2026-07-07 コメント投稿する ▼
新潟県ベトナム人材支援、その実態と「バラマキ」の懸念
少子高齢化が深刻化する日本において、外国人材の受け入れは避けて通れない課題ですが、その支援策が本当に国益や地域経済の持続的な発展に繋がるのか、慎重な検証が求められます。 新潟県がベトナム人材の採用支援に乗り出した背景には、国内、特に地方における労働力不足の深刻化があります。
地方の人材確保、その切迫した背景
新潟県がベトナム人材の採用支援に乗り出した背景には、国内、特に地方における労働力不足の深刻化があります。製造業や農業などを中心に、人手不足は多くの県内企業にとって喫緊の経営課題です。そうした状況を受け、新潟県はベトナムのタインホア省およびビンロン省と人材交流に関する覚書を締結し、これを機に県内企業が現地で人材を確保できるようなマッチングイベントを企画しました。この取り組みの事務局は東洋ワーク株式会社が担います。
実態の見えぬ支援、問われる効果
今回の支援策では、県内企業がベトナム現地で開催されるマッチングイベントに参加する費用の一部を負担する形となります。具体的には、Aコース(タインホア省訪問)が10月18日から21日、Bコース(ビンロン省訪問)が10月20日から24日にかけて実施される予定です。参加費用は航空券が約24万円、宿泊費が1泊約2万円程度に加えて、現地の飲食代などがかかるとされています。イベント内容は、現地ベトナム人学生等に向けた企業PRや採用面接、送り出し機関の視察などが予定されています。
しかし、この支援策の肝となる「どのような企業が、どのような職種で、どの程度の規模の採用を目指すのか」といった具体的な目標設定、すなわちKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)が、現時点では明確に示されていません。単に「外国人材の採用を希望する県内企業向け」というだけでは、効果測定が不可能であり、税金が投じられる事業として、その妥当性が問われます。
「バラマキ」に終わるリスク
外国人材の受け入れは、一時的な労働力不足を補うだけでなく、地域社会への定着、文化の理解、そして将来的には経済交流の活性化に繋がる可能性を秘めています。しかし、今回の新潟県による支援策には、そうした持続的な効果を生み出すための具体的な計画が見受けられません。採用されたベトナム人材が、県内で安定した雇用を得て、地域経済に長期的に貢献できるような、より手厚いサポート体制や、企業側の受け入れ体制に対する支援策が不可欠です。それらが伴わないまま、単に現地での採用活動を支援するだけであれば、それは「バラマキ」と批判されても仕方がないでしょう。
国益との乖離、高市政権の政策との整合性は
高市早苗総理大臣率いる現政権は、安全保障や経済安全保障の観点から、ベトナムとの関係強化に力を入れています。防衛省がベトナムに対し、沈没船捜索救難や航空気象分野での能力構築支援を行うといった動きもあります。また、イオングループによるベトナムとの若い世代の交流事業なども、国レベルで重視されていることがうかがえます。
一方で、地方自治体レベルで実施される個別の外国人材採用支援策が、これらの国益や国家戦略とどのように連携し、貢献するのかという点については、依然として不明確です。セネガルやモンゴルへの食料・保健医療支援などに巨額の予算が投じられている現状を鑑みれば、地方自治体が行う人材支援も、より大きな視点、すなわち国益に資するものであるべきです。しかし、その道筋が描けていない現状は、各自治体が場当たり的に外国人材の受け入れを進めているのではないか、という疑念を抱かせます。
「多文化共生」の現実と課題
「多文化共生」という言葉は、外国人材の受け入れを推進する上で都合よく使われがちですが、その現実には多くの課題が横たわっています。言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの障壁、地域社会への溶け込みの難しさ、そして労働条件や待遇に関する問題など、枚挙にいとまがありません。新潟県が今回示した支援策は、あくまで人材の「採用」に焦点を当てたものですが、採用後の定着や、地域社会との調和といった、より本質的な課題への取り組みが、今回の発表からは見えてきません。
明確な成果指標に基づいた戦略的投資を
新潟県がベトナム人材の採用支援に乗り出したことは、人手不足に悩む地域経済にとって、一定の期待を持たせるものではあります。しかし、その支援が一時的な「バラマキ」で終わることなく、将来にわたって地域経済の活性化に貢献する「戦略的投資」となるためには、明確な目標設定と、その達成度を測るための具体的な成果指標(KPI)の設定が不可欠です。
地方創生の名の下で、安易に外国人材の受け入れを拡大するだけでは、社会全体の持続可能性や、日本国民一人ひとりの生活水準の向上には繋がりません。今回の新潟県の取り組みが、そうした安易な政策に陥ることなく、真に地域経済の発展に資するものであるかを、我々は注視していく必要があります。