19日、参議院予算委員会において、原子力施設の安全と予算不足に関する議論が紛糾した。この議論は、イギリスの『フィナンシャルタイムズ』が報じたロシア軍による日本および韓国の160箇所を攻撃対象としてリスト化したという情報を受け、立憲民主党の小沼巧議員が質問を行ったことから始まった。
ロシア軍による攻撃リストへの懸念
小沼議員は、ロシア軍が「日韓の攻撃対象リスト」に含まれる施設として、日本の原子力関連施設を挙げ、その安全対策について問うた。特に、茨城県に位置する原子力関連施設が弾道ミサイルではなく巡航ミサイルによる攻撃対象となっているとの報道を受けて、どのように安全を守るのかが重要な課題として浮かび上がった。
これに対し、石破総理は「原発が弾道ミサイルだけでなく、さまざまな手段で攻撃を受けることが想定される」と述べ、政府としては防衛省、警察、経済産業省、地元自治体などと連携し、事前に対応策を講じていることを強調した。また、「予想外の事態を想定し、万全の準備をしていかなければならない」と述べ、原発安全確保の重要性を訴えた。
原子力研究機関の予算削減問題
議論はさらに、日本原子力研究開発機構(JAEA)の予算と人員の削減問題に移った。小沼議員は、原子力研究開発機構の予算が長期間にわたり削減され、特に「仕分け」の影響で人員や予算が減少していることを懸念した。特に、原子力研究機関の安全対策を担当する人材が不足していることが、将来的なリスクを引き起こす可能性があると指摘した。
これに対し、文部科学省の堀内義規研究開発局長は、「JAEAの予算は基本的に前年同規模で推移しており、特に高速実験炉『常陽』の再稼働に向けて予算は増えている」と説明した。また、人員については、独立行政法人化により効率化が進んだが、近年は横ばいとなっていると報告した。
予算削減の影響と政府の対応
小沼議員は、仕分け政策が原子力関連施設の予算削減を招いたことを強調し、その影響が現在においても続いていることを指摘した。特に、予算削減が安全対策の担保を危うくし、優秀な人材を確保するための環境が整っていない点を問題視した。
また、「補正予算を使う形が常態化している」と述べ、予見可能性がないために、研究開発の予算も不安定であり、原子力分野での安全確保が難しくなっていると批判した。
石破総理は、この問題に対し「財政法に基づき、予見できなかった事態に対しては補正予算で対応するしかないが、当初予算で十分に予算を組むべきだ」と応じ、予算編成における根本的な問題を指摘した。
今後の課題と対応
今回の議論を受けて、今後は原子力施設や関連機関の予算や人員の確保が重要な課題として浮き彫りとなった。また、予算の安定的な確保と、非常事態に備えるための継続的な研究開発の推進が求められる。
小沼議員は、「政府が安全・安心を確保するために、原子力機関に対する十分な予算を確保し、優秀な人材を集める環境を整えるべきだ」と再度強調した。