2025-06-10 コメント投稿する ▼
盛り土崩落防止へ「規制区域」指定が進展 111自治体が対応、2028年までに100%目指す
86%の自治体が規制区域を指定 熱海土石流を教訓に対応加速
盛り土崩落による災害を防ぐため、造成に許可が必要な「規制区域」を指定した自治体が、2024年6月1日時点で111に達した。これは指定権限を持つ129自治体のうち86%に相当し、国土交通省は6月10日にその進捗を公表した。2021年に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害をきっかけに、2023年5月に施行された「盛り土規制法」に基づく取り組みが全国で本格化している。
国交省は、2028年5月までに全国すべての対象自治体で規制区域を指定し、100%の達成を目指す方針。すでに38都道府県と73市が対象地域の指定を終えており、残る18自治体でも検討が進んでいる。
盛り土規制法とは 許可制導入で安全対策を強化
「盛り土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)」は、熱海の土石流を契機に制定された新たな法律だ。規制区域に指定された地域では、一定規模以上の盛り土や造成工事、土の仮置きなどに対して、事前に自治体の許可が必要となる。あわせて、排水設備や擁壁(ようへき)の設置など、土砂の流出や崩落を防ぐための安全対策を講じる義務が事業者に課される。
この法律のポイントは「未然防止」にある。従来は被害が起きてから行政が対応する後追い型の仕組みだったが、新法ではリスクのある土地を事前に把握し、工事計画の段階から厳格に管理することが求められている。
「熱海の土石流の映像は今でも忘れられない。あんな事故を繰り返してはならない」
「盛り土崩落のニュース、昔は他人事だったけど、こうやって制度が整っていくのは安心」
「ルールだけ作って終わりじゃなくて、ちゃんと現地確認もしてほしい」
「宅地開発を急ぐあまり、安全が後回しにならないように」
「市民にもわかりやすく周知して。知らないうちに危険区域になってたら困る」
国土交通省は、今後こうした制度の周知にも力を入れ、住民にとって分かりやすく安全な環境づくりを進めるとした。
自治体は監視と確認の“現場の目”に 人員や知見の確保が課題
盛り土規制法の実効性を支える鍵は、現場での行政対応にある。規制区域内では、自治体が工事許可の審査を担うだけでなく、施工中の現場確認や工事完了時の検査、さらには許可を得ずに行われた違法な盛り土の監視まで広範な責任を負うことになる。
このため、自治体側には専門的な土木・地質の知見や、現場確認を担う職員体制の確保が求められており、特に地方都市や人手不足に悩む中小自治体にとっては大きな課題だ。
国交省は今後、地方への技術支援やガイドラインの策定を強化し、地域間格差を縮めていく方針を示している。また、AIやドローンを活用した遠隔監視なども将来的な導入が検討されており、災害リスクの高まる今後の気候環境に向けた備えが進められている。
宅地開発の安全と利便の両立へ 「開発すればいい時代」は終わり
かつて、宅地開発や造成は「経済優先」で進められてきた側面がある。しかし、地盤の不安定さや不適切な盛り土によって、豪雨のたびに土砂災害が各地で発生し、住民の命と財産が危険にさらされてきた。特に近年は極端気象の頻発により、わずかな緩斜面や擁壁崩壊による事故も増加傾向にある。
新制度はこうした構造的な問題に本質的にメスを入れる試みだ。地域に応じた土地利用と災害対策の融合、そして「経済と安全のバランス」をどう取っていくかが、これからの都市づくりに問われている。