2026-05-26 コメント投稿する ▼
サイバー警察部を全国設置可能に 人材11万人不足の現実、部署名先行で実力は伴うか
政府は2026年5月26日、都道府県警にサイバー警察部を設置できる改正警察法施行令を閣議決定しました。施行は同年5月29日です。サイバー犯罪の検挙件数が2025年に過去最多の1万5108件に達するなか、サイバー部門の一元化で取り締まり強化を図るのが狙いです。しかし、国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足しているとされており、民間と比べて給与水準が低い都道府県警が即戦力を集められるかは極めて不透明です。制度の整備だけが先行し、実力が伴わない事態を避けるための具体策が問われています。
過去最多が続くサイバー犯罪、地方警察は対応限界に
警察庁が2026年3月に公表した統計によると、2025年のサイバー犯罪の検挙件数は過去最多の1万5108件に達しました。ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による被害件数も226件と高水準が続いており、企業や行政機関を狙った攻撃は年々巧妙化しています。
地元の警察に相談したら『ネット系のことは詳しくない』と言われた。頼れる組織にしてほしい
こうした被害の増加に対応しきれていない現場の実態は、以前から指摘されてきました。都道府県警のサイバー担当課の多くはこれまで生活安全部に所属しており、組織として独立した専門部署を持つ警察は限られていました。警察庁は2026年4月に全国の都道府県警に対してサイバー部門の一元化を検討するよう指示を出しており、今回の改正施行令はその制度的な基盤を整えるものです。改正施行令はあわせて、サイバー警察部を設置しない都道府県警については警務部がサイバー担当を担うことも定めています。全都道府県への義務づけではなく、各警察が地域の発生状況に応じて設置を判断する仕組みです。
「部署を作れば解決」ではない、深刻な人材不足の現実
問題の本質は、サイバー犯罪に対応できる専門人材の絶対的な不足です。経済産業省が2025年5月にまとめた調査では、国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足しているとされています。民間企業でさえ高度なIT人材の確保に苦労している状況で、都道府県警が魅力ある条件を提示して即戦力を集めることは容易ではありません。
IT系の会社と給与で勝負になるわけがない。公務員の処遇では人材は来ない
警察庁はサイバー専門技官の採用を強化しており、学歴不問での技術職採用も進めています。しかし警察採用は試験・研修・段階的な実務配置を経るため、即戦力として現場に立つまでに相当な時間がかかります。仮に採用できたとしても、専門性の高い人材はより待遇の良い民間企業に転職するリスクも抱えています。さらに深刻なのが地域間格差の問題です。東京都や大阪府などの大規模警察は比較的人員を確保しやすい一方、地方の小規模警察では数人のサイバー担当者が膨大な案件を抱えることになりかねません。
「警察のサイバー捜査官になりたくても、給料が違いすぎて民間に行った」
「地方の被害者が警察に頼れない現状こそ問題だ。東京との格差を放置しないでほしい」
制度整備だけでは不十分、実効性ある体制構築が急務
2022年の警察法改正で警察庁にサイバー警察局が設置され、重大案件に直接捜査権を持つサイバー特別捜査部も関東管区警察局に発足しました。国レベルの体制は着実に整備されつつあります。しかし、詐欺・フィッシング・名誉毀損など件数が多い「日常的なサイバー犯罪」は、従来通り各都道府県警察が担います。
サイバー犯罪の地方被害者が警察に頼れない。これは権利の格差だ
今回の改正施行令は制度の器(うつわ)を整えた意義は認められます。しかし器だけあって中身が伴わなければ、被害者は救われません。国が都道府県警へのサイバー人材の育成支援・費用負担・処遇改善を一体的に進めなければ、形だけのサイバー警察部が全国に並ぶ結果になりかねません。サイバー空間の脅威は国境も地域格差も問わず広がっています。制度と実力を同時に底上げする具体策が、今まさに問われています。
まとめ
- 2026年5月26日、政府が改正警察法施行令を閣議決定。都道府県警へのサイバー警察部設置が可能になった(施行5月29日)
- 2025年のサイバー犯罪検挙件数は過去最多の1万5108件。ランサムウェア被害も226件と高水準
- 警察庁は2026年4月にサイバー部門一元化を都道府県警へ指示済み。今回はその制度的裏付け
- サイバー警察部を設置しない都道府県警は警務部がサイバー担当を担う。設置義務はなし
- 国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足。民間との給与格差が警察への人材流入を阻む構造的問題がある
- 地方の小規模警察では人員確保が特に困難で、東京など大規模警察との「捜査力格差」が生まれるリスクがある
- 組織の器だけを整備しても被害者は救われない。処遇改善・育成支援・財源確保の一体的な対策が急務