2026-03-10 コメント投稿する ▼
南海トラフ巨大地震に備え 72時間徹夜の指揮所訓練など 自衛隊や米海兵隊約3700人
こうした中、2025年1月下旬、陸上自衛隊中部方面隊は、南海トラフ巨大地震発生を想定した大規模な災害対処訓練「令和7年度南海レスキュー」を実施しました。 **総勢約3700人もの大規模な参加は、南海トラフ巨大地震のような広域かつ甚大な被害が想定される災害に対し、日米が緊密に連携して対処していくことの重要性を示しています。
背景:迫りくる巨大地震への危機感
南海トラフ巨大地震は、駿河湾から四国沖にかけてのプレート境界で発生すると予測される巨大地震です。マグニチュード9クラスの地震が発生した場合、震源に近い地域では激しい揺れが予想されるほか、広範囲で高さ数十メートルに達する津波が襲来する可能性が指摘されています。内閣府の試算によれば、最悪の場合、死者数が30万人規模に達し、経済的な損失も莫大なものになるとされています。2011年3月11日の東日本大震災から15年という節目を迎え、私たちは常に、いつ発生してもおかしくない次なる巨大地震への備えを怠るわけにはいきません。
指揮所の72時間:情報集約と連携の要
訓練の中核となったのは、兵庫県伊丹市にある伊丹駐屯地で実施された指揮所訓練です。地震発生の報を受けると、隊員たちは速やかにノートパソコンやホワイトボードなどの資機材を会議室に運び込み、壁面のスクリーンに状況を表示できるよう設営された空間を、訓練における指揮所として機能させました。この指揮所では、およそ72時間にわたり、24時間体制で情報共有と意思決定が繰り返されました。刻々と変化する被災地の情報、国内外の支援部隊からの連絡、そして関係する自治体やライフラインを担う民間企業からの情報などを集約・整理し、最適な対応策を練り上げるための調整作業が行われたのです。
こうした長時間の継続的な訓練は、実際の災害現場における指揮系統の混乱を未然に防ぎ、迅速かつ的確な情報伝達と意思決定能力を養うことを目的としています。限られた情報の中で的確な判断を下し、限られたリソースを最大限に活用するためには、指揮官だけでなく、それを支える隊員一人ひとりの能力が不可欠です。
各地での実働訓練:多様な被災地支援
指揮所での情報管理と並行して、全国各地で実働訓練も展開されました。愛知県では、最新鋭の輸送機である陸上自衛隊のV22オスプレイが投入され、被災地への迅速な物資輸送能力が試されました。オスプレイは、その垂直離着陸能力により、滑走路のない場所へも物資を届けることが可能です。
また、大規模災害時には道路網が寸断され、孤立集落が発生するリスクが高まります。こうした状況に備え、海上自衛隊のエアクッション艇(LCAC)が活用されました。LCACは、水上だけでなく、ある程度の陸上部分も走行できるため、海岸線から内陸部へのアクセスが困難な場合でも、大型車両などを輸送できます。今回の訓練では、中部電力の大型電源車をLCACに乗せ、海上から被災地に近い場所への輸送を行いました。これにより、電力供給が途絶えた地域への迅速な復旧支援が想定されています。
さらに、広島県呉市では、陸・海・空の自衛隊が連携する「海上輸送群」の活動拠点において、輸送艦への重機搭載訓練が行われました。地震によって道路や橋梁が破壊された場合、被災地の瓦礫撤去やインフラ復旧には大型の重機が不可欠です。それらを迅速かつ安全に輸送艦へ搭載し、被災地へ送り届ける手順を確認することは、陸上での復旧作業を円滑に進める上で極めて重要です。
統合された日米の力:約3700人の参加
今回の「令和7年度南海レスキュー」訓練には、陸・海・空の自衛隊員に加え、米海兵隊からも多くの隊員が参加しました。総勢約3700人もの大規模な参加は、南海トラフ巨大地震のような広域かつ甚大な被害が想定される災害に対し、日米が緊密に連携して対処していくことの重要性を示しています。
災害発生時には、国内のあらゆるリソースを結集しても対応が困難となる可能性があります。そうした事態に備え、米軍基地が近接する日本にとって、米軍との連携は不可欠な要素です。訓練を通じて、相互の運用体制や通信手順を確認し、共通の目標達成に向けた協力体制を強化することは、国民の生命と安全を守る上で大きな意味を持ちます。
継続される備え:次の災害への道
南海トラフ巨大地震は、いつ、どのような規模で発生するか、正確に予測することは困難です。しかし、その発生確率の高さは科学的に示されており、私たちは常に最悪の事態を想定した準備を進める必要があります。今回実施された指揮所訓練や各地での実働訓練は、そのための重要な一歩です。
今回の訓練は、単なるシミュレーションにとどまらず、指揮官のリーダーシップ、隊員一人ひとりの専門技能、そして関係機関との連携能力を総合的に高める貴重な機会となりました。しかし、災害への備えは、一度の訓練で完結するものではありません。技術の進歩や社会情勢の変化に対応しながら、訓練内容を継続的に見直し、改善していくことが求められます。国民一人ひとりが防災意識を高め、自助・共助・公助の連携を強化していくことも、巨大災害を乗り越えるための鍵となるでしょう。