2025-11-29 コメント投稿する ▼
小池都知事、介護報酬・女性活躍・ゴミ問題に言及。都政の重要課題への処方箋とは
人材不足に加え、近年の物価や賃金の上昇が介護報酬に十分に反映されていないことが、事業者の経営を圧迫しています。 都の調査でも、都内事業者の約4割が赤字経営であり、特に従業員19人以下の小規模事業者ほどその傾向が強いことが分かっています。 小池知事は「実効性あるものにしていくためには、企業の主体的な取り組みが重要」と語りました。
東京都の小池百合子知事は2025年11月28日の定例記者会見で、都政が直面する複数の重要課題について見解を表明しました。深刻化する介護業界の人手不足と経営難に対する国への緊急提言、女性の活躍を後押しする新条例案、そしてオーバーツーリズムに伴うゴミ問題への対応策がその柱です。
介護崩壊の危機、都が国に緊急提言
小池知事は会見の冒頭、介護保険制度が構造的な課題を抱えているとして、国に対して緊急提言を行ったことを明らかにしました。介護現場は、社会全体の人手不足や他産業との人材獲得競争の激化により、危機的な状況にあります。
厚生労働省の推計では、2025年には約32万人の介護職員が不足すると予測されています。都内では状況はさらに深刻で、2024年の介護関連職種の有効求人倍率は8.16倍と、全産業平均の1.55倍を大きく上回っています。この人材不足は、都内の介護職員数が2022年度を境に減少傾向に転じていることからも裏付けられます。
人材不足に加え、近年の物価や賃金の上昇が介護報酬に十分に反映されていないことが、事業者の経営を圧迫しています。東京商工リサーチの調査によると、介護事業者の倒産は過去最多のペースで推移しており、2025年上半期には訪問介護事業者の倒産が45件に上りました。都の調査でも、都内事業者の約4割が赤字経営であり、特に従業員19人以下の小規模事業者ほどその傾向が強いことが分かっています。
こうした状況を踏まえ、都の提言は3つのポイントを掲げています。第一に「適切な基本報酬単価の設定」です。これは、物価や賃金の上昇を速やかに反映させる「物価スライド方式」の検討や、事業運営に必要な経費を適切に算定することなどを求めるものです。介護報酬は「単位」と「単価」で決まりますが、その根幹である基本報酬の見直しが不可欠だと訴えています。
第二に「効率的なサービス提供のあり方」として、煩雑な手続きの簡素化や、複数の事業者が連携してサービスを提供できるような柔軟な制度運用を提案しました。第三の柱は「小規模事業者の経営力強化」です。経営改善や事業者間の協働化を促すため、介護報酬による誘導など、事業者が明確なメリットを感じられる仕組み作りを求めています。
政府は2026年度に臨時の介護報酬改定を行い、月額1万円程度の賃上げを目指す方針ですが、都の提言はこうした対症療法にとどまらず、制度の持続可能性そのものを問う、より踏み込んだ内容となっています。
女性活躍へ新条例案、実効性に期待と課題
次に小池知事は、都が公表した「雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」案について言及しました。「日本の、東京の最大のポテンシャルは人口の半分を占める女性だ」と述べ、条例を原動力に、性別を問わず誰もが活躍できる社会を目指す考えを強調しました。
この条例案は、都内の全ての事業者に対し、性別に偏らない組織作りや男女間の賃金格差の解消、女性特有の健康課題への配慮などを責務として定めています。ただし、罰則規定はなく、あくまで事業者の主体的な取り組みを促す「努力義務」とされています。
条例制定の背景には、都内における女性の就業環境の課題があります。女性の就業者数は増加しているものの、その半数以上が非正規雇用であり、管理職に占める女性の割合も低い水準に留まっています。帝国データバンクの2025年の調査では、東京都の企業の女性管理職比率は平均11.9%でした。また、2024年のデータでは、男性の賃金を100とした場合、都内の女性の賃金は74.8と、依然として大きな格差が存在します。
小池知事は「実効性あるものにしていくためには、企業の主体的な取り組みが重要」と語りました。しかし、SNSなどでは様々な声が上がっています。
「条例はいいけど、結局努力義務だと変わらないのでは?」
「中小企業には支援がないと厳しい。大企業だけじゃ意味ない。」
「女性活躍って言うけど、男性の働き方も一緒に変えないと根本解決にならないよね。」
「こういう理念を掲げるのは大事。一歩ずつでも進んでほしい。」
「管理職を増やすだけじゃなくて、働きやすい環境そのものを作ってほしい。」
特に、経営資源が限られる中小企業からは、取り組みが負担になることへの懸念も示されています。東京商工会議所も、中小企業への配慮や支援の必要性を指摘しており、条例の実効性を高めるためには、都による具体的な支援策と、社会全体の意識改革が不可欠となりそうです。
観光地のゴミ問題、都知事が示す「啓発」のジレンマ
会見では、インバウンド回復に伴い深刻化する観光地のゴミ問題についても質問が及びました。日本政府観光局(JNTO)の調査で、訪日客が最も困ったこととして「ゴミ箱の少なさ」が挙げられるなど、オーバーツーリズムの負の側面として顕在化しています。
都内でも、特に観光地でのポイ捨てが問題となっており、都庁にもゴミ箱設置を求める声が寄せられています。しかし、小池知事はゴミ箱の増設に慎重な姿勢を示しました。「実は悩ましいところだ」と前置きし、「ゴミ箱を設置することによって、そこでゴミが山盛りになるケースも各地で見られる」と弊害を指摘しました。
その上で知事が示した方針は、啓発活動の強化です。「それよりも日本人の美徳として、ゴミは持ち帰るのだということを、海外から来られた方々に徹底していく。そのために啓発をするという方法があると思う」と述べ、文化的な理解を促すことで問題解決を図りたい考えです。
この「啓発」を軸とした対策は、旅行者が旅先に配慮し、敬意を払う行動を促す「ツーリストシップ」の考え方とも通じます。京都市などでは、多言語でのマナー啓発動画やポスター掲示といった取り組みが既に行われています。
一方で、この問題には多様な意見が存在します。弁護士の橋下徹氏は、行政によるゴミ箱設置は不要とし、シンガポールのようにポイ捨てに高額な罰金を科す「厳罰化」を主張しています。また、技術による解決策として、太陽光でゴミを自動圧縮する「スマートゴミ箱」も登場しています。京都の嵐山や奈良公園などで導入され、ゴミの散乱防止に効果を上げていますが、1台200万円以上という高額な設置コストが普及の壁となっています。
日本の街にゴミ箱が少ない背景には、1995年の地下鉄サリン事件以降のテロ対策という側面もあります。美観、コスト、利便性、安全性、そして文化の違い。観光地のゴミ問題は、これらの要素が複雑に絡み合うジレンマを抱えており、都知事が示した「啓発」というアプローチだけで解決できるのか、多角的な視点での議論が今後も求められます。