2026-10-02 コメント投稿する ▼
誹謗中傷「やったもん勝ち」脱却へ 音喜多氏、法務省の慰謝料見直しに賛同
日本維新の会の音喜多駿氏は、この法務省の動きを「方向性として大賛成」と全面的に支持し、SNSにおける「やったもん勝ち」の構造を終わらせる必要性を訴えています。 この検討の主な目的は、SNSでの誹謗中傷によって生じた被害に対し、現在の慰謝料額が十分とは言えないという指摘を受け、被害に見合う水準へ引き上げることです。
SNS誹謗中傷、深刻化する被害と法務省の検討
インターネットの普及に伴い、匿名性を盾にした誹謗中傷は深刻な社会問題となっています。名誉毀損やプライバシー侵害といった被害は後を絶たず、その影響は甚大です。このような状況を踏まえ、法務省は9月29日、民法の「不法行為」に関する規定の見直しに向けた検討を開始すると発表しました。翌30日には、有識者による研究会がスタートしています。
この検討の主な目的は、SNSでの誹謗中傷によって生じた被害に対し、現在の慰謝料額が十分とは言えないという指摘を受け、被害に見合う水準へ引き上げることです。また、被害者をより効果的に救済できる規定のあり方についても議論される予定です。
この法務省の動きは、大手メディアも注目するところです。日本経済新聞も、SNSを巡る紛争では慰謝料が30万円以下になるケースも少なくなく、加害者を特定するための訴訟費用などを考慮すると、被害者にとって「訴訟負担に見合わない」と指摘されている実情を報じました。その上で、慰謝料算定の際に考慮すべき要素を法律で明確にし、被害に見合う水準へと引き上げる方向性があることを伝えています。
「やったもん勝ち」構造と訴訟費用の壁
音喜多氏が問題視しているのは、現在のインターネット上の誹謗中傷が「やったもん勝ち」となりやすい構造にあります。具体的には、ネット上で名誉を毀損された個人が裁判を起こして勝訴したとしても、認められる慰謝料は数十万円から100万円程度にとどまるケースが多いのが現状です。
一方、匿名投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」や、その後の損害賠償請求訴訟を弁護士に依頼した場合、それぞれに数十万円単位の費用がかかります。つまり、裁判に勝っても、かかった費用を回収できず、赤字になってしまうケースが少なくないのです。
この背景には、現行の民法に、慰謝料をどのように算定するかについての明確な規定がないことがあります。慰謝料の金額は裁判官の裁量に委ねられ、その算定根拠も十分に示されてこなかったため、結果として少額にとどまる傾向が続いてきました。さらに、現行の不法行為に関する規定は、SNSはおろか電話すら普及していなかった1896年(明治29年)の民法制定時からほとんど変わっていないという、時代錯誤な状況にあります。
このような状況下では、悪意ある投稿者や、それを助長するようなメディアは、「訴えられても、支払う賠償額は(得られる情報量や注目度、あるいは違法行為による利益と比べて)微々たるもの」と計算し、訴訟リスクを軽視する傾向が生まれます。これが、音喜多氏が指摘する「やったもん勝ち」の構造であり、賠償による抑止力が十分に機能していない日本の現状なのです。
表現の自由と責任のバランス、維新の提言
慰謝料額が大幅に引き上げられることに対しては、慎重な意見も存在します。賠償額が急激に跳ね上がれば、健全な報道機関や個人が萎縮し、権力に対する批判まで封じられてしまうのではないか、という懸念です。また、資金力のある企業や政治家が、高額請求をちらつかせて批判者を黙らせる「スラップ訴訟(権利濫用訴訟)」に悪用されるのではないか、という危惧も聞かれます。
音喜多氏自身も、政治家として批判を受ける立場にあることから、これらの懸念は軽視すべきではないと考えています。しかし、こうした懸念と、現行制度の不備による被害者の救済不足は、切り分けて考える必要があると主張します。
なぜなら、名誉毀損に関する法理には、現在でも「公共性・公益目的」があり、かつ内容が「真実である(あるいは真実と信じる相当の理由がある)」場合には責任を問われないという原則(真実相当性)が既に存在しているからです。つまり、正当な批判や真っ当な報道は、もともと法的に守られているのです。今回議論されているのは、この法理の範疇を超えた、違法な誹謗中傷に対する責任が軽すぎるという点です。表現の自由は重要ですが、それは同時に、その自由に伴う責任とセットで制度として示されるべきだと音喜多氏は考えています。
この問題に対し、日本維新の会は以前から議員立法での提案を行ってきました。2022年5月には、岩谷良平衆議院議員らが「インターネット誹謗中傷対策の推進に関する法律案」を提出。この法案では、諸外国の損害賠償の状況も踏まえ、「侵害された権利の価値自体を賠償する責めに任ずべき損害とする制度」などの導入を政府に検討させることを定めていました。また、公職にある者への評論など、健全な民主主義の根幹である自由な表現活動への配慮も基本理念に明記されています。さらに2023年12月には、被害者の弁護士費用を補助する法案などを含む関連3法案も提出されており、被害者救済と表現の自由の両立を見据えた設計がなされています。政府がようやく同じ方向に動き出したことを、音喜多氏は率直に歓迎しています。
今後の展望:懲罰的損害賠償への期待
では、慰謝料の見直しはどこまで踏み込むべきなのでしょうか。音喜多氏は、米国などで認められている「懲罰的損害賠償」まで視野に入れた議論を行うべきだと提言しています。
日本の損害賠償制度は、原則として「受けた損害を埋め合わせる」ことを目的としており、加害者への制裁や、将来の同様の行為を抑止する要素は薄いとされてきました。最高裁判所は1997年、懲罰的損害賠償を命じた米国の判決について、日本の公序良俗に反するとして執行を認めないという判断を示しており、導入へのハードルは高いのが現状です。
それでも、音喜多氏は、「払っても割に合う」という加害者側の計算構造を変えるためには、抑止という発想を正面から議論する必要があると訴えます。仮に懲罰的賠償の導入がすぐには難しかったとしても、慰謝料の算定基準を明確にし、加害行為の悪質性、被害の拡散規模、そして加害者がその行為によって得た利益などを、慰謝料額にしっかりと反映させるだけでも、被害者救済の実効性は大きく向上するはずです。
法務省の有識者研究会では、今後、月1回程度のペースで、国内外の制度や裁判例を踏まえた議論が進められる見込みです。未成年者の性被害などを念頭に、損害賠償請求権の消滅時効の起算点についても検討対象となることが示唆されています。1896年の民法制定以来とも言える大規模な改正につながる可能性のあるこの議論は、まさに明治以来の大改正となり得るものであり、社会全体で注視していく必要があります。
まとめ
- 法務省は、SNSなどでの誹謗中傷に対する慰謝料引き上げを検討する研究会を発足。
- 現状では、訴訟費用が慰謝料額を上回り「やったもん勝ち」の構造が生じている。
- 音喜多氏は、この法務省の動きを全面的に支持し、被害者救済と責任追及の強化を主張。
- 表現の自由とのバランスに配慮しつつ、違法な誹謗中傷への抑止力を高める制度設計が求められる。
- 日本維新の会は過去にも議員立法で同様の提言を行っており、懲罰的損害賠償の導入も視野に入れるべきとの見解が示された。
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