2025-06-11 コメント投稿する ▼
文科相が給特法改正でメッセージ発表「教員に働きがいを」 働き方改革を本格推進へ
阿部文科相が給特法改正でメッセージ発表 「働きがいを感じられる教職環境を」
文部科学省は6月11日、公立学校教員の給与制度に関する「教員給与特別措置法(給特法)」などの改正法が成立したことを受け、阿部俊子文部科学大臣が国民に向けて異例のメッセージを公表した。メッセージの中で阿部大臣は、教員の働き方改革を本格化させ、「働きやすく、働きがいのある環境」の実現に取り組む姿勢を強く打ち出した。
法改正の背景に「教育の担い手喪失」への危機感
阿部氏は、近年の教員の長時間労働や業務過多の現状に触れたうえで、「このままでは教職の担い手がいなくなり、教育の質そのものが損なわれる」と強調。従来から続く教員の過重労働問題に対し、政府としても深い危機感を持っていることを示した。
今回の給特法改正は、約50年ぶりに教職調整額(固定残業手当相当)を引き上げる一方で、残業代の直接支給は見送られ、制度の根幹には手が入っていない。こうした内容に対し、現場や一部野党からは「実効性に乏しい」との批判も出ているが、阿部大臣は「教師の社会的評価を高め、教育への敬意を可視化する取り組みだ」と説明し、制度の意義を強調した。
教育委員会・学校が「最も重要な主体」と明言
文科省の役割はあくまで支援とし、改革の実行主体は「教育委員会と学校である」と明記。これにより、国の指針に基づき、地域レベルでの裁量的な対応が重視されることになる。
その上で、働き方改革を「見える化」する方針も打ち出し、今後は教員の業務時間の記録や業務内容の棚卸しを通じた改善策が検討されるという。文科省は、具体的なガイドラインや数値目標を盛り込んだ「指針」を速やかに策定し、全国の自治体に展開していく構えだ。
「地域ぐるみ」の支援も呼びかけ
阿部氏は、教員の労働環境改善のためには「学校だけでは限界がある」として、地方自治体の首長や福祉部局、保護者、地域住民に対しても「地域総がかりで支えてほしい」と協力を求めた。特に保護者に対しては、教師が本来業務である「子どもに向き合う教育活動」に専念できるよう、学校活動へのさらなる理解と支援を呼びかけた。
今後の課題は「教職の魅力回復」
メッセージの締めくくりでは、「教師の皆様が“働きやすさ”と“働きがい”の両方を感じられるよう、文科省として責任を持って取り組む」と明言。教職の魅力が低下する中、新たな担い手を確保するためには待遇面の改善だけでなく、労働環境そのものの抜本的な見直しが不可欠とする姿勢を鮮明にした。
現場の声との温度差も
ただし、現場の教員からは「調整額の引き上げだけでは不十分」「根本は“残業代ゼロ法”の温存だ」といった懐疑的な声も出ており、今後の実行段階でどこまで実効性を確保できるかが問われている。