2026-03-06 コメント投稿する ▼
資源豊富なカナダ、日本にとって経済安全保障の重要パートナーに
カナダのトルドー首相は、訪米だけでなく訪中も行うなど、国益のために多様な国々との関係を模索しています。 日本とカナダの外交戦略が完全に一致しているわけではありませんが、日本政府は、アメリカとの同盟関係を基軸としつつも、カナダのように地政学的なリスクが少なく、資源も豊富な国との関係を深めることが、不確実性の高まる国際社会において、経済安全保障を盤石にするための鍵になると考えています。
経済安全保障の重要性が高まる世界
世界経済を取り巻く環境が厳しさを増す中、日本は「経済安全保障」の強化を急いでいます。経済安全保障とは、経済活動を通じて国の安全保障を確保することです。特に、特定の国への依存度が高い物資や技術の供給網(サプライチェーン)が、政治的な理由で途絶えるリスクに備えることが重要になっています。最近では、中国による経済的な圧力を背景とした輸出規制の動きや、中東情勢の緊迫化によるエネルギー供給への不安が高まっており、日本だけでなく世界各国が対応を迫られています。
日加首脳会談、経済安保での連携を確認
このような状況下、高市早苗経済安全保障担当大臣は、3月6日に首相官邸でカナダのトルドー首相と会談しました。会談では、天然資源が豊富なカナダとの連携を深め、重要な物資の安定供給体制を築くことの重要性が確認されました。高市大臣は会談後の共同記者発表で、「カナダは、私が推進している経済安全保障分野における連携で、非常に重要なパートナーだ」と述べ、両国の協力関係に期待を寄せました。
サプライチェーン強靭化と資源確保を目指す連携
今回の連携強化の背景には、国際社会における中国の経済的な影響力の増大があります。中国は、軍事技術にも転用可能な製品の輸出規制を強化する動きを見せており、日本もその影響を注視しています。また、イランとイスラエルとの軍事的な緊張の高まりは、中東地域からの原油供給ルート、特にホルムズ海峡の安全に懸念を生じさせています。日本は原油の多くをこの海峡を経由して輸入しているため、エネルギー供給の不安定化は国家経済に大きな影響を与えかねません。こうしたリスクに対し、日本はカナダのような価値観を共有する「同志国」との結びつきを強めることで、サプライチェーンの多角化と強靭化を図ろうとしています。
地政学リスク回避にカナダが果たす役割
カナダは、ニッケルをはじめとする重要鉱物資源や、原油、天然ガスといったエネルギー資源に恵まれています。さらに、日本とカナダは太平洋航路で結ばれており、中国の影響力が強いとされる東シナ海や南シナ海を避けて物資を輸送できるという利点があります。これは、ホルムズ海峡のような、特定の海峡の封鎖リスクに依存しない、安定した輸送ルートを確保できる可能性を示唆しています。外務省幹部が指摘するように、カナダとの関係は、地政学的なリスクを回避する上で「関所」に例えられる特定地点への依存度を下げられる点で、経済安全保障上、極めて重要と言えます。
多層的な外交ネットワーク構築への期待
カナダは伝統的にアメリカとの関係を重視してきましたが、近年、アメリカの政権交代などもあり、外交関係に変化も見られます。カナダのトルドー首相は、訪米だけでなく訪中も行うなど、国益のために多様な国々との関係を模索しています。また、世界経済フォーラム(ダボス会議)では、アメリカ一辺倒ではない「ミドルパワー(中堅国)」の連携を呼びかけるなど、独自の外交姿勢を示しています。日本とカナダの外交戦略が完全に一致しているわけではありませんが、日本政府は、アメリカとの同盟関係を基軸としつつも、カナダのように地政学的なリスクが少なく、資源も豊富な国との関係を深めることが、不確実性の高まる国際社会において、経済安全保障を盤石にするための鍵になると考えています。今後、高市大臣は、トルドー首相をはじめ、アメリカ、フランス、インドネシアなどの首脳とも経済安全保障をテーマに会談を重ねる予定であり、日本は多層的な外交ネットワークの構築を加速させていく方針です。