2026-08-27 コメント投稿する ▼
NPO不正受給、法人格悪用で逃げ切れるのか 音喜多氏が分析
この事件に対し、音喜多駿氏は自身のウェブサイトで、法人が既に破産手続きを終え、返還請求の相手方が存在しない状況を指摘しつつ、「法人を畳めば不正受給から逃げ切れるのか」という根源的な問題を提起している。 問題となっているのは、東京都が認定するNPO法人「再チャレンジ東京」が、自殺対策事業に関する都の補助金を不正に受給していたという事実だ。
事件の背景:NPO法人による巨額補助金不正
問題となっているのは、東京都が認定するNPO法人「再チャレンジ東京」が、自殺対策事業に関する都の補助金を不正に受給していたという事実だ。東京都の発表によると、同法人は実際には支払っていない講師への謝礼を架空計上したり、実施していない対面相談を「実施した」と虚偽の報告をしたりしていた。朝日新聞の報道によれば、架空請求は5社33人分に及ぶという。この手口により、同法人は交付決定額約4893万円のうち、約3779万円を不正に受給していたとされている。
発覚のきっかけは、東京都職員による事業実施場所の現地確認だった。相談員に直接聞き取りを行ったところ、報告されていた実績と大きく乖離していたため、不正が明らかになった。しかし、音喜多氏は、この法人が既に破産手続きを終え、法人格が消滅している点を問題視している。これにより、都が本来請求すべき返還金や損害賠償の矛先が定まらなくなる可能性があるからだ。都は警視庁に相談していると報じられているが、音喜多氏は「相談」と「告発」の違いを指摘し、当局の対応に疑問を呈している。
「法人格消滅」は責任逃れを許すのか
音喜多氏が最も問題視しているのは、「法人を畳めば不正受給から逃げ切れるのか」という点である。同氏は、「法人は消えても、人は消えません」と強調し、法人格が消滅したとしても、不正行為を実行した個人の刑事責任は問われるべきだと主張する。領収書の偽造は有印私文書偽造・同行使罪、不正に補助金を受け取った行為は詐欺罪に該当しうる。都の調査で偽造が確認され、理事長も不正を認めていると報じられているにもかかわらず、なぜ「相談」という段階に留まり、刑事告発に至らないのか。音喜多氏は、公務員に犯罪があると知れば告発する義務を定めた刑事訴訟法に言及し、都の消極的な姿勢を批判している。
さらに、音喜多氏はNPO法人制度における「法人格の穴」にも言及している。株式会社や一般社団法人には、役員が悪意または重過失により第三者に損害を与えた場合の責任を追及する法律規定がある。しかし、NPO法(特定非営利活動促進法)には、このような役員の第三者責任に直接あたると規定する条文が存在しない。そのため、都が個人を追及しようとすれば、民法上の不法行為責任として立証する必要があり、そのハードルは極めて高い。「小さな法人が動きやすいように」という立法趣旨は理解できるものの、公金を巨額に扱う場面では、この制度の軽さが「逃げ切れる」構造を生み出す温床となりかねない、というのが音喜多氏の分析だ。
記録管理の不備と分野特有の課題
今回の事件で、音喜多氏がもう一つ看過できない点として挙げているのが、過去の記録管理の不備である。報道によると、2017年度以前にも同法人に補助金が交付されていたが、文書が残っていないため、その正確な金額すら把握できていないという。つまり、都自身が不正の全容を検証できない状態にあるのだ。音喜多氏は、公金の交付記録が数年で消滅するような運用は問題であり、少なくとも刑事事件の時効期間を超える保存年限が必要だと指摘する。不正受給の全容が「わからない」で終わることは、調査能力の限界ではなく、記録管理体制そのものの設計上の問題であると、音喜多氏は断じている。
加えて、音喜多氏は自殺対策という分野特有の難しさにも触れている。自殺対策の活動は、その効果が直接的な数字で測りにくい。「相談に来た人が思いとどまった」という成果は、証明が本質的に困難なのだ。さらに、事業の受益者は、その立場から声を上げにくい傾向にある。そして、こうした「声なき支援」の分野に対して、社会全体として取り組みを厳しく問い質すことへの、ある種の「ためらい」が働く空気が存在する。音喜多氏は、その空気がチェック体制を甘くし、今回の不正受給のような事態を招く土壌となっている可能性を指摘している。
音喜多氏が訴える「責任追及の重要性」
音喜多氏は、これらの問題を整理した上で、最終的に「丁寧な検証と、きちんとした刑事手続が必要」だと訴える。法人格が消滅したからといって、不正に関与した個人が責任を免れることは許されるべきではない。もし今回のケースが「回収不能でした」で幕を閉じれば、「法人を畳めば逃げ切れる」という悪しき前例となり、真面目に活動している他のNPO団体への信頼まで失墜させることになりかねない。
自殺対策という、社会的に支援が不可欠な分野だからこそ、その運営には透明性と厳格な説明責任が求められる。音喜多氏は、今後の東京都の対応に注視するとともに、NPO法制そのものにおける、法人格と個人の責任の所在を明確にし、悪用を防ぐための見直しも必要になると締めくくっている。
まとめ
- NPO法人「再チャレンジ東京」が自殺対策事業で約4893万円の補助金を不正受給した疑いで、東京都が調査。
- 法人は既に破産手続きを終え、返還請求の相手方が存在しない状況。
- 音喜多駿氏は、法人格消滅で責任逃れができないか、刑事責任は問われるべきと主張。
- NPO法には役員責任規定がなく、個人追及のハードルが高い構造的課題がある。
- 補助金交付記録の不備や、自殺対策分野特有の「チェックの甘さ」も問題視。
- 「回収不能」で終わらせず、丁寧な検証と刑事手続き、NPO法制の見直しが必要と提言。