北海道新幹線の札幌延伸が当初予定の2030年度末から、2038年度末にずれ込む見通しとなったことを受けて、北海道の鈴木直道知事は4月4日、国土交通省を訪れ、中野洋昌国交大臣に対して開業時期の早期明示を求めた。
延伸区間となる新函館北斗―札幌間は、北海道全体の経済や観光振興にも直結する重要なインフラ。鈴木知事は「開業を前提にまちづくりを進めてきた沿線自治体や住民への影響は大きい」と語り、国として影響を最小限に抑えるための対策、いわば「政策パッケージ」を早急にまとめてほしいと要望した。
中野大臣は「要望の内容を真摯に受け止め、検討していく」と応じたという。
開業の8年遅れ 理由は難航するトンネル工事
北海道新幹線の札幌延伸は、もともと2030年度末の開業を目指していたが、難航しているのがトンネル工事だ。特に札幌駅周辺では地盤の関係から掘削作業が難しく、また環境面への配慮などもあり、当初の想定以上に時間を要している。
この遅れが判明したのは、2024年に鉄道・運輸機構が工事工程の見直しを行った際。結果的に、開業が約8年先送りされる形となり、地元からは「寝耳に水」の声もあがった。
沿線自治体に広がる戸惑いと不安
札幌市や小樽市など、沿線の自治体では駅前の再開発や観光施設の整備が進められており、「2030年に開業する前提」で計画されていた事業も少なくない。札幌市の秋元克広市長は「まちづくりは待ってくれない」と語り、早期の開業時期明示が求められる背景には、地元の切実な事情がある。
また、観光業界からは「延伸によって本州からの観光客の流れが大きく変わると期待していたが、このままでは投資のタイミングも見直さなければならない」との声も出ている。
在来線との関係にも影響
もう一つ大きな懸念は、並行在来線の問題だ。北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、その分JR北海道が運行を続ける理由が薄れ、函館本線の一部(函館―小樽間など)が第三セクターに移行される可能性が高い。しかし、開業が遅れれば、それに伴って並行在来線の維持や地元交通網の整理にも影響が出てくる。
特に高齢化が進む地域では、「在来線がなくなると病院や学校にも行けない」といった生活上の不安も聞こえており、行政側の丁寧な対応が求められている。
今後の焦点は「国の対応」
北海道新幹線の札幌延伸は、道内の将来像を大きく左右する国家的プロジェクトだ。その開業が大きく遅れる中、国がどのように地元自治体の声に応え、支援策を打ち出すのかが、今後の焦点となる。
鈴木知事は「国と道、沿線自治体が一体となって乗り越えていくべき課題だ」とも話しており、今後の協議次第では、遅延による影響を最小限に食い止める道筋も見えてくるかもしれない。
- 北海道新幹線の札幌延伸は2030年度末から2038年度末へと開業時期が大幅に遅延
- 北海道の鈴木知事が国交相に「早期の開業時期明示」と「政策パッケージの策定」を要望
- 遅延の原因は主にトンネル工事の難航
- 沿線自治体では、まちづくり・観光投資などの計画に支障が生じる懸念が広がる
- 並行在来線の維持にも影響が出る可能性