2026-05-08 コメント投稿する ▼
内密出産を国が支援へ 自民PT骨太方針への財政明記目指す、高市早苗首相は「慎重な議論」と後退気味
医療機関のみに母親が身元を明かす「内密出産」をめぐり、自由民主党(自民)のプロジェクトチーム(PT)が支援に向けた検討を進めています。政府予算の大枠を示す「骨太の方針」(正式名称:経済財政運営と改革の基本方針)に相談窓口などへの財政支援を盛り込むことを目指し、2026年5月中に報告書をまとめる予定です。2019年の運用開始からこれまでに約70人が内密出産によって生まれている一方、法整備が追いつかず現場が孤立無援の状態を強いられてきた構造に、政治がようやく向き合い始めました。命を守るための制度の確立と、子どもの「出自を知る権利」をどう両立させるかが焦点です。
内密出産とは何か 命を守るための苦肉の策
内密出産とは、望まない妊娠などで孤立した女性が、医療機関のスタッフの一部にのみ身元を明かした上で出産する仕組みです。匿名のまま路上や自宅で一人で出産する「孤立出産」を防ぎ、母親と赤ちゃんの命と健康を守ることが主な目的です。
熊本市の慈恵病院が2019年に全国で初めて運用を開始し、これまでに約70人が内密出産によって生まれています。同病院は「こうのとりのゆりかご」(通称「赤ちゃんポスト」)も運営しており、2007年の開設以来16年間で170名の赤ちゃんが預けられました。
こんな制度があることを初めて知った。命がけで逃げ込める場所が必要だということは理解できる。早く法律でしっかり守ってほしい
現場から法整備を求める声が上がる一方、「育児放棄につながる」などの懸念もあり、政府対応は現状の追認にとどまっています。「現場任せ」の状況が改善されるかが焦点となっています。
自民PTが視察 高市早苗首相は「慎重な議論が必要」と後退気味
松野博一元官房長官が座長を務める自民党PTは2026年4月6日、慈恵病院を視察し、蓮田健院長らの説明を受けました。松野氏は「行政側がどう対応していけるか論点を整理していきたい」と話しています。
熊本選出の坂本哲志元孤独・孤立対策担当相が主導して2025年12月にPTが発足し、関係先のヒアリングを重ねてきました。
PTを立ち上げるだけで終わらせないでほしい。これまで現場が何年も孤軍奮闘してきた。報われてほしい
政府の姿勢には落差があります。2024年12月には、当時の石破茂首相が参院予算委員会で「赤ちゃんの権利、人権を最大限に重んじる法体系ができないか。政府内で検討させたい」と前向きな姿勢を示しました。ところが、後任の高市早苗首相は2026年4月7日の参院予算委員会で、内密出産の法制化に関して「さまざまな意見があり、慎重な議論が必要だ」と述べるにとどめています。
運用の広がりについては、東京都墨田区の賛育会病院が2025年3月に全国2例目の運用を開始し、大阪府泉佐野市は市内の病院と連携して2026年度中の導入に向けて準備を進めています。国民民主党(国民民主)は今国会で、内密出産ができる医療機関の確保など国の態勢整備を求める法案を提出する方針を示しています。
子の出自を知る権利とドイツの法制度が示す解決策
内密出産をめぐっては、赤ちゃんが将来「自分の親が誰かを知る権利(出自を知る権利)」が損なわれるという指摘が根強くあります。
赤ちゃんを出産した女性の身元は当院職員のただ一人しか把握していない中で、赤ちゃんの単独戸籍が作られ人生の歩みが進んでいます。情報開示手続きや支援についての準備不足は否めない状況です。
政府として法整備してほしい。ただ育児放棄を助長しないかという懸念も理解できる。難しい問題だと思う
先行事例として注目されるのがドイツです。ドイツでは2014年に内密出産法が制定され、母親の欄を無記名のまま出生届を出すことができます。母親の身元は役所で保管され、子どもが満16歳になれば閲覧することが可能と定められています。さらに全国の医療機関で匿名での出産が可能で、制度がはじまってからおよそ4年の間に内密出産で生まれた赤ちゃんは450人以上に上ります。
命を守ることを最優先にしてほしい。出自を知る権利も大事だが、まず生まれてこなければ始まらない
日本においては、命を守ることと出自を知る権利の双方をどう両立させるかが法整備の最大の課題です。政府が現場任せを続ける限り、慈恵病院のような医療機関の善意と負担に依存し続けることになります。自民PTが骨太の方針への反映を目指す一方、高市早苗首相(自民)の慎重姿勢がどこまで政府全体を動かす力になるのかが問われています。
まとめ
- 自民党PTが「内密出産」支援に向けた報告書を2026年5月中にまとめ、骨太の方針への財政支援明記を目指す
- 松野博一元官房長官が座長、坂本哲志元孤独・孤立対策担当相が主導し2025年12月にPT発足
- 内密出産は2019年に熊本市の慈恵病院が全国初の運用を開始。これまでに約70人が誕生
- 東京・墨田区の賛育会病院が2025年3月に全国2例目、大阪府泉佐野市も2026年度中の導入を準備中
- 高市早苗首相は2026年4月7日の参院予算委で法制化について「慎重な議論が必要」と述べるにとどまる
- ドイツでは2014年に内密出産法が整備され、母親の身元を役所が保管・子が満16歳で閲覧可能な仕組みを確立
- 子の「出自を知る権利」と母子の安全確保の両立が、日本の法整備における最大の論点となっている