2026-04-12 コメント投稿する ▼
普天間飛行場返還合意から30年、日米の約束は今も「宙づり」~進まぬ負担軽減と「例外」の常態化~
1996年4月12日、日米両政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の全面返還に合意したと発表しました。 しかし、合意から30年が経過した今、これらの約束はどこまで実現しているのでしょうか。 沖縄県民の長年の願いである基地負担の軽減に向けた、具体的な一歩となることが期待されていました。
30年前の「約束」とSACO合意
この合意は、1995年に起きた在日米軍兵士による少女暴行事件をきっかけに、沖縄の基地負担軽減を目指して設置された「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)の取り組みの一環でした。当時、首相官邸で開かれた共同記者会見で、橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使が、普天間飛行場の「全面返還」を共同で発表したのです。
この発表は、日米両政府の「本気度」を示す象徴的な出来事として受け止められました。同年12月にまとめられたSACO最終報告では、普天間飛行場を含む11の施設・区域の返還や、騒音軽減措置の実施、訓練の移転などが具体的に盛り込まれました。沖縄県民の長年の願いである基地負担の軽減に向けた、具体的な一歩となることが期待されていました。
進んだ返還、しかし「例外」は常態化
それから約30年が経過し、沖縄県によると、返還が予定されていた土地のうち、2024年時点で約80%にあたる4449ヘクタールが返還されました。しかし、この数字には、北部訓練場(国頭村など)の過半約4000ヘクタールという広大な面積の返還が大きく含まれています。
一方で、普天間飛行場本体や那覇軍港(那覇市)といった、より住民生活に直結する大規模な基地の返還については、具体的な時期の見通しすら立っていません。
さらに、住民生活への影響を示す騒音問題も深刻化しています。深夜早朝(午後10時~午前7時)の騒音測定回数は、SACO合意直後の1997年度と比較して、2024年度は大幅に増加しています。
特に問題視されているのが、米軍のパラシュート降下訓練です。この訓練は、事故が相次いだことを受け、SACO合意で人口密集地から離れた伊江島補助飛行場に移転されることが決まっていました。しかし、米軍は1998年以降、地元が強く反対する嘉手納基地でも訓練を行うようになり、日米間で「例外的な場合」に限ると再合意した07年以降も、訓練は続いています。
近年では、伊江島の滑走路損傷を理由に、2023年以降、嘉手納基地での実施回数が急増しました。伊江島の補修が完了した後も嘉手納での訓練が継続されており、地元住民の理解を得られるような説明もなされていません。こうした状況に対し、地元からは「SACO合意の骨抜きだ」との強い反発の声が上がっており、嘉手納町議会は繰り返し抗議決議を行っています。
沖縄に基地が集中する歴史的背景
沖縄に米軍基地が集中する背景には、太平洋戦争末期の激しい地上戦と、それに続くアメリカによる軍事占領の歴史があります。1945年、米軍は沖縄本島に上陸し、住民が避難した後の集落を破壊して、日本本土への攻撃拠点となる基地を各地に建設しました。普天間飛行場もこの時期に造られたものです。
戦後、日本から切り離され、アメリカの施政権下におかれた沖縄では、住民の同意なしに土地を接収できる「土地収用令」が施行されました。武装した兵士が住民を排除し、農地などをブルドーザーで整地していく手法は、「銃剣とブルドーザー」と呼ばれ、多くの住民に深い傷を残しました。
1972年に沖縄が日本に復帰した際、基地負担は「本土並み」になると約束されましたが、現実には土地の返還は大きく進みませんでした。1974年に日米間で決められた基地返還計画でも、返還対象となった基地の半数近くが、沖縄県内での移設・移転を条件とするものでした。
日本本土で基地返還が進む一方で、沖縄では基地の県内移設・移転が繰り返され、国土面積のわずか0.6%に過ぎない沖縄に、全国の米軍専用施設の約7割が集中するという、歪(いびつ)な構図が固定化されていったのです。
失われた約束、残された課題
普天間飛行場返還合意から30年。日米間の約束は、時間とともにその実質を失いつつあるのではないでしょうか。一部の土地返還は進みましたが、それは沖縄の基地負担軽減という本来の目的から見れば、限定的なものです。
「例外」とされてきた訓練が、あたかも当然のことのように繰り返され、住民の生活や安全への懸念は増すばかりです。沖縄の基地問題の根源にある歴史的な経緯や、基地がもたらす影響に対する理解が、日米両政府、そして日本全体で十分に進んでいるとは言えません。
基地負担の公平な分担という原則は、今もなお沖縄で踏みにじられ続けています。政府は、この30年間で失われた信頼を回復するためにも、沖縄の声に真摯に耳を傾け、約束の履行に向けた具体的な行動を示す責任があるはずです。