2025-06-17 コメント: 3件 ▼
小泉進次郎農水相「コンバイン2000万円発言」に農家が困惑 農機リース推進案に現場との乖離
「高すぎる農機具はリースで」発言の真意
2025年6月17日、小泉進次郎農林水産大臣が行った「農業機械のリース推進」発言が波紋を広げている。農業機械の高額化と、それに見合わない収益構造に対し、農家側の切実な声が噴出する中、政治家の提案がまたしても現場の実情からかけ離れているのではないかという疑問が浮上している。
小泉大臣はこの日、経団連の筒井義信会長らと約10年ぶりとなる懇談を行い、企業の農業参入促進やスマート農業技術の推進、高速通信環境の整備などについて協議。会談後の会見で「米農家は2000万円のコンバインを1年のうち1ヶ月しか使わない。それならばリースを活用するのが合理的だ」と述べた。
建設業界を例に挙げ、「重機はリースが当たり前。農業機械もそうあるべきだ」と主張した小泉氏。しかし、現場からは「話が単純すぎる」との厳しい声が噴出している。
SNSに広がる困惑と怒り
小泉氏の発言は、農業の実態を知らない者の机上の空論だという批判がSNS上で相次いでいる。特に農繁期と農閑期の明確なサイクルを持つ農業特有の事情を無視した提案に対し、実際の生産者からは次のようなリアルな声が上がった。
「農繁期はだいたい同じ時期。リースなんて争奪戦になるのが目に見えてる」
「一ヶ月しか使わないからリースって……じゃあ、その一ヶ月に全国で足りるだけの台数を誰が用意するの?」
「農機具が高いのはわかってる。でも地方には農協の共同購入しか選択肢がないんだよ」
「建設業と農業を一緒に語るな。現場感なさすぎる」
「リース代が高すぎる。しかも、壊れた時の修理や保証は農家持ちってケースも多い」
確かに、農機具の価格は高騰を続けており、コンバインやトラクターは1台で数百万~2000万円超ということも珍しくない。これを一個人が所有するのはリスクが大きいのは事実だ。だが、だからといってリースが即座に万能な解決策とはならない。
「リース化」には制度の土台が未整備
日本の農業は、年々高齢化と人手不足に苦しみ、同時に法人化や集約化の波にもさらされている。そうした中で、小規模農家が生き残るためには、コスト削減とともに機械の効率的な運用が求められている。
ただし、それには「いつでも借りられる」「必要台数が確保されている」「修理や保険体制も万全」といった条件が必要不可欠だ。現在の農機リース市場は、そうした条件を満たすには程遠い。むしろ、「リースは新品購入より割高」「維持費や輸送コストが別途かかる」などの問題点が放置されたままだ。
さらに、農業機械は使用時期が地域や作物によって集中する傾向があり、リース業者が通年で機材を遊ばせるリスクをどう吸収するのかという課題もある。
この点については、政府主導で全国的な農機リースネットワークを構築し、自治体やJAと連携した在庫管理と流通調整が不可欠となるが、現段階ではそうした制度の青写真すら見えていない。
求められるのは減税と制度整備
小泉氏の提案の背後には、「農業に企業の知恵と資本を導入したい」という意図があるのだろう。だが、だからといって実態を無視した上から目線の施策を押しつけては、農業者の信頼は得られない。
今必要なのは、農業機械のリース化推進ではなく、まずは農機導入のための設備投資減税、償却制度の簡素化、そしてインボイス制度の撤廃だ。中小零細農家の経営環境は今や限界に近い。補助金をばらまくよりも、安定して利益を残せる仕組みを構築すべきである。
特にインボイス制度は、農業のように収入が不安定な分野に大きな負担を強いており、廃止こそが持続可能な経営への第一歩となる。農家が自立して機械を保有し、必要に応じてリースを選べる環境を整えることが、本質的な支援になるはずだ。
小泉農水相は現場と向き合うべき時
スマート農業の推進や民間企業との連携といった方向性は、否定されるべきではない。しかし、農業政策は現場と切り離されては意味をなさない。
小泉進次郎農水相には、現場の農家の声をもっと丁寧に聞き、彼らが「納得して使える制度」を作る姿勢が求められている。そうでなければ、「農業機械リース」という言葉だけが空回りし、また一つ政策が宙に浮くことになるだろう。