2025-08-20 コメント投稿する ▼
公約最低賃金引き上げに介護事業者7割が懸念 財源不足と年収の壁が現場を圧迫
最低賃金引き上げと介護現場の揺らぎ
介護人材政策研究会が公表した調査によると、最低賃金の大幅引き上げについて介護事業者の7割超が「必ずしも好ましいとは言えない」と回答した。理由の多くは、賃上げを支える原資が確保できないという現場の切実な声にある。調査対象となった介護事業者158人のうち、84.3%が「財源不足」を懸念し、57.4%が「人材競争力の低下」、49.6%が「年収の壁による人材確保困難」を挙げた。
最低賃金は、厚生労働省の審議会が答申した全国平均1118円で、過去最大の引き上げ幅となる。すべての都道府県で時給1000円を超える見通しだが、介護事業者にとっては追い風ではなく重い負担となってのしかかっている。
「賃金上げろと言うなら報酬改定を同時にやってほしい」
「介護事業所は赤字覚悟でやれと言われているようなもの」
「人件費が上がれば利用者負担に跳ね返るのでは」
「結局、介護離職が増えてサービス提供に支障が出る」
「現場を知らない政策判断は机上の空論にすぎない」
こうした声が広がり、ネット上でも政策の現実性を疑問視する意見が多い。
介護報酬引き上げの必要性
調査では、最低賃金引き上げに伴い必要な施策として「介護報酬の引き上げ」を97.4%の事業者が求めている。介護報酬は事業運営の根幹であり、報酬が上がらなければ人件費増加を吸収できない。だが報酬改定は3年ごとが基本であり、最低賃金の動きとタイムラグが生じる。今回のような大幅な引き上げには、異例の中間改定が不可欠との声が強い。
介護人材政策研究会はすでに厚労省に要望書を提出し、「介護報酬の中間年改定を含む緊急対応」を求めた。「十分な事業者支援策がなければサービス基盤は疲弊する」との警告は、制度崩壊を未然に防ぐ最後のサインといえる。
年収の壁がもたらす二重苦
介護職員の多くは非正規やパート労働者であり、「年収の壁」が就労抑制の要因になっている。特に扶養控除や社会保険料の負担回避のため、一定額を超える就労を控えるケースが多い。最低賃金が上がれば、短時間勤務であっても年収が壁を超えやすくなり、人材不足が深刻化する懸念がある。
今回の調査でも49.6%が「年収の壁による労働力不足」を不安視した。事業者からは「時給は上がるが働ける時間を減らす職員が増える」「結果的に人員確保が一層難しくなる」といった声が出ている。年収の壁の見直しは一部進んでいるが、現場では「抜本的な解決になっていない」との受け止めが根強い。
介護の未来を守るための政策転換
介護現場はすでに人材不足と経営難に直面しており、最低賃金引き上げはその課題を一層浮き彫りにした。賃上げそのものは働く人の生活を支える意義がある一方で、制度的な裏付けなしに進めれば現場を疲弊させ、結果として利用者が必要なサービスを受けられなくなる恐れがある。
求められているのは、介護報酬改定と最低賃金政策の整合性を高めること、年収の壁を抜本的に解消すること、さらに賃上げを支える税制や補助制度の拡充だ。介護事業者は「支援策がなければ撤退を余儀なくされる」と訴えており、介護の持続可能性が問われている。
社会の高齢化が進む中、介護基盤の脆弱化は国民全体の生活に直結する。今回の調査は、介護政策の再設計を迫る強い警鐘といえる。
この投稿は石破茂の公約「最低賃金の着実な引き上げ(2020年代に全国平均1500円)を実現」に関連する活動情報です。この公約は31点の得点で、公約偏差値46.2、達成率は0%と評価されています。