2026-04-29 コメント投稿する ▼
清瀬市長、公約「旧図書館再開」断念の波紋 計画の落とし穴と問われる説明責任
原田博美氏は、市立図書館の利用率低迷を理由に、前市長時代に6館から3館へと大幅に削減された図書館網に対し、市民から寄せられていた疑問や不安の声を受け止めていた。 図書館が位置する中央公園内では、図書館の解体を前提とした新たな複合施設の建設計画が進められていた。
選挙公約と市民の期待
原田博美氏は、市立図書館の利用率低迷を理由に、前市長時代に6館から3館へと大幅に削減された図書館網に対し、市民から寄せられていた疑問や不安の声を受け止めていた。特に、閉鎖され解体が進められていた旧中央図書館については、かつて地域の知の拠点として親しまれてきた施設への愛着を持つ住民から、再開を望む声が根強く存在していた。原田氏はこうした市民の思いを代弁する形で、旧図書館の再生を公約に掲げ、見事、初当選を果たした。有権者は、失われつつあった公共サービスへの回帰と、地域文化の再生への期待を原田氏に託したのである。
視察で直面した建物の実態
しかし、当選から約1カ月後の2026年4月3日、原田市長は初登庁を済ませたその午後に、旧中央図書館へと足を運んだ。そこで市長が目の当たりにしたのは、公約実現への道のりが想像以上に険しいことを示す、衝撃的な光景だった。内部は、建物を支える「軀体(くたい)」、すなわち柱や梁などの構造体だけがむき出しになった、がらんとしたコンクリートの廃墟と化していた。解体工事は市長選の結果を受けて中断されていたが、その荒廃した現状は、単なる休止状態ではなく、「あとは崩すだけ」という、建物の存続を許さないほどの状態であることを物語っていた。市長は「ここまで荒廃が進むとは」と、その惨状に言葉を失った。
計画の複雑さと想定外のコスト
市長は同日午前、市幹部職員を集め、旧図書館の再開に向けた懸念事項について詳細な説明を求めた。そこで明らかになったのは、計画の複雑さと、これまで十分に共有されてこなかった情報であった。図書館が位置する中央公園内では、図書館の解体を前提とした新たな複合施設の建設計画が進められていた。もし旧図書館を再開する場合、この複合施設の建設に必要な面積が約80平方メートル不足するという問題が浮上したのである。
これは、公園の再整備計画との間で生じる、面積に関する重大な抵触問題であり、市長は「あぜんとした」と語った。市議会でも図書館再編は度々議論されてきたが、この公園計画との連携問題は、市長選挙の争点となるまで、原田氏には十分に伝わっていなかったのだ。さらに、1級建築士の資格を持つ市職員からは、現行の建築基準法などを満たす形で図書館を改修するには、構造計算をゼロからやり直す必要があり、事実上、新築と同様のレベルの高度な作業が求められるとの説明を受けた。資材価格の高騰も重なり、改修にかかる費用は当初の想定を大幅に上回る見込みだ。加えて、解体工事の中断により、人件費や重機のリース代などで1日あたり約100万円もの追加費用が発生しており、財政的な負担は日増しに増加していた。
市長の苦悩と説明責任
荒廃した図書館の内部で、原田市長は無念の表情を浮かべた。「図書館再開の要望は根強いが、躯体を生かした再生は困難だ。議会の理解を得るのも難しい」。市長は、公約実現の断念はやむを得ないとの認識を示し、「公約を果たせず、非常に悔しい」と、市民の期待に応えられなかったことへの痛恨の念を口にした。しかし、選挙で市民から託された公約が、当選後すぐに実行不可能となる事態は、公約づくりの甘さや、事前の情報収集・リスク分析の不足を指摘する声も免れないだろう。
今後の市政への影響
利用率低迷を理由に、かつて6館あった市立図書館が3館にまで削減された経緯を持つ清瀬市において、旧中央図書館の再開を支持していた市民の失望は大きいだろう。原田市長には、今回の経緯を市民一人ひとりに丁寧に説明し、理解を求める真摯な努力が求められている。同時に、市民の知的好奇心や学習意欲を満たすための、新たな図書館サービスのあり方を模索し、具体的に提示することが、市政への信頼を回復するための喫緊の課題となる。公園整備計画の見直しも含め、市民参加型の議論を通じて、より良い地域社会の実現を目指す姿勢が問われている。