2025-11-05 コメント投稿する ▼
国際協力銀行がヤマコのインドネシア海苔事業を支援 協調融資1億円
日本政府系金融機関の株式会社国際協力銀行(JBIC)が、海苔加工で国内トップシェアを誇る株式会社ヤマコのインドネシア進出を金融面から支援することが明らかになりました。 みずほ銀行との協調融資により、成長が期待されるインドネシアの日本食市場への本格参入を後押しします。 インドネシアでは経済成長に伴う内需拡大により、日本食品への需要が急速に高まっています。
国内海苔業界の雄がアジア展開を加速
株式会社ヤマコは1974年に設立された愛知県安城市に本社を置く海苔加工業者で、年間約20億枚の海苔を乾燥加工し、海苔の保管・加工取扱高では国内トップシェアを誇る中小企業です。同社は「顧客第一主義」「地域への貢献」を企業理念に掲げ、2024年度の売上高は235億円、従業員数599名を擁する業界最大手の小浅グループの子会社として事業を展開しています。
海苔の火入乾燥と冷凍保管技術に強みを持つ同社は、コンビニエンスストア向けおにぎり海苔の製造で1日250万食以上を手がけ、国内トップの生産数を記録しています。特にフィルムに包まれたパリパリ食感の海苔技術では業界をリードし、大手コンビニチェーンや全国展開の飲食店に製品を供給しています。
ヤマコはこれまでも積極的な海外展開を進めており、1992年に中国江蘇省連雲港に初の合弁企業を設立して以来、現在では中国に5つの合弁企業、台湾、韓国にも合弁会社を設立し、世界各国に高品質な海苔を提供してきました。
インドネシア市場の高い成長性に着目
インドネシアでは経済成長に伴う内需拡大により、日本食品への需要が急速に高まっています。2023年の日本食材市場規模は約3500億ルピア(約350億円)に達し、日本食レストランの店舗数も2021年の2700店舗から2023年には4000店舗まで増加しています。
特に注目すべきは、インドネシアの日本食材人気ランキングで海苔が第5位にランクインしていることです。寿司やおにぎりの人気とともに海苔の需要が拡大しており、ジャカルタを中心とした都市部では「パパイヤ」「イオンストア」などの日系スーパーマーケットで日本の食材が幅広く販売されています。
「インドネシアで寿司がこんなに人気になるとは思わなかった」
「おにぎりを買って食べる習慣が定着してきた」
「健康志向で日本食を選ぶ人が増えている」
「海苔の独特な味に最初は戸惑ったが、今では欠かせない」
「コンビニでおにぎりが買えるのは便利」
現地の消費者からはこうした声が聞かれ、健康志向の高まりとアジア料理ブームが追い風となって日本食市場の拡大が続いています。
現地法人設立で本格進出へ
ヤマコは2024年に「PT. KOASA INTERNATIONAL INDONESIA」を設立し、インドネシアでの事業基盤構築を進めています。この現地法人では、新たに建設する海苔加工工場において、一般消費者用および業務用の焼海苔、味付け海苔を製造し、インドネシア国内市場への供給を予定しています。
インドネシアでの現地生産は、輸送コストの削減や供給の安定化、現地の嗜好に合わせた商品開発などの観点から戦略的意義が高いとされています。特にイスラム教徒が人口の約87%を占めるインドネシアでは、ハラル認証への対応も重要な要素となります。
JBICの支援により、同社は中長期的な視点でインドネシア市場での地位確立を目指します。現地生産を通じて価格競争力を高め、インドネシア人の食文化に根ざした商品展開が可能になると期待されています。
政策金融による戦略的支援
今回のJBICとみずほ銀行による協調融資総額は1億円となります。JBICは一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、日本企業の海外事業展開を支援し、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献することを目的としています。
2024年度のJBICの出融資・保証承諾額は約1兆5061億円に達し、その中でも日本の中堅・中小企業の海外事業展開支援として計61件、総額約130億円の融資・保証承諾を行っています。ヤマコへの支援もこうした政策の一環として位置づけられ、中小企業の海外展開モデルケースとしても注目されています。
協調融資は民間金融機関との連携により、リスク分散と資金調達の多様化を図る仕組みで、JBICの標準的な支援手法です。みずほ銀行をはじめとする民間金融機関との協働により、民間資金の動員効果も期待されます。
インドネシアの日本食市場は今後も年平均成長率4.5%で拡大し、2028年には約4500億ルピア規模に達すると予測されています。ヤマコの現地進出は、成長市場での事業機会獲得と、海苔という日本の伝統食材の国際普及という観点から、大きな意義を持つ取り組みといえるでしょう。