2026-08-03 コメント投稿する ▼
音喜多氏が提言:内密出産制度化の5つの論点と課題
まず、音喜多氏が強調するのは、「内密出産」と「赤ちゃんポスト」は異なる概念であるという点です。 音喜多氏が挙げる、内密出産制度化に向けた5つの論点の1つ目は「費用」です。 内密出産は「母親の身元が把握されている」ことを前提としていますが、赤ちゃんポストではその前提が崩れます。 音喜多氏は、内密出産や赤ちゃんポストは、あくまで「望ましい出産や育児の形ではない」という前提に立つべきだと強調します。
内密出産とは? 赤ちゃんポストとの違い
まず、音喜多氏が強調するのは、「内密出産」と「赤ちゃんポスト」は異なる概念であるという点です。
内密出産とは、妊娠・出産した母親が、その身元を明かさずに医療機関で出産する仕組みを指します。出産前後の医療ケアを受けられるため、母体の安全確保という点で、出産後に赤ちゃんを預ける「赤ちゃんポスト」(熊本市の慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」などが代表例)よりも政策として望ましいと音喜多氏は指摘します。
赤ちゃんポストは、あくまで「生まれた後」に赤ちゃんを預かる最後の受け皿であるのに対し、内密出産は「生まれる前」から医療機関とつながり、医療者の立ち会いのもとで出産するため、母体のリスクを軽減できます。また、内密出産では病院内に一定の情報が残るため、将来的に子どもが出自を知りたいと願った場合に対応できる可能性が高まります。ただし、内密出産が「完全に匿名」で出産できる制度ではないことも、音喜多氏は注意を促しています。病院関係者の一部には身元を明かす必要があり、あくまで「明かす相手を最小限に絞る」仕組みであると説明しています。
制度化への動きと維新のプロジェクトチーム
現在、日本国内で内密出産を受け入れている医療機関は、熊本市の慈恵病院と東京都墨田区の賛育会病院のわずか2か所に限られています。国は2022年にガイドラインを示しましたが、制度化に向けた法的な根拠は未整備のままです。
こうした状況に対し、国会では超党派での議論が進んでいます。自民党は既にプロジェクトチームを立ち上げ、2026年6月には論点整理を公表しました。また、国民民主党は2026年5月に、内密出産を念頭に置いた法案を参議院に提出しています。
こうした動きを受け、日本維新の会も党としてプロジェクトチームを立ち上げ、吉村知事がその表明を行いました。音喜多氏もこのチームに関わることになり、今回のブログ記事で論点を整理した形です。維新のPTは後発ではありますが、既存の論点を踏まえ、具体的な法案や予算への落とし込みまで視野に入れた議論を進める方針です。
財政・法整備・出自を知る権利:制度化の壁
音喜多氏が挙げる、内密出産制度化に向けた5つの論点の1つ目は「費用」です。身元が明らかでない場合、妊産婦に対する公的な経済支援を受けることができません。そのため、出産費用や新生児の治療費、さらには相談や調整にかかる人件費まで、現状では受け入れ病院が負担しています。これは診療報酬では評価されないため、特定の病院の善意に依存しており、持続可能な仕組みとは言えません。音喜多氏は、現在議論されている出産費用の保険適用といった制度設計の中に、この課題を組み込めるかどうかが実務的な着地点になるとみています。
2つ目の論点は「法的な位置づけ」です。過去の事例では、出生届の母の名前を空欄にしたことが刑法に触れる可能性が指摘されたケースもありました。現在、一部の自治体では、職権で戸籍を作成するなどの対応が取られていますが、「逮捕されるかもしれない」という不安が、医療機関が内密出産を受け入れる上での大きな障壁となっています。自民党の論点整理でも「法的保護、免責について検討すること」が挙げられており、国民民主党の法案にも明確な免責規定は盛り込まれていません。音喜多氏は、「免責」という言葉を使わずに、適法性を確認する規定を設ける、あるいは出生届に代わる手続きを戸籍法に新設するといった法技術的な工夫の余地があるのではないかと提案しています。
3つ目の論点は「出自を知る権利」です。これは内密出産制度化に対する反対論の最大の争点であり、音喜多氏自身も最も重く受け止めている点です。現状では、民間の病院が数十年にわたり子どもの出自情報を保管し続けることになりますが、その病院が閉院した場合の情報管理が課題となります。現行のガイドラインでは、子どもへの情報開示には母親の同意が必要とされていますが、情報管理体制や、将来的な開示のあり方については、公的な機関での管理や、開示時期・方法の明確化が求められています。自民党の論点整理では公的な管理機関の設置、国民民主党の法案では開示時期や方法に踏み込んでおり、これらの議論が重要になります。
受け皿確保と赤ちゃんポストの課題
4つ目の論点は「受け皿と権限」です。大阪府泉佐野市で赤ちゃんポスト設置が検討されている例を挙げ、同市には児童相談所がないため、預けられた赤ちゃんの養育責任が大阪府に帰属するものの、府側には慎重論があるというジレンマが指摘されています。乳児院の受け入れ余力や、想定を超える事態への対応、そして施設よりも人材の確保が難しいといった問題は、大阪府に限らず、やる気のある基礎自治体に権限や財源が届かないという、統治機構改革で長年指摘されてきた構造的な課題とも言えます。
そして5つ目、音喜多氏が「一番大きい」と指摘するのが、「赤ちゃんポストの扱い」です。内密出産は「母親の身元が把握されている」ことを前提としていますが、赤ちゃんポストではその前提が崩れます。そもそも出自情報が存在しないため、刑法上の論点も内密出産とは異なり、保護責任者遺棄罪などに問われる可能性があります。さらに、扉や保温設備、24時間体制といった基準の整備、行政が設置主体となる場合の責任の所在など、内密出産とは別に、赤ちゃんポストについても、より詳細な議論と法整備が必要であると音喜多氏は結論づけています。
予防策と父親の責任、そして未来へ
音喜多氏は、内密出産や赤ちゃんポストは、あくまで「望ましい出産や育児の形ではない」という前提に立つべきだと強調します。母子の命を守ることを最優先とした上で、それでもなお必要とされる場合に議論すべきであり、その際には「手前の施策」とのセットで語られるべきだと主張します。具体的には、予期せぬ妊娠を防ぐための教育、匿名で相談できる窓口の全国整備、緊急避妊へのアクセス向上、そしてこれまで十分に問われてこなかった「父親の責任」についても、同時に議論を進める必要があるとしています。
内密出産制度化は、賛否が大きく割れるテーマであり、慎重論にも理解できる点は多いと音喜多氏は述べます。しかし、それでも「救われるべき命が現実にそこにあるのなら、やるべきだ」という強い意志を示し、プロジェクトチームでの本格的な議論が開始されることに期待を寄せています。
まとめ
- 音喜多氏は、内密出産制度化に賛成の立場。
- 内密出産と赤ちゃんポストは異なる概念であり、前者は母体保護、後者は子の保護に重きを置く。
- 制度化には、費用負担、法的整備(免責規定など)、出自を知る権利への配慮、受け皿確保、赤ちゃんポストの別個の課題、という5つの論点がある。
- 予防策(教育、相談、緊急避妊)や父親の責任についても、セットで議論する必要がある。
- 救われる命のために、前向きな議論を進めるべきと主張。