2025-11-30 コメント投稿する ▼
山添拓氏「台湾有事」発言撤回を要求──日中関係と日本の安全保障巡る論争
山添氏は「日本が攻撃されていない状況でも集団的自衛権を発動できる可能性があるというのは、戦争への道を開く非常に危険な言葉です」と述べました。 さらに山添氏は、1972年の日中国交正常化に際して結ばれた日中共同声明において、日本が「台湾は中国の領土の不可分の一部である」という中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」とした合意を示し、「今回の首相発言は、その立場との整合性を欠くものだ」と指摘しました。
存立危機事態の発言に強い警戒
2025年11月30日、NHKの「日曜討論」に出演した山添拓・政策委員長(日本共産党)は、高市早苗首相による「台湾有事は“存立危機事態”になり得る」という発言をめぐり、撤回を強く求めました。山添氏は「日本が攻撃されていない状況でも集団的自衛権を発動できる可能性があるというのは、戦争への道を開く非常に危険な言葉です」と述べました。実際に高市首相は、台湾海峡で米中の武力衝突が起こった場合、「どう考えても存立危機事態になり得る」と答弁し、日本の自衛隊が米軍支援で参戦する可能性を示唆したものと受け止められています。
山添氏は「このまま放置すれば、日本も中国も甚大な被害を被る。憲法も蹂躙(じゅうりん)されかねない」として、「発言撤回こそが唯一の解決策だ」と強調しました。
外交合意と日本の伝統的立場への違反
さらに山添氏は、1972年の日中国交正常化に際して結ばれた日中共同声明において、日本が「台湾は中国の領土の不可分の一部である」という中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」とした合意を示し、「今回の首相発言は、その立場との整合性を欠くものだ」と指摘しました。加えて、2008年の共同声明で示された「双方は互いに脅威とはならない」という合意にも反すると批判。日中間の外交合意と、長年維持してきた日本の戦略的あいまい姿勢――いわゆる“ストラテジック・アンビギュイティ”――を壊す発言だと強く非難しました。
山添氏は「日中間の対立や緊張をあおるのは避けるべきだ。外交は対話と合意に基づくべきで、武力の威嚇ではなく冷静で理性的な対応が必要だ」と訴え、首相答弁の撤回と対話重視を求めました。
与党・他党の反応と世論の割れ
一方、与党側を代表して出席した自由民主党の小林鷹之政調会長は「政府の従来の立場を変えるものではない」と発言し、撤回の必要はないと主張しました。国民民主党の田中健政調会長代理、参政党幹部も「可能性を示したに過ぎず、撤回の必要はない」との見解を示しました。これにより、主要政党の多くが高市首相発言を容認する姿勢を取る結果となっています。
現在、日本国内では「台湾有事が日本の存立に関わるか否か」を巡り、賛否の声が割れています。ある世論調査では、「集団的自衛権による対応に賛成」が一定の支持を得ているとの報告もありますが、地域の安全保障リスクや日中関係の悪化を懸念する声も根強い状況です。国際社会、とりわけ隣国中国への影響を考えれば、日本がこの発言を軽率に扱うことは難しいという指摘が多くあります。
今後の焦点 ― 発言撤回と外交の舵取り
今回、山添氏が公の場で撤回を強く求めたことで、与野党、さらには国会全体で「台湾問題への日本の関わり方」について再検討の機運が高まる可能性があります。仮に撤回がなければ、日本は日中関係でこれまで以上に厳しい立場に直面しかねません。
現実的な外交環境、そして憲法や法律の枠組みの中で、どのように国益と地域の平和を守るのか。今後の国会議論と政府の対応が、日中関係のみならず、東アジアの安全保障の帰趨を左右する重大な局面にあると言えます。