2026-08-27 コメント投稿する ▼
沖縄県知事選、辺野古移設は主要な争点ではない?
3選を目指す現職の玉城デニー氏と、県政刷新を掲げる新人の古謝玄太氏による事実上の一騎打ちとなる見通しです。 しかし、長年沖縄政治の最大の焦点であり、安全保障にも関わる米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題は、両陣営とも主要な争点として打ち出していません。
その背景には、法廷闘争での県側敗訴による工事阻止の困難さや、直近で発生した痛ましい事故の影響、さらには「オール沖縄」勢力の求心力低下など、複雑な要因が絡み合っています。
両陣営の思惑と辺野古争点化の回避
3期目を目指す現職の玉城デニー氏は、告示日となった8月27日、本部町での第一声で「辺野古は絶対完成できない。絶対反対だ」と、従来の姿勢を改めて強調しました。この言葉だけを聞けば、辺野古移設反対が選挙戦の軸となるように思えます。
ところが、玉城氏が掲げる7項目の「政策の柱」からは、辺野古移設に関する具体的な言及が姿を消しています。これは、玉城氏が「オール沖縄に縛られない形」での選挙戦を目指す戦略の一環とみられています。そのため、幅広い政党に推薦を依頼するのではなく、立憲民主、社民、共産、いのちといった一部の政党からの支援に留まる姿勢を示しています。
一方、県政刷新を旗印に掲げる新人候補の古謝玄太氏も、辺野古移設容認の立場を取りながらも、告示日朝に那覇市で行った第一声では、「辺野古」という言葉に直接触れることはありませんでした。古謝陣営は、県民の関心が米軍基地問題から「目の前の生活と経済対策」へと移っていると分析しており、沖縄の未来に向けた政策を優先する方針を打ち出しています。
両陣営とも、県民の関心の高さを考慮し、かつての最大の争点であった辺野古移設問題の扱いを慎重にしている様子がうかがえます。
「オール沖縄」の求心力低下と事故の影響
平成26年(2014年)の知事選で、故・翁長雄志氏が「辺野古反対」を旗印に保革勢力を糾合して結成された「オール沖縄」ですが、近年その求心力は低下の一途をたどっています。保守系議員や財界人といった有力者の離脱が相次ぎ、直近の県議選や市長選でも敗北が続いているのが現状です。
こうした勢力図の変化は、玉城氏が「オール沖縄」という枠組みに固執せず、より幅広い支持層の獲得を目指す背景にあるのかもしれません。
さらに、2026年3月には、辺野古沖で船2隻が転覆し、平和学習中の高校生らが犠牲となる痛ましい事故が発生しました。この事故は、事故を起こした船を運航していた抗議団体と玉城氏との関係や、抗議活動のあり方にも疑問符を投げかける形となりました。
玉城陣営としては、このデリケートな問題を抱えながら、辺野古移設を主要な争点とすることを避けたいという苦渋の選択があったのではないでしょうか。安全保障上の重要課題である辺野古移設問題が、こうした様々な要因によって、かつてのような鋭い争点となりにくい状況が生まれているのです。
自民党と保守層の動向
古謝玄太氏を全面支援する自民党にとっては、12年ぶりの「県政奪還」がかかる、まさに悲願達成に向けた決戦となります。今回、立候補の意向を示していた元衆院議員の下地幹郎氏が、自民党からの働きかけもあり、4項目の政策実現を条件に出馬を取りやめ、古謝氏への支援を表明したことは、保守層の結集という点で注目されます。
保守層からの一定の支持を持つ下地氏の不出馬は、古謝氏にとって追い風になるとの見方もあります。しかし、一部からは、下地氏の出馬取りやめが自民党との「取引」によるものではないかという印象が広がることを懸念する声も上がっています。
古謝氏自身も、政党色を薄めて「県民党」を標榜し、県内経済界との連携を深めることで、より幅広い層からの支持獲得を図ろうとしています。保守系有権者の動向が、選挙結果にどう影響するかが焦点となりそうです。
争点のない選挙戦の行方
そもそも、辺野古移設を巡る国と沖縄県との法廷闘争は、県側が敗訴するという形で決着がついており、「代執行」を経て工事は着々と進行しています。現状では、県が工事を物理的に止める手立ては事実上なくなっており、移設の是非を争点化しても、県民の具体的な利益に直結する解決策を示しにくいという側面があります。
両候補とも、政策の柱や第一声で辺野古に直接触れないことで、有権者の関心を「暮らし」や「経済」といった、より身近で切実な問題へと誘導しようとしているのでしょう。しかし、普天間飛行場の早期返還・危険性除去という、沖縄県民が長年切望してきた課題の解決策として辺野古移設が計画されているにも関わらず、その是非が地方選挙で正面から問われない状況は、沖縄政治の特異な姿を浮き彫りにしていると言えるのではないでしょうか。
6人の候補者が届け出を済ませた今回の選挙は、最終的に玉城氏と古謝氏による事実上の一騎打ちとなる見通しですが、安全保障にも関わる大きな問題を横目に、有権者は「継続」か「刷新」かの選択を迫られることになります。両陣営とも、有権者の心をつかむための戦略に苦慮しながら、不安を抱えたまま選挙戦を進めていくことになりそうです。
まとめ
- 沖縄県知事選が告示され、玉城デニー氏と古謝玄太氏の一騎打ちが予想される。
- 辺野古移設問題は両陣営の主要な争点として扱われていない。
- 「オール沖縄」の求心力低下や事故の影響が背景にある。