは、社会保障審議会介護給付費分科会などで議論されています。
この提案の主な目的は、訪問介護員等の移動にかかる負担を軽減し、より働きやすい環境を整備することにあります。同時に、移動が適正に評価されることで、事業者が移動コストを確保しやすくなり、結果として、利用者に対してより安定した、質の高いサービスを提供できるようになることが期待されています。
具体的な評価方法については、移動時間に応じた報酬の算定方法や、地域の実情を踏まえた柔軟な対応、自家用車を使用する際の要件などが、今後詳細に検討される見込みです。例えば、一定距離や時間の上限を設ける、公共交通機関が利用できない地域であることを確認する、などの条件が設けられる可能性も考えられます。
移動支援の適正な評価がもたらす効果
訪問サービスにおける移動支援の時間が報酬として評価されるようになれば、サービス提供事業者にとって大きなメリットがあります。これまで見過ごされがちだった移動コストが一部でも回収できるようになれば、事業経営の安定化につながり、職員の処遇改善にも反映される可能性があります。これにより、人材の確保や定着が進み、サービスの質の向上に寄与することが期待されます。
利用者にとっても、その恩恵は大きいと考えられます。自家用車での移動が評価されることで、公共交通機関の利用が難しい地域や、利用者の自宅が事業所から離れている場合でも、サービス提供がしやすくなります。これは、地域間のサービス格差の是正につながり、全国どこに住んでいても、必要な障害福祉サービスを受けられる環境の実現に近づくことを意味します。
さらに、この取り組みは、高齢者や障害者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることを目指す「地域包括ケアシステム」の推進にも貢献します。医療、介護、生活支援といった多岐にわたるサービスへのアクセスを維持するためには、移動手段の確保と、それに伴う移動支援の適正な評価が不可欠だからです。
今後の制度設計と課題
今回の提案は、障害福祉サービス提供体制の改善に向けた重要な一歩ですが、制度として具体化されるまでには、いくつかの課題をクリアする必要があります。まず、具体的な算定基準を明確に定めることが求められます。どのような移動が評価対象となるのか、その線引きを明確にし、事業者間の公平性を確保しなければなりません。例えば、公共交通機関が利用可能な場合でも、利便性の低さから自家用車を選択するケースなどをどう扱うか、慎重な検討が必要です。
また、自家用車を使用しない事業者や、公共交通機関を利用する事業者との間で、不公平感が生じないような配慮も重要になります。評価方法によっては、かえって移動手段による格差を生む可能性も否定できません。
上野賢一郎厚生労働大臣は、こうした課題を踏まえ、利用者本位のサービス提供体制の構築に向けて、関係者間で十分な議論を行うよう求めています。2025年度の報酬改定での実施を目指すためには、今後、関係団体との協議や、制度設計の詳細詰めを迅速に進める必要があります。
この報酬改定が、訪問サービスに携わる専門職の労働条件改善や、専門職としてのキャリア形成を支援するきっかけとなり、ひいては、より多くの人々が質の高い福祉サービスを受けられる社会の実現につながることが期待されます。
まとめ
- 障害福祉サービスの訪問時、自家用車等での移動時間が2025年度の報酬改定で評価される方針。
- これまで事業者の自己負担となっていた移動コストの軽減が目的。
- サービス提供者の負担軽減と利用者へのきめ細やかな支援拡充が期待される。
- 算定基準の明確化や公平性の確保、地域差への配慮などが今後の重要な課題となる。
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