2026-06-05 コメント投稿する ▼
大阪北部地震8年、ブロック塀撤去進まぬ現実:補助金制度の課題と市民意識の風化
その中でも、高槻市立寿栄小学校で発生したブロック塀の倒壊事故は、多くの人々の記憶に深く刻まれています。 現在では、ほぼ全ての市立施設でブロック塀が撤去されており、残る施設についても2026年度中の完了を目指しています。 例えば、2024年に発生した能登半島地震では、がれきの撤去作業中にブロック塀の下敷きになって亡くなるという、大阪北部地震と類似した痛ましい事故が発生しました。
震災の記憶と安全対策の必要性
この未曾有の災害から8年が経過しようとしています。地震発生当時、大阪府高槻市では震度6弱を観測し、多くの建物に被害が出ました。その中でも、高槻市立寿栄小学校で発生したブロック塀の倒壊事故は、多くの人々の記憶に深く刻まれています。この事故は、老朽化したブロック塀の危険性、そして通学路における安全確保の脆弱性を露呈しました。
この悲劇的な出来事を受け、高槻市は再発防止に向けた具体的な対策に乗り出しました。まず、市立の施設、特に小中学校や公民館などに設置されていたブロック塀の撤去を最優先で進めました。現在では、ほぼ全ての市立施設でブロック塀が撤去されており、残る施設についても2026年度中の完了を目指しています。
しかし、市立施設だけでなく、住民が所有する民間のブロック塀も大きなリスク要因です。そこで市は、住民が自主的に危険なブロック塀を撤去・改修する際の費用を補助する制度を導入しました。この制度は、道路や公園に面した高さ80センチ以上のコンクリートブロック塀やレンガ塀などが対象となり、撤去または高さを60センチ以下にする工事に対して、1平方メートルあたり最大1万3000円を補助するものです。
補助金制度の低迷
市民の安全を守るための重要な取り組みである補助金制度ですが、その利用状況は期待されたほど伸びていないのが現状です。制度が始まった2018年度(平成30年度)当初は、地震直後の強い危機感からか、258件もの申請がありました。しかし、翌2019年度(令和元年度)には、補助金の上限額を最大30万円から100万円に引き上げたにもかかわらず、申請件数は66件へと大幅に減少しました。
その後も、2020年度(2年度)は84件、2021年度(3年度)は68件、2022年度(4年度)は102件と、年間100件前後で推移し、顕著な増加は見られませんでした。大規模な撤去工事にも対応できるよう、2023年度(5年度)には補助金の上限額を300万円まで引き上げましたが、それでも申請件数は96件にとどまりました。2024年度(6年度)は87件、そして直近の2025年度(7年度)は77件と、むしろ減少傾向にあります。
特に懸念されるのは、市が2025年度に幹線道路や通学路沿いにある危険なブロック塀(計261件)について、集中的に撤去を呼びかけた際の状況です。これだけ具体的に危険箇所を提示し、撤去を促したにもかかわらず、補助制度を利用して実際に塀が撤去されたのはわずか17件でした。この数字は、制度の認知度や利用意欲に大きな課題があることを示唆しています。
危機意識の風化と制度の課題
では、なぜ市民の安全に直結するはずの補助金制度の利用が伸び悩んでいるのでしょうか。高槻市の担当者は、その背景に「時間の経過とともに、当事者意識が低くなっている」 ことを挙げています。
地震直後は、ブロック塀のひび割れや傾きといった具体的な被害が多数報告され、「自分の家や敷地の塀が倒壊したらどうしよう」という強い危機感が市民の間に広がっていました。しかし、地震から年月が経つにつれて、その記憶は徐々に薄れ、ブロック塀に対する関心も低下してしまうのが実情のようです。
この傾向は、他の災害においても同様に見られます。例えば、2024年に発生した能登半島地震では、がれきの撤去作業中にブロック塀の下敷きになって亡くなるという、大阪北部地震と類似した痛ましい事故が発生しました。しかし、それでもなお、多くの人々は「自分は大丈夫だろう」「まだ大丈夫だろう」と考えがちです。
補助金制度の利用が進まない要因としては、制度自体の周知不足や、申請手続きの煩雑さ、あるいは補助額が必ずしも十分ではないといった、制度設計上の課題も考えられます。しかし、最も根深い問題は、災害の記憶が風化し、潜在的なリスクに対する市民の意識が低下していることにあると言えるでしょう。
市の取り組みと課題
こうした状況を踏まえ、高槻市は2026年度(8年度)、「申請件数100件、補助額2600万円」を新たな目標に掲げ、制度の利用促進に向けた取り組みを強化する方針です。具体的には、市職員が対象となる地域を訪問し、直接制度の説明を行ったり、不在の場合でも制度案内資料をポストに投函したりするなど、より積極的かつ丁寧な広報活動を展開していく計画です。
担当者は、「根気強く説明を続けていくしかない」と、地道な努力を続ける必要性を強調しています。市民一人ひとりの安全意識を高め、危険なブロック塀の撤去へとつなげていくためには、行政からの働きかけだけでなく、地域コミュニティ全体での協力や、メディアを通じた継続的な情報発信が不可欠となるでしょう。
地震の記憶が風化することは、同じ過ちを繰り返すリスクを高めることにつながりかねません。ブロック塀の安全対策は、単に行政だけの問題ではなく、私たち住民一人ひとりが関心を持ち、主体的に取り組むべき課題です。補助金制度を効果的に活用し、安全で安心なまちづくりを進めていくことが、今、強く求められています。