政治資金の不記載問題や過去の差別的発言でたびたび世間を騒がせてきた前衆院議員・杉田水脈氏が、今夏の参院選で自民党から比例代表として出馬することが決まった。裏金問題で議員辞職した後の復帰とあって、党内外からは賛否の声が上がっているが、彼女を熱心に支持する保守層の存在が背景にある。
杉田氏は3月、ABEMAの番組に出演し、自身が考える「保守」の価値観について語った。その発言は、支持層に向けたメッセージであると同時に、いまの保守派が抱える“内なる分断”への警鐘でもあった。
「皇室・神社・日本語」が日本の柱
「皇室と神社、そして日本語がなくなれば、日本は日本でなくなる」。杉田氏はそう語り、保守の根幹に伝統と文化の継承があると強調した。特に、万世一系の皇室制度を守ること、日本語を大切にすることを「譲れない3本柱」として掲げている。
現行憲法についても、「GHQが英語で作ったものを日本語に訳しただけで、『てにをは』すら正せていない」と批判。日本の主権を回復するためにも、憲法改正は必要だと訴える。
保守派の中の“内ゲバ”に危機感
一方で、保守派のなかでさえ意見の食い違いから激しい対立が起きている現状について、杉田氏は「大枠では一致しているのに、すぐに仲間割れしてしまうのがもったいない」と語った。
「ネット上でもちょっとでも片方を擁護すれば、もう一方の支持者から総攻撃されるような状態。これでは健全な議論ができない」と、保守陣営内での“分断”に懸念を示している。
差別発言、政務官辞任、人権侵犯認定…過去は拭えず
杉田氏といえば、LGBTに関する「生産性」発言や、アイヌ民族・在日コリアンに対するブログ投稿が批判を浴び、政務官を辞任。昨年には法務局から「人権侵犯」の認定も受けている。こうした過去に対し、野党からは「なぜこの人物を公認するのか」といった疑問の声が相次ぐ。
それでも、ネット上では彼女を“真の保守”と評価する層が存在する。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「杉田さんは差別発言を喜ぶような層の票を狙っているだけ」と痛烈に批判する一方で、脳科学者の茂木健一郎氏は「海外を見れば杉田氏のような主張をする政治家は珍しくない」と冷静な視点を加える。
“変えない”ことだけが保守ではない
杉田氏自身も「全部を守り続けるのが保守ではない」と述べ、「伝統を守りながら、時代に合わせて変えるべき部分は変えていく」ことの重要性に言及。急増する移民問題にも触れ、「何が何でも排斥するのではなく、しっかりと制度を整える必要がある」と現実的な対応を求めた。
党内にも複雑な空気
自民党内では、公認に対する意見は一枚岩ではない。ある中堅議員は「支持者向けにわかりやすい発信をしているが、それが党全体にどう影響するかは慎重に見ないと」と話す。杉田氏のような“直球勝負”の保守政治家を公認することで、党の姿勢や人権感覚そのものが問われている。
今後の選挙戦では、杉田氏が保守層の支持をどれだけ引き寄せられるか、また過去の言動をどう乗り越えて有権者の信頼を得るかが、大きな焦点となりそうだ。