2026-08-06 コメント投稿する ▼
介護報酬改定の行方 登録施設介護支援の報酬、同一建物減算に焦点
一方で、一部のサービスで適用されている「同一建物減算」については、その必要性やあり方を巡り、委員の間で意見が分かれる状況となっています。 多くの委員からは、登録施設介護支援が提供するケアマネジメント機能は、原則として事業所外の利用者に対して行われる「居宅介護支援」と実質的に変わらないという指摘がありました。
登録施設介護支援とは?
介護報酬は、介護サービスの質を担保し、提供体制を維持・発展させるための根幹をなすものです。通常3年ごとに行われる改定では、社会保障審議会介護給付費分科会を中心に、専門家や関係者の意見を集約し、具体的な改定内容が決定されます。今回、特に議論の俎上に載せられたのが「登録施設介護支援」の報酬設定でした。このサービスは、主に高齢者福祉施設(特定施設入居者生活介護が提供される施設など)や、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに入居・入居予定の方を対象に、施設外の居宅介護支援事業所とは別に、施設等と連携してケアプランを作成・提供するものです。これは、施設サービスと一体的に、あるいは密接に関連して介護サービスが提供される場面において、利用者の意向を踏まえた継続的かつ質の高い支援を確保することを目的としています。しかし、その報酬体系が、一般的な居宅介護支援と比べてどのように位置づけられるべきか、という点が今回の議論の核心となっています。
登録施設介護支援の報酬、居宅介護支援との整合性が重要視される
多くの委員からは、登録施設介護支援が提供するケアマネジメント機能は、原則として事業所外の利用者に対して行われる「居宅介護支援」と実質的に変わらないという指摘がありました。そのため、報酬体系においても、居宅介護支援の報酬水準に合わせた設定が望ましいとの意見が多数を占めたのです。サービス内容の類似性を考慮し、報酬水準に整合性を持たせることで、介護支援サービス全体の公平性が保たれるという考えが示されました。これにより、事業者間の過度な報酬格差によるサービス提供への影響や、制度の複雑化を防ぐ狙いがあるものと考えられます。
同一建物減算、適用見直しに賛否両論
一方、審議会で活発な意見交換が見られたものの、結論には至らなかったのが「同一建物減算」に関する論点です。この制度は、介護支援専門員(ケアマネジャー)が、同一建物内や近接する複数の住居に居住する利用者に対してサービスを提供する場合、一定の要件を満たすと報酬が減算されるというものです。主な目的は、移動にかかる時間や労力が軽減される事業者の効率化を評価し、その分を報酬から差し引くことで、より効率的なサービス提供を促すことにあります。
しかし、この同一建物減算については、その是非やあり方を巡って委員の間で意見が大きく割れました。減算を維持・強化すべきという立場からは、事業者の効率性をさらに評価すべきであり、適正な報酬設定のためには不可欠であるという意見が出されました。一方で、減算の見直しや廃止を求める声も根強くありました。これらの意見からは、同一建物減算がサービス利用者の状態やニーズに応じた丁寧なケアプラン作成を妨げるのではないか、また、小規模な事業所や、地域に根差した事業所にとっては経営を圧迫する要因となりかねない、といった懸念が示唆されました。特に、高齢者向け集合住宅など、特定の建物に利用者が集まりやすい形態が増加する中で、この減算措置がサービス提供の質や利用者の選択肢に与える影響については、慎重な議論が求められています。
報酬改定がもたらす影響と今後の展望
今回の介護給付費分科会での議論は、2025年度の介護報酬改定に大きな影響を与えるものと予想されます。登録施設介護支援の報酬が居宅介護支援の水準に近づけば、ケアマネジメント業務の標準化が進み、より質の高いサービス提供体制の構築につながる可能性があります。また、事業者は、自社のサービス提供体制を再点検し、報酬体系の変化に対応していく必要が出てくるでしょう。
さらに、同一建物減算に関する議論の行方も、介護支援事業所の経営に直接関わる重要な要素です。減算措置が見直される場合、特に集合住宅などで多くの利用者を抱える事業所の収益構造に変化が生じ、それが人員配置やサービス提供体制に影響を与える可能性も否定できません。逆に、減算が維持・強化されれば、効率性を重視した事業運営がさらに求められることになります。
厚生労働省は、今後、専門委員会でのさらなる検討や、国民からの意見を募るパブリックコメントなどを経て、最終的な改定案を固めていきます。改定率は例年、年度末にかけて決定される見通しです。今回の報酬改定は、全国で約250万人が利用するといわれる介護サービス全体の質、利用者への影響、そして制度の持続可能性に深く関わるため、引き続きその動向が社会全体から注視されています。上野賢一郎厚生労働大臣をはじめとする関係省庁は、多様な意見を踏まえ、国民が安心して質の高い介護サービスを受けられるよう、慎重な判断が求められています。