2026-06-26 コメント投稿する ▼
生活保護申請を阻む「車の壁」? 上野厚労相、辰巳議員の質疑に統計例え反論
「自動車の保有が、生活保護の申請をためらわせているのではないか」。 特に地方部では、生活必需品とも言える自動車を手放さなければならないという制度上の原則が、支援を必要とする人々を遠ざけているのではないかという指摘です。 辰巳議員はこの相関関係を根拠に、「車を手放さなければならないことを恐れ、生活保護の申請を諦めている人がいるのではないか」と問題提起しました。
生活保護と自動車保有の原則
議論の発端は、自動車保有率が高い都道府県ほど、母子家庭における生活保護の実施率が低いという統計データでした。辰巳議員はこの相関関係を根拠に、「車を手放さなければならないことを恐れ、生活保護の申請を諦めている人がいるのではないか」と問題提起しました。生活保護制度においては、自動車は原則として資産とみなされ、生活費の維持が困難になることや、換金して生活費に充てるべきものとして、保有が認められないのが基本です。
もちろん、例外規定も存在します。例えば、障害を持つ受給者が通勤や通院に車を使用する場合や、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している場合など、その必要性が認められれば保有が許可されるケースもあります。しかし、辰巳議員は、こうした例外規定が十分に機能しているのか、現場の実態とは乖離していないのかという点を疑問視しました。
「アイスと水難事故」に例えた大臣の反論
上野厚生労働大臣は、辰巳議員の指摘を「非常に貴重」と評価しつつも、統計データの解釈には慎重さを求めました。大臣は、統計学でよく引き合いに出される「アイスクリームの売上高と水難事故の件数」の例を挙げ、「相関係数が高いからといって、そこに因果関係があるとは言えない」と説明しました。夏場にアイスクリームが売れる時期と、水難事故が増える時期が重なるため、両者のデータには高い相関が見られますが、アイスクリームを食べたことが直接水難事故の原因になるわけではないという趣旨です。
つまり、自動車保有率と生活保護実施率の間に見られる相関についても、単に「車を持っているから生活保護を受けられない」という直接的な因果関係があるとは断定できないというのが政府側の見解と言えるでしょう。大臣は、他にも生活保護の申請をためらう要因が様々存在することを念頭に置いていると推察されます。
現場の声が示す申請の壁
しかし、辰巳議員は、現場の実態が統計データと符合していると反論しました。あるNPO法人が実施したアンケート調査によれば、福祉事務所を訪れたものの、生活保護の申請を断念した人々のうち、最も多かった理由が「生活保護を利用すると車の保有ができなくなると説明された」というものでした。この結果は、自動車保有の原則が、実際に生活保護制度へのアクセスを妨げる「壁」となっている可能性を示唆しています。
地方部において、自動車は単なる贅沢品ではありません。公共交通機関が乏しい地域では、通勤や通学はもちろん、食料品の買い出し、通院、子どもの送迎など、日常生活を送る上で不可欠な移動手段です。もし、生活保護を受けるためにこうした生活インフラを手放さなければならないとしたら、それは受給者の社会的な孤立を深め、自立への道をかえって険しくするのではないでしょうか。辰巳議員は、こうした現実を踏まえ、「原則として車の保有を認める方向で制度を見直してほしい」と政府に強く求めました。
制度のあり方と今後の課題
生活保護制度は、国民の最後のセーフティネットとして、生活困窮者を支援する重要な役割を担っています。その運用にあたっては、制度の適正な実施と、利用者の尊厳を守ることのバランスが不可欠です。今回の論戦は、特に地方部における生活保護制度のあり方について、改めて見直しを迫るものと言えるでしょう。
統計データが示す客観的な事実と、現場で生活する人々の声。その両方を丁寧に検証し、実態に即した制度運用を目指していくことが求められます。単なる「相関」を理由に、真に支援を必要とする人々が制度から排除されてしまうようなことがあってはなりません。一方で、制度の厳格な運用は、財政負担の抑制や不正受給の防止といった観点からも重要であり、安易な例外の拡大が制度全体の持続可能性を損なうことにも、政府は十分な配慮が必要となるでしょう。今後、この問題がどのように議論され、具体的な改善策へと繋がっていくのか、注視していく必要があります。
まとめ
- 辰巳議員が生活保護申請における自動車保有の影響を指摘。
- 上野厚労相は統計の相関関係と因果関係の違いを説明。
- 現場調査では車の保有制限が申請を妨げる要因とされる。