2026-09-28 コメント投稿する ▼
「根回し廃止」で福岡県議会は変わったが…音喜多氏が説く「線引き」の必要性
しかし、音喜多氏は、この「事前調整はすべて悪」という結論に至ってしまうことには、「待った」をかけるべきだと主張する。 * 福岡県議会では、相次ぐ不祥事を受け服部知事が「根回し廃止」を打ち出し、9月定例会で論戦に緊張感が生まれた。 * しかし、音喜多氏は「根回し」を一律に廃止することは、議論の質を低下させ、「後日回答」を増やす懸念があると指摘。
背景:相次ぐ不祥事と「根回し廃止」への流れ
事の発端は、福岡県議会で相次いだ不祥事だ。蔵内勇夫前議長の議員辞職に始まり、知事と議長が一体となって進めてきた「ワンヘルス」政策の妥当性、高額な海外視察、県庁幹部による互助会「部課長会」を通じた政治資金パーティー券の組織的購入などが問題視された。こうした一連の事態は、議会と執行部が過度に近すぎ、癒着とも捉えられかねない不透明な関係にあったことが背景にあると指摘されている。
これらの問題に対し、6月の定例会では、わずか2名の議員しか踏み込んだ質疑を行わなかった。そのうちの一人が、一人会派「日本維新の会福岡」の塩生好紀議員であった。こうした状況を受け、服部知事は「議会との根回し廃止」を掲げ、県議会における事前調整のあり方にメスを入れることを決断した。
「根回し廃止」で生じた議会の変化
服部知事による「根回し廃止」方針は、9月の定例会において明確な変化をもたらした。朝日新聞の報道によれば、通告日前の事前調整がほぼなくなった結果、35人中10人以上の議員が「ワンヘルス」政策をテーマに質問に立ち、独自調査に基づく追及も見られたという。これは、6月の定例会で「ワンヘルス」を質問要旨に含めたのがわずか3人だったことと比較すると、劇的な変化と言えるだろう。
この変化は、ある種の「ショック療法」としては一定の効果を発揮したと評価できる。長年続いてきた慣習に一石を投じ、議員のチェック機能を本来あるべき姿に近づけようとする試みであったことは理解できる。しかし、音喜多氏は、この「事前調整はすべて悪」という結論に至ってしまうことには、「待った」をかけるべきだと主張する。
「根回し」の功罪と「一律廃止」への警鐘
音喜多氏が問題視するのは、「根回し」という言葉で一括りにされ、その実態が曖昧にされている点だ。「根回し」といっても、その内容は多岐にわたる。音喜多氏は、それを以下の3つに分類した。
- 職員が議員の質問文そのものを書く
- 議員が質問の意図や論点を事前に伝える
- 執行部が答弁の方向性を議員に相談する
このうち、1つ目の「職員が議員の質問文を書く」という行為は、議員のチェック機能を放棄した行政への丸投げであり、論外であると断じている。しかし、2つ目や3つ目の「質問意図の共有」や「答弁方針の相談」までをも一律に禁止してしまうのは、あまりにも極端であり、「振れ幅が大きすぎる」と音喜多氏は指摘する。
建設的な議論を支える「線引き」の必要性
では、質問の意図や論点を事前に伝えない、あるいは答弁の方向性を相談しないという状況は、具体的にどのような問題を引き起こすのだろうか。音喜多氏は、執行部側が「何を聞かれるか分からない」まま本会議に臨むことになると指摘する。これにより、細かい数字や過去の経緯を問われた際に、その場で的確な答弁ができず、「調査して後日お答えします」とか「検討してまいります」といった答弁が増加する懸念がある。
このような答弁は、県民にとっては何ら中身のないものであり、議員が本当に引き出したかった事実も、結局は引き出せないまま終わってしまう。音喜多氏は、「緊張感と実のある議論は、必ずしもイコールではありません」と述べ、形式的な緊張感だけでは、真の行政監視にはつながらないことを示唆した。
過去の経験から、音喜多氏は東京都議会と国会の質問・答弁調整のあり方を比較する。東京都議会では、質問・答弁ともに文書で一言一句確認する「ガチガチ」な調整が行われ、本会議は「台本を読み上げる場」に近い状態であったという。一方、国会では、質問通告で論点を伝え、役所から聞き取りを受けることはあるものの、答弁の文言まで一字一句すり合わせることは基本的にない。再質問や追及で答弁が崩れることも日常茶飯事だ。
この比較から、音喜多氏が導き出す結論は、「事前調整には「程度」がある」ということだ。東京都議会のような「ガチガチ」な調整は行き過ぎであるが、福岡県議会のように全てを廃止してしまうと、準備不足の答弁ばかりになり、実質的な議論が深まらない。目指すべきは、その中間にある。音喜多氏は、「「何を聞くか」は共有する。「どう答えるか」の筋書きは一緒につくらない」という、明確な「線引き」を提言する。
さらに音喜多氏は、問題の本質は「事前の接触」そのものではなく、「不透明な接触」であると強調する。福岡県議会の一連の問題も、議会と執行部が水面下で一体化し、外部からその実態が見えなかったことが根源にある。したがって、重要なのは、事前にやり取りした質問要旨などをきちんと公開し、議論のプロセスを「見える化」することだ。福岡県議会では、すでに質問票をホームページで公表しているが、これをさらに運用ルールとして明文化し、透明性を高めることが求められる。音喜多氏は、「見えるところでやる調整は、なれ合いではありません」と断言し、透明性確保こそが、健全な議会運営に不可欠であると訴える。
改革の機運が高まる時ほど、議論は極端な方向へ振れやすい。福岡県議会が、せっかく生まれた緊張感を維持しつつも、建設的な議論と行政監視の機能を損なわないための「線引き」と「透明性」を確保するルールづくりへと進むことが期待される。
まとめ
- 福岡県議会では、相次ぐ不祥事を受け服部知事が「根回し廃止」を打ち出し、9月定例会で論戦に緊張感が生まれた。
- しかし、音喜多氏は「根回し」を一律に廃止することは、議論の質を低下させ、「後日回答」を増やす懸念があると指摘。
- 「職員が質問文を書く」のは論外だが、「質問意図の共有」や「答弁方針の相談」は、建設的な議論のために必要。
- 目指すべきは、「何を聞くか」は共有し、「どう答えるか」は作らない、という「線引き」である。
- 問題の本質は「不透明な接触」であり、質問要旨の公開など「見える化」を進めることが重要。
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