2025-04-08 コメント投稿する ▼
“AI基本法”になぜしなかったのか――衆院本会議で梅谷議員が疑問呈す
日本のAI技術、世界に後れ
冒頭、梅谷氏は、日本がAI分野、とくに大規模言語モデルの開発で米中に大きく遅れを取っている現状を取り上げた。その理由として、官民の投資が不十分であることや、専門人材の不足を指摘。2016年から政府が進めてきた国家戦略にも触れつつ、「結果として海外との差はむしろ広がっているのではないか」と問いかけた。
懸念されるプライバシーや著作権の問題
AIの活用が進む一方で、プライバシーや著作権の問題も深刻になってきている。梅谷氏は、AIが個人の写真を元に不適切な画像を生成・拡散した事例や、著作物が無断でAIの学習に使われたとする報道を挙げ、「国民の不安が高まっている」と指摘。こうしたリスクに対し、政府は現行法で十分対応できていると考えているのか、あらためて見解を求めた。
ディープフェイクと選挙への影響
梅谷氏はまた、AI技術が悪用された場合の社会的影響にも触れた。とくに、ディープフェイクによって偽の音声や映像が拡散し、選挙に影響を及ぼす可能性を懸念。「米大統領選でも偽情報が問題になったが、同様のことが日本で起きたら、今の法律で対応できるのか」と政府に問うた。
シンギュラリティへの備えも必要
AIの進化が急速に進むなか、「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼ばれる段階に達した場合、雇用の喪失や社会の混乱が起きる可能性もある。梅谷氏は、「科学技術の飛躍的進化は期待もあるが、それに伴うリスクも直視しなければならない」として、政府の見解と備えを求めた。
技術推進だけでいいのか?「基本法」にすべきでは
今回の法案は技術の「推進」に重点を置いているが、梅谷氏は「包括的なAI政策の基本法として整備すべきではないか」との立場を示した。AIには期待だけでなくリスクも多く、「国民に見える形で、国の姿勢を示すべきだ」と訴えた。
国民に「責務」を課す必要はあるのか?
法案には「国民の責務」としてAIへの理解と関心を持つことが明記されているが、梅谷氏はこの点にも疑問を呈した。「AIがわからない高齢者も責務違反になるのか」「データ提供を拒んだらどうなるのか」と問い、国民にとって分かりやすい説明が必要だと求めた。
質疑の最後、梅谷氏は「これからの社会は、AIと共に歩むことが前提になる」とした上で、「AIを社会にしっかりと組み込み、私たち一人ひとりが自らの道具として使いこなしていくことが大切だ」と語った。法案をめぐる議論が、AIとの向き合い方を国民全体で考える契機になるよう期待を示して締めくくった。