2026-04-21 コメント投稿する ▼
国内投資こそ「強い日本経済」の鍵 高市首相、企業の姿勢変革を要求
「強い日本経済」の構築を目指す上で、日本企業が従業員や将来の成長に向けた投資よりも、株主への配当や自社株買いといった「株主還元」に過剰な資金を振り向けているのではないか――。 さらに、この資料は、米国や欧州では将来の成長が見込まれる収益力の高い企業が中心となって株主への配当を行っているのに対し、日本では成長期待が低く、収益力も十分でない企業までもが配当を行っている現状を示唆しています。
「国内投資が圧倒的に足りない」首相が指摘
「強い日本経済」の構築を目指す上で、日本企業が従業員や将来の成長に向けた投資よりも、株主への配当や自社株買いといった「株主還元」に過剰な資金を振り向けているのではないか――。高市早苗首相は、自民党大会で日本の潜在成長率が他の先進国に比べて見劣りする原因として、「国内投資が圧倒的に足りない」と指摘し、企業の姿勢変革を強く求めています。長引く経済停滞、「失われた30年」を経て日本企業の業績は大きく回復しましたが、その果実が国内への再投資や、そこで働く人々の待遇改善に十分には結びついていない現状が浮き彫りになっています。
利益増も国内投資や賃金は低迷 株主還元への偏り鮮明に
経済産業省が今年3月に自民党日本成長戦略本部に示した資料は、日本経済のいびつな姿を如実に物語っています。2013年に73兆円だった日本企業の経常利益は、2024年には131兆円へとほぼ倍増しました。しかし、この利益の伸びをはるかに上回るペースで増加したのが、株主への配当と自社株買いを合わせた「株主還元」です。配当は8兆円から約3倍の25兆円へ、自社株買いは3兆円から約6倍の17兆円へと、それぞれ急増しました。
一方で、同じ期間の賃金の伸びは鈍く、給与所得者の賃金は2013年の414万円から2023年には460万円へと増加しましたが、伸び率は1割増にとどまっています。企業の売上高に占める設備投資の割合も、2016年と2023年を比較するとわずかながら低下傾向にあります。さらに、この資料は、米国や欧州では将来の成長が見込まれる収益力の高い企業が中心となって株主への配当を行っているのに対し、日本では成長期待が低く、収益力も十分でない企業までもが配当を行っている現状を示唆しています。
株主提案権の有利さ、持ち合い解消が背景か
企業が稼いだ利益を、将来の成長につながる設備投資や研究開発、あるいは従業員の給与といった、持続的な企業価値向上に不可欠な分野に回すのではなく、身の丈に合わない過剰な株主還元に充ててしまう。なぜこのような状況がまかり通っているのでしょうか。その要因の一つとして、日本の会社法などの法制度が指摘されています。欧米と比較して、株主提案権の行使要件などが株主側に有利に働いている側面があるというのです。
かつては、上場企業同士が互いの株式を持ち合うことで、株主からの過度な要求に対する「防波堤」としての役割を果たしていました。しかし、金融庁や東京証券取引所が進めてきたコーポレートガバナンス(企業統治)改革の過程で、こうした株式の持ち合いは急速に解消されました。その結果、専門家からは、株式を大量に取得して株主還元や事業再編を迫る「アクティビスト(物言う株主)」にとって、日本市場が「天国」のような状況になっているとの指摘も出ています。
成長志向投資へ 法制度見直しと企業意識改革を
こうした状況を踏まえ、法制審議会(法務大臣の諮問機関)の会社法制部会は3月、株主提案権の要件を厳格化するとともに、企業側が株主名簿上の名義株主だけでなく、その背後にいる「実質株主」を確認できる制度の創設などを盛り込んだ中間試案をまとめました。自民党の小林史明・経済産業部会長は、「日本だけが株主に厳しい規制を導入するのではなく、欧米と同じ土俵で戦えるようにする。日本企業が成長志向型の投資を行う環境を作りたい」と述べています。
同党の日本成長戦略本部を中心に、会社法やコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)などの見直しに向けた提言をまとめ、「骨太の方針」として政府の経済財政運営の指針に反映させたい考えです。高市首相も、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化などを念頭に、「世界各地で重要物資の供給不安が生じている。このような事態に対応するためにも国内投資が必要だ」と強調しており、地政学リスクが高まる現代において、国内産業基盤の強化が急務であるとの認識を示しています。「強い経済」を実現するためには、政府の政策だけでなく、日本企業の経営者層による意識改革が不可欠と言えるでしょう。