2026-03-11 コメント投稿する ▼
北朝鮮、新型駆逐艦から「戦略巡航ミサイル」発射 日本列島も射程か
北朝鮮が新型艦から戦略巡航ミサイルを発射したのは、アメリカと韓国が合同で行う大規模な軍事演習への対抗措置である可能性が高いと考えられます。 北朝鮮は、弾道ミサイル開発だけでなく、巡航ミサイルや海上・水中からの発射能力の向上にも力を入れています。 これは、北朝鮮が従来保有しているとされる弾道ミサイルに加え、新たな脅威となり得ます。
ソウル=時吉達也
北朝鮮は10日、まもなく実戦配備される予定の新型駆逐艦「崔賢(チェヒョン)」から、複数の戦略巡航ミサイルを発射する実験を行いました。北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信が11日に伝えたところによると、この実験は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が、名前が「キム・ジュエ」とされる娘と共に、モニターなどを通じて視察する中で実施されました。北朝鮮による駆逐艦からのミサイル試射は、わずか1週間ほど前の4日にも行われたばかりです。今回の実験は、9日に開始されたアメリカと韓国の大規模な合同軍事演習に対する牽制(けんせい)ではないかとの見方が出ています。
金正恩総書記は、今回の実験結果に満足感を示し、「国家核戦力は、多様な運用ができる段階に入った」と強調しました。これは、地上から発射される弾道ミサイルだけでなく、艦船や潜水艦といった海上・水中からの核攻撃も可能にする体制が整っているとの認識を示したものです。
今回の実験で使用されたミサイルは、朝鮮半島西に広がる黄海上空に設定されたルートを、約2時間50分にわたって飛行し、事前に設定されていた島の目標に命中したと伝えられています。韓国の専門家による分析では、このミサイルの飛行距離は1800キロから2000キロに達するとみられており、これは日本列島なども十分射程に入る計算になります。
実験に用いられた「崔賢」は、昨年4月に進水式が行われた比較的新しいタイプの駆逐艦です。金正恩総書記は、海軍の核能力向上のため、同艦と同等以上の規模を持つ駆逐艦を毎年2隻建造する方針を掲げています。この計画に基づき、北朝鮮が建党記念日である今年の10月10日までに、3隻目の新型駆逐艦を完成させる見通しです。
米韓合同演習への対抗姿勢
北朝鮮が新型艦から戦略巡航ミサイルを発射したのは、アメリカと韓国が合同で行う大規模な軍事演習への対抗措置である可能性が高いと考えられます。米韓両軍は、朝鮮半島有事などを想定した実動訓練を9日から開始しており、北朝鮮としては、これに対する軍事的な圧力を示す狙いがあったとみられます。
北朝鮮は、弾道ミサイル開発だけでなく、巡航ミサイルや海上・水中からの発射能力の向上にも力を入れています。特に巡航ミサイルは、弾道ミサイルとは異なり、発射兆候の察知や迎撃が難しいとされることから、その開発・配備は北朝鮮の軍事力、特に核戦力運用能力を一層強化するものとして警戒されています。
金総書記「核戦力、多角的運用段階へ」
金正恩総書記の発言は、北朝鮮の核戦略が新たな段階に入ったことを示唆しています。これまで主に地上配備型の弾道ミサイルに依存してきた核戦力を、今後は艦船や潜水艦といった多様なプラットフォームから運用することで、より秘匿性が高く、奇襲的な攻撃を可能にする狙いがあるとみられます。
「多角的運用段階」という言葉には、地上、海上、水中といった複数の攻撃ルートを確保し、敵に探知されにくい形で核攻撃を実行できる能力を構築するという意思が込められていると考えられます。これは、米韓のミサイル防衛網をかいくぐるための戦略とも言えるでしょう。
日本列島も射程圏内か
専門家が指摘するように、今回のミサイルが1800~2000キロの距離を飛行可能であるならば、朝鮮半島から日本の広範囲をカバーできることになります。これは、北朝鮮が従来保有しているとされる弾道ミサイルに加え、新たな脅威となり得ます。
戦略巡航ミサイルは、弾道ミサイルに比べて飛行高度が低く、レーダーに探知されにくい特性があります。また、軌道を変更することも可能であるため、迎撃がより困難になる可能性があります。日本にとっては、自身の領土・領空・領海への直接的な脅威が増大したと捉えるべき事態と言えます。
海軍力強化と核武装化への野心
北朝鮮が新型駆逐艦の建造を急ピッチで進めている背景には、金正恩総書記の海軍力、ひいては核戦力全体の強化に対する強い意欲があります。新型駆逐艦「崔賢」のような艦船は、単なる哨戒任務だけでなく、ミサイル発射プラットフォームとしての役割も期待されていると考えられます。
年間2隻という建造ペースは、北朝鮮の国力や技術力を考慮すると意欲的な目標です。これが計画通りに進めば、北朝鮮海軍の近代化は急速に進む可能性があります。金正恩総書記は、陸・海・空、そして核戦力に至るまで、あらゆる方面での軍備拡張を通じて、体制の維持と国際社会に対する影響力の確保を図ろうとしていると考えられます。
今回のミサイル実験は、北朝鮮が軍事的な挑発を続ける姿勢を改めて示しました。特に、日本列島を射程に収める可能性のある新型ミサイルの登場は、東アジア地域の安全保障環境に新たな懸念材料をもたらすものと言えるでしょう。今後も、北朝鮮の動向から目が離せません。