2026-07-23 コメント投稿する ▼
愛知県、外国人材受入支援でパソナ委託 - 税金投入の実効性問われる
愛知県は、こうした社会情勢を踏まえ、「あいち外国人材受入サポートセンター」を設置し、県内中小企業等における外国人材の確保を支援する事業を展開しています。 さらに、この支援メニューには、日本人社員向けの「異文化理解」研修が含まれている点が特徴的です。 今回の支援事業の目玉の一つとも言えるのが、日本人社員向けの「異文化理解」研修です。
背景:進む外国人材頼みの日本経済
日本の経済成長を支える労働力人口は、団塊の世代の高齢化や少子化の影響で年々減少の一途をたどっています。特に、製造業や介護、建設業といった分野では、人手不足が深刻化しており、外国人材の受け入れなしには事業継続が困難な状況に陥っている企業も少なくありません。こうした背景を受け、政府は特定技能制度などを拡充し、外国人材の受け入れ拡大に舵を切りました。地方自治体も、地域経済の活性化や産業の維持のため、独自に外国人材の誘致や支援に乗り出す動きが加速しています。しかし、その一方で、国内産業の担い手となる日本人材の育成や、国内労働者の待遇改善といった根本的な対策が十分に進んでいるのかについては、疑問も残ります。
愛知県の支援策:巨額予算とパソナへの委託
愛知県は、こうした社会情勢を踏まえ、「あいち外国人材受入サポートセンター」を設置し、県内中小企業等における外国人材の確保を支援する事業を展開しています。この事業では、専門家が企業に対し、採用準備から受け入れ、育成、そして定着に至るまで、伴走型で支援を行います。具体的には、行政書士やコンサルタントなどの専門家が、1企業につき最大5回まで派遣され、きめ細やかなサポートを提供するとされています。
さらに、この支援メニューには、日本人社員向けの「異文化理解」研修が含まれている点が特徴的です。この研修では、『社内の異文化環境について理解を深め、円滑なコミュニケーションの実現を目指し、受入れ体制の強化や定着率アップにつなげる』ことを目的としています。また、『外国人材を活用した事業拡大の方法』や『外国人材採用に特化した求人ノウハウ』といった、より実践的な内容も提供されるようです。
このサポートセンターの運営業務は、株式会社パソナに委託されています。パソナは、人材派遣や紹介事業などを手掛ける大手企業であり、外国人材関連の事業にも実績があるとされています。
愛知県が令和7年度予算案で計上している「多文化共生社会の形成による豊かで活力ある地域づくり」という事業には、約5.1億円という多額の予算が充てられる予定です。このうち、外国人材の受け入れ支援にどの程度が配分されるのかは定かではありませんが、事業規模の大きさはうかがい知れます。なお、この専門家による支援を無料で受けられるのは、外国人材の雇用を希望または既に雇用している、愛知県内に事業所を有する中小企業などです。募集される企業数は10社程度とのことで、比較的限られた企業が対象となるようです。
「異文化理解」研修の実効性は?
今回の支援事業の目玉の一つとも言えるのが、日本人社員向けの「異文化理解」研修です。外国人材が企業に定着するためには、言語の壁だけでなく、文化や習慣、価値観の違いを乗り越え、円滑な人間関係を築くことが不可欠であるという認識に基づいているのでしょう。しかし、この「異文化理解」という言葉で、あたかも問題が魔法のように解決するかのような印象を受けるのは、少々早計ではないでしょうか。
そもそも、異文化理解とは一朝一夕に達成できるものではありません。研修を受けただけで、長年培われてきた価値観や習慣が劇的に変化するとは考えにくいものです。むしろ、研修はあくまで一助に過ぎず、日々の業務やコミュニケーションの中で、お互いを尊重し、理解しようと努める姿勢こそが重要となります。今回の事業で提供される研修が、具体的にどのような内容で、どれほどの効果が見込めるのか。そして、その効果をどのように測定し、事業の成果として評価するのか、そのKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)が不明確なままでは、税金が単なる「バラマキ」に終わってしまう危険性も否定できません。
外国人材が定着しない、あるいは早期に離職してしまう原因は、単なる異文化間の摩擦だけではないはずです。低賃金、劣悪な労働条件、ハラスメント、キャリアパスの不明瞭さなど、多くの要因が複合的に絡み合っていると考えられます。こうした根本的な課題へのアプローチが伴わないまま、「異文化理解」という言葉に安易に頼る支援は、対症療法に過ぎないのではないでしょうか。
税金の使われ方への疑問
愛知県が「多文化共生社会の形成」という名目で、令和7年度予算案に約5.1億円を計上していること自体は、少子高齢化社会における政策課題への対応としては理解できる側面もあります。しかし、その具体的な事業内容、特に今回取り上げている外国人材受け入れ支援事業について、その費用対効果は厳しく問われるべきでしょう。
募集企業数が10社程度と限られているにも関わらず、運営委託費を含め、多額の税金が投入されることになります。委託先のパソナへの報酬は適正なのか、また、その事業を通じてどれだけの企業が、どれだけの外国人材を、どれだけの期間、安定的に雇用できるようになるのか。具体的な成果目標が明確に示されないまま、多額の予算が執行されることに対しては、納税者として強い疑問を感じざるを得ません。
「異文化理解」研修や専門家による伴走支援は、聞こえは良いかもしれません。しかし、それが本当に企業の競争力強化や地域経済の活性化に繋がるのか、そして、その効果が税金に見合うものなのか。事業の透明性を高め、具体的な成果を厳格に評価していく姿勢が、行政には強く求められています。安易な外国人材頼みではなく、日本人材の活用・育成と両輪で進める、真に実効性のある政策を期待したいところです。
まとめ
- 愛知県は、中小企業向けの外国人材受け入れ支援事業をパソナに委託し、日本人社員向けの「異文化理解」研修などを実施する。
- この事業を含む「多文化共生社会の形成」関連に、令和7年度予算案で約5.1億円が計上されている。
- 外国人材の定着には、異文化理解だけでなく、労働条件など根本的な課題解決が重要であり、研修のみで効果が得られるかは疑問が残る。
- 限られた企業を対象に多額の税金が投入される本事業について、その実効性や費用対効果、KPI/KGIの不明確さが指摘されている。