2025-06-06 コメント: 1件 ▼
TSMC熊本第2工場、着工延期めぐり政府と認識ずれ 経産相「渋滞が理由との報告なし」
TSMC熊本第2工場の着工延期、経産省は「交通渋滞が理由との報告なし」 政府と地元に食い違い
台湾の半導体大手・TSMC(台湾積体電路製造)による熊本県菊陽町での第2工場建設について、着工時期が「2025年内」へと変更されたことを巡り、理由説明をめぐって政府・地元自治体・TSMCの間で認識の食い違いが生じている。
6日に記者会見した武藤容治経済産業相は、TSMCが理由に挙げた「交通状況の悪化」について「そのような報告は受けておらず、日本政府の了解を得たという事実もない」と否定した。一方で、TSMCのCEOである魏哲家氏は、6月3日に現地の交通渋滞を延期の主因とする見解を表明しており、説明の整合性が問われている。
TSMCが語る「渋滞」理由に地元も困惑
TSMCの魏会長は3日、熊本県内で行われた式典の場で、第2工場の着工を「2025年3月まで」から「2025年内」に後ろ倒しにすると発表した。理由として、熊本県菊陽町周辺の交通インフラが逼迫している点を挙げ、「従業員の通勤や建設資材の搬入に支障がある」との見解を示した。
また、魏氏は発言の中で「日本政府や地元自治体の理解を得ている」と明言した。しかし、5日に会見を開いた熊本県の木村敬知事は、「渋滞が延期の理由であるという説明は、TSMC側からは受けていない」と明確に否定した。これにより、地元とTSMC、さらには政府間で説明内容の齟齬が浮き彫りになった。
政府は「着工は遅れても生産開始時期は変わらず」
武藤経産相は、「TSMCからは、生産開始の時期や生産量には変更はないと聞いている」と強調した。すなわち、建設開始は若干遅れるものの、2027年前後に予定されていた量産開始スケジュールは維持されるという。
経済産業省としては、TSMCの日本進出を「国家プロジェクト」と位置づけ、最大4760億円の補助金を投入している。そのため、政府としても信頼関係の維持と透明性の確保が強く求められており、「交通状況が理由」といった後付けのような説明が出てきたことには神経を尖らせている。
武藤氏は「円滑な投資と建設が進むように、今後もTSMCや地元自治体と緊密に連携していく」と述べるにとどめた。
地域インフラの課題が表面化
TSMCの熊本進出により、菊陽町および周辺地域では住宅開発や交通量が急増している。第1工場の稼働によりすでに2000人以上の雇用が発生し、今後も増加が見込まれているが、道路整備や公共交通の拡充は追いついていないという声が住民からも上がっている。
地元では「朝夕の通勤渋滞がひどくなった」「幹線道路が慢性的に詰まっている」といった実感が広がっており、TSMCが着工延期の理由に“渋滞”を挙げた背景として一定の現実的根拠があるのも事実だ。
一方で、TSMC側が正式に地元や政府と調整した上で延期を決めたのかという点では、報告と認識のズレが残るままだ。
ネットの反応:「説明が二転三転」「補助金の透明性は?」
「TSMCは巨大プロジェクトなのに報連相が曖昧すぎる」
「補助金を受けてる以上、日本政府にきちんと報告すべきでは」
「渋滞が理由なら、なぜ地元はその説明を受けていないのか?」
「そもそもインフラの準備が追いつかないのに、国が急がせたのでは?」
「産業誘致もいいけど、住民の生活環境を後回しにしてはいけない」
TSMCが今後、改めて地元や政府に対して丁寧な説明を行うかどうかが注目されている。
今後の焦点:透明性と地域調和
熊本でのTSMC事業は、半導体供給網の強靱化を目指す国家戦略の中核だが、今回の「着工延期」問題で見えたのは、超大型投資における透明性の脆弱さと、地元インフラとの整合性の難しさだった。
政府としては引き続きTSMCと協議を進める方針だが、今後は「補助金を受ける企業としての説明責任」や、「地域社会との調和」が強く求められることになる。