2026-09-03 コメント投稿する ▼
大阪が目指す世界トップ10観光都市:パリに匹敵するブランド戦略
ランキングで指摘された「持続可能性」の低さは、単に観光客数を増やすだけでなく、環境への配慮や地域社会との共生といった、より本質的な観光のあり方が求められていることを示唆しています。 * 大阪府市は2030年までに世界の観光都市トップ10入りを目指す「大阪都市魅力創造戦略2030」を策定した。
昨年のユーロモニターインターナショナルの「世界の観光都市ランキング」では、パリが5年連続で1位となり、マドリード、東京が続きました。このランキングで大阪は16位から11位へ、京都は27位から19位へと順位を上げ、日本から3都市がトップ20入りを果たしたのは特筆すべき点でしょう。東京、大阪、京都は「観光インフラ」や「衛生・安全」の項目で高評価を得ましたが、一方で「持続可能性」の分野では、他都市に比べて評価が低いという分析も出ています。この点は、今後の戦略において重要な示唆を与えるものです。
大阪、世界トップ10観光都市へ挑む
大阪府市が掲げる「世界の観光都市トップ10入り」という目標は、近年のインバウンド需要の回復と、国際的な観光競争の激化を背景としています。この戦略は、2025年に開催される大阪・関西万博の成功を起爆剤とし、その後の持続的な観光振興へと繋げることを目指しています。特に、万博の会場となる夢洲を、国際的なエンターテインメント都市へと発展させる構想は、大阪の新たな顔となる可能性を秘めています。
ユーロモニターインターナショナルが発表した2025年のランキングでは、パリが首位を維持し、マドリード、東京が続きました。大阪が11位、京都が19位と、両都市ともに順位を上げたことは、日本全体の観光地としての魅力向上を示すものと言えるでしょう。しかし、このランキングは経済・ビジネスの実績、観光インフラ、衛生・安全、持続可能性など6つの分野で評価されており、日本勢はインフラや安全面で強みを発揮する一方、持続可能性の項目で課題を抱えていることが示唆されています。これは、単に観光客数を増やすだけでなく、環境や地域社会との調和を図る、より質の高い観光のあり方が求められていることを意味します。
IRと万博レガシーが核となる戦略
新たな「大阪都市魅力創造戦略2030」は、2026年度から30年度までの計画期間とし、「大阪ならではの都市魅力ブランドの確立」と「持続可能な観光の実現」を二つの柱としています。その中心となるのが、2030年開業が予定されている夢洲のIRです。カジノだけでなく、国際会議場や展示場、ホテルなどを含むIRは、広域的な集客が見込まれます。
また、2025年に開催される大阪・関西万博の会場となる夢洲の「レガシー(遺産)」の活用も、戦略の重要な要素となります。万博で培われた国際的な注目度やインフラを、IRや新たな観光コンテンツへと繋げていく狙いです。さらに、MICE(マイス:国際会議、研修旅行、国際会議、展示・イベント)施設の誘致強化や、キャッシュレス決済・デジタル化の推進による利便性向上も図られます。これらの施策を通じて、来訪者が何度でも訪れたくなるような「おもてなし力」の向上を目指すのです。
大阪への外国人旅行者数は、2025年には過去最多の1700万人を記録すると見込まれていますが、戦略では2030年までに2300万人へと、さらなる増加を目指しています。この目標達成のためには、IRや都市中心部だけでなく、大阪府全体に観光客を分散させ、地域経済の活性化に繋げることが不可欠です。
広域周遊の実現へ、市外観光資源の活用が鍵
しかし、大阪の観光戦略における大きな課題も浮き彫りになっています。大阪観光局の調査によれば、訪日外国人旅行者のうち、大阪市以外の府内自治体を訪れるのはわずか21.3%にとどまっています。国内旅行者に至っては、その割合は5%にまで低下するというデータもあります。これは、多くの観光客が大阪市内に集中し、府内各地の豊かな観光資源に触れる機会が限られている現状を示しています。
この課題を克服するため、府と市は、食や世界遺産といった府内各地が持つ独自の魅力を積極的に発信し、広域的な周遊ルートの開発や、交通網の整備を進める方針です。大阪府の吉村洋文知事は、「都市同士が競争する時代に入る。その都市にしかない魅力、個性を最大限引き上げることが大事で、大阪が世界のトップ10に入るのは不可能ではない」と述べ、地域ごとの特色を活かしたブランド戦略の重要性を強調しています。府内各地の隠れた魅力を掘り起こし、国内外に効果的にアピールできるかどうかが、目標達成の鍵を握ると言えるでしょう。
持続可能性とブランド力強化が問われる
大阪が目指す「世界トップ10観光都市」への道は、順風満帆とは言えません。ランキングで指摘された「持続可能性」の低さは、単に観光客数を増やすだけでなく、環境への配慮や地域社会との共生といった、より本質的な観光のあり方が求められていることを示唆しています。IR開発に伴う環境影響や、地域住民との調和といった課題に、いかに向き合っていくのか。
国際エンターテインメント都市としての魅力と、地域社会が持続的に発展できる観光モデルを両立させることは、容易ではありません。夢洲IRの開業や万博レガシーの活用は、大阪の国際的なプレゼンスを高める大きなチャンスですが、同時に、その恩恵が府内全域に広がり、かつ長期的に持続可能な形で地域に根差していくような戦略が不可欠となります。大阪がパリのような、あるいはそれを超える観光都市へと成長を遂げるためには、都市としてのブランド力を高めると同時に、地域社会との共生を図る、バランスの取れたアプローチが求められるのではないでしょうか。
まとめ
- 大阪府市は2030年までに世界の観光都市トップ10入りを目指す「大阪都市魅力創造戦略2030」を策定した。
- 戦略の柱は、夢洲のIR開業(2030年予定)と大阪・関西万博のレガシー活用、MICE誘致強化、デジタル化推進である。
- 2030年までに外国人旅行者数を2300万人に増やす目標を掲げている。
- 大きな課題として、大阪市に観光客が集中し、府内各地への周遊が進んでいない点が挙げられる(訪日外客の市外訪問率は21.3%)。
- 今後は府内各地の観光資源の魅力発信や交通網整備を通じて、広域周遊を促進する方針だ。
- ランキングで指摘された「持続可能性」の低さを克服し、国際的な魅力と地域社会との共生を両立させることが求められている。