2026-05-12 コメント投稿する ▼
石原宏高環境相が水俣病患者への発言を一転「言葉足らず」と釈明 患者団体は抗議文提出
2026年5月1日の水俣病公式確認70年の節目に、石原宏高・環境大臣が胎児性水俣病患者の金子雄二さん(70歳)に対し「市長に伝える」と前向きに応じた翌日、記者会見で「本人の前だったので発言した。現実は難しい」と態度を一転させました。患者側は抗議文を提出し、謝罪を要求。5月12日の閣議後会見で石原氏は「言葉足らずだった」と釈明しましたが、真摯に向き合う姿勢が問われています。水俣病公害から70年を経ても、患者が医療と福祉のはざまで苦しむ現実は続いています。
水俣病公式確認70年の節目に 患者との面会で何が起きたか
2026年5月1日は、水俣病の公式確認からちょうど70年の節目にあたる日でした。
熊本県水俣市では毎年この時期に慰霊式が行われます。2026年4月30日、石原宏高・環境大臣(自由民主党、以下自民党)は慰霊式にあわせて水俣市を訪れ、胎児性(たいじせい)水俣病患者の金子雄二さん(70歳)と面会しました。
胎児性水俣病とは、母親の体内にいるときに有機水銀(ゆうきすいぎん)の影響を受け、生まれながらに重い障害を抱える病気のことです。
金子さんは現在、24時間介護が必要な状態です。2024年3月に市の障害者支援事業として「訪問入浴介護(ほうもんにゅうよくかいご)」の利用を申請しましたが、水俣市はわずか2日後に却下しました。市は「65歳以上は介護保険サービスが優先される」ことを理由に挙げましたが、金子さんは「自分の障害は加齢によるものではなく水俣病が原因だ」として、介護保険の利用を拒んでいます。
行政不服審査請求(ぎょうせいふふくしんさせいきゅう)を経て市は一度決定を取り消したものの、2025年12月に再び同じ理由で申請を却下しました。金子さん側は今も不服申し立てを続けており、問題は解決していません。
石原環境相が「市長に伝える」と発言 翌日に一転
この問題を抱える金子さんと支援者の加藤タケ子さん(75歳)は2026年4月30日、水俣市を訪問中の石原環境相に支援を直接訴えました。
石原氏はこの場で「私の方から市長にお話をさせていただきたい」と述べ、問題解決に動く姿勢を見せました。
金子さんと加藤さんはこの発言を大きな前進と受け止め、期待を抱きました。
しかし翌日の2026年5月1日、慰霊式後の記者会見で報道陣に真意を問われると、石原氏は「金子さんの前だったのでそう発言した。現実はなかなか難しい」と述べ、態度を一転させました。
この「翌日の発言」に患者側は強く反発しました。支援者の加藤タケ子さんは「リップサービスだったとは、マイク切りよりひどい」と憤りを露わにしました。「マイク切り」とは、2024年の患者団体との懇談で、発言中の被害者の声がマイクで遮られた出来事を指しており、水俣病をめぐっては過去にも政府の不誠実な対応が問題となってきました。
2026年5月7日、金子さんが所属する「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会」と支援団体「きぼう・未来・水俣」は石原環境相に抗議文を提出しました。抗議文は「患者の切実な要望に対し、公式の場でこのような対応をするのは、長年苦しんできた被害者を深く傷つけるもの」と批判し、石原氏が水俣市を再訪して金子さんに直接謝罪するよう求めました。
「患者の目の前で誠実な顔をして、翌日にひっくり返すのは政治家として最低だと思います」
「水俣病から70年。患者の声を軽視する姿勢が今も変わっていないことに怒りを感じます」
「石原環境相には水俣に戻って直接謝ってほしい。言葉の重さを分かっていないのでは」
「介護保険か障害福祉サービスかの問題、金子さんの尊厳を守るためにも国が動くべきです」
「リップサービスで患者を傷つけた。発言には責任を持ってほしいと強く思います」
「言葉足らずだった」と釈明 市長への伝達も強調
批判が高まる中、石原宏高・環境相は2026年5月12日の閣議後記者会見で改めて発言の真意を説明しました。
石原氏は「記者会見の場で(市長に伝えたことを)言及しなかったのは言葉足らずだった」と釈明しました。また、金子さんとの面会後、事業主体である高岡利治・水俣市長に実際に内容を伝えていたとも強調しました。
ただ、5月1日の記者会見での「金子さんの前だったのでそう発言した」という言葉は、患者を前にした発言と実際の行動方針が異なるとも受け取られかねず、患者側からの抗議はこの点を鋭く突いたものでした。
問われる政治の誠実さ 水俣病70年の教訓は生かされているか
水俣病は日本が経験した最大規模の公害事件の一つです。有機水銀を含む廃水を海に流し続けたチッソ株式会社と、それを長年見過ごしてきた行政の責任は今も問われ続けています。
公式確認から70年が経った今も、金子さんのように医療と福祉のはざまで十分な支援を受けられていない患者がいます。 胎児性水俣病患者は生まれながらに障害を持っているため、「加齢による障害」とは本質的に異なります。にもかかわらず、65歳という年齢で機械的に線引きして障害福祉サービスを打ち切る制度のあり方は、患者の「個人の尊厳」を傷つけるとの指摘が以前からあります。
また、2026年5月1日の懇談では、環境省の伯野春彦・環境保健部長が4月中旬の非公式の場で被害者団体に「他の公害患者と比べても水俣病患者は恵まれている」といった趣旨の不適切な発言をしたと指摘されており、石原氏は「もしそのように取られてしまう発言があったとすれば謝りたい」と述べました。
国と地方が水俣病患者の訴えにどれだけ真剣に向き合ってきたか、今回の問題は改めてその姿勢を問うものです。発言の重みを政治家自身が自覚し、患者の尊厳を守る具体的な政策を講じることが、今まさに求められています。
まとめ
- 2026年4月30日、石原宏高・環境相が胎児性水俣病患者の金子雄二さんと面会し「市長に伝える」と前向きに発言
- 翌5月1日の会見で「本人の前だったのでそう発言した。現実は難しい」と一転
- 患者側は「リップサービスで被害者への侮辱」と反発し、2026年5月7日に抗議文を提出
- 石原氏は2026年5月12日の閣議後会見で「言葉足らずだった」と釈明し、市長への伝達済みを強調
- 金子さんは「65歳以上は介護保険優先」という市の判断に対し、水俣病による障害は加齢と異なるとして不服申し立てを継続中
- 水俣病公式確認70年を経ても、患者が医療・福祉の制度のはざまで苦しむ現実は続いている