2025-07-09 コメント投稿する ▼
石破首相「北方領土を除けば長崎が海岸線日本一」発言に波紋 領土主権と国防を揺るがす軽率な一言
石破首相「北海道から北方領土を除けば日本一」発言に波紋 軽率発言が問われる“領土観”と国防意識
参院選の応援演説中、思わぬ発言が波紋を広げている。7月9日、長崎県諫早市で開かれた集会で、石破茂首相は「北海道に次いで2番目に海岸線が長いのは長崎県。北方領土を除いて考えれば、長崎が日本で一番海岸線が長い」と述べた。
この発言は、ロシアによる北方領土の不法占拠を事実上容認したかのような印象を与えるもので、日本の領土主権を損なう軽率な言動と受け取られかねない。
北方領土は「除く」対象ではない
北方領土(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)は、戦後一貫して日本政府が「日本固有の領土」であり「ロシアが不法占拠している」との公式見解を取り続けている重要な地域だ。防衛省や外務省の資料でも明記されているとおり、一度も他国の領土となったことがない歴史的経緯と法的根拠が存在する。
にもかかわらず、「除けば」という表現を用いることは、日本政府自身がその帰属をあいまいにしたり、現状追認しているかのように国際社会に誤解を与える危険性がある。
とりわけ首相という立場であれば、発言一つが外交・安全保障に直結する。現職首相が北方領土の法的地位について、事実上「排除可能なもの」として扱う発言を行ったのは極めて不適切であり、発言の撤回・訂正が求められて然るべきだ。
「海岸線」ではなく「領土防衛」を語るべき場面
加えて、長崎県の海岸線の長さをPRする文脈であっても、なぜ北方領土を「除く」必要があるのかは説明されておらず、合理性に欠ける。むしろ、領土問題を語るのであれば、北方領土を含めて日本の国土をどう守るか、防衛体制の強化や外交方針について語るべきだった。
石破首相はこれまで防衛庁長官や安全保障政策通として知られてきたが、今回の発言は国防を任される立場の政治家としての認識の甘さを露呈したとも言える。
“国防軽視”ともとれる表現は避けるべき
日本では、中国やロシアの動向に注視しながら、尖閣諸島や北方領土などにおいて領土主権の確保と国防強化が重要課題とされている中で、「除く」という発言は致命的なメッセージミスとなる可能性がある。
ロシアに対して明確な抗議や外交交渉を続けている立場を崩さないためにも、一国の首相として、発言には最大限の慎重さが求められる。いかに選挙応援の文脈であったとしても、外交・安保分野での失言は国内外への信頼を損なう結果につながりかねない。