2025-11-11 コメント投稿する ▼
富山県、中国旅行会社4社招聘で誘客促進へ 北陸観光を巻き込む戦略
訪問先には富山市の富山ガラス工房、黒部市の宇奈月温泉、射水市の川の駅新湊、高岡市の能作、南砺市の五箇山、砺波市の庄川峡・南砺市いなみ木彫りの里創遊館などが名を連ねます。 招聘された4社の中国旅行会社は、2025年11月12日〜16日の日程で来日し、うち11月12〜14日に富山県内の観光地を巡ります。 今回の招聘事業は、富山県が観光振興の中で中国市場を重視する姿勢の一端を示しています。
富山県・中国旅行会社招聘でインバウンド誘客に全力
富山県は、中国から旅行会社4社を招聘し、県内観光地の視察を通じて中国市場からの誘客促進を図ると発表しました。これは石川県との連携によるもので、実施時期は2025年11月12日〜16日で、県内訪問は11月12日〜14日。訪問先には富山市の富山ガラス工房、黒部市の宇奈月温泉、射水市の川の駅新湊、高岡市の能作、南砺市の五箇山、砺波市の庄川峡・南砺市いなみ木彫りの里創遊館などが名を連ねます。
本稿では、この招聘の背景・意図・課題を整理するとともに、地域観光振興策としての位置づけを探ります。
背景と意図:インバウンド回復と中国市場の重要性
新型コロナウイルス禍を経て、国内各地で訪日外国人観光客、いわゆるインバウンドの回復・拡大が観光振興の重要課題となっています。富山県も例外ではなく、アジア圏を中心に誘客強化を図っています。実際、同県では台湾・韓国等からのインフルエンサー招聘やSNS発信を活用した観光プロモーションを展開しており、今回の中国旅行会社招聘もその延長線上にあります。
中国市場が特に注目されるのは、訪日観光客全体に占めるアジア発の割合が高く、自由旅行化の進展により個人旅行者を始め多様な層を取り込む必要があるからです。富山県は、旅行会社をまず招聘して視察してもらうことで、現地の旅行手配者に「この地域を自社ツアーに採用したい」と思わせる機会を設け、誘客の先行契約・ツアー設定につなげる狙いがあります。
また石川県との連携という点も重要です。単一県でのプロモーションより、北陸エリアとしてのブランド化・広域観光ルート化を図ることで、旅行会社にとっての魅力度・ツアー商品の設定しやすさを高める意図が読み取れます。
実施内容:視察先と日程
招聘された4社の中国旅行会社は、2025年11月12日〜16日の日程で来日し、うち11月12〜14日に富山県内の観光地を巡ります。12日には富山市・富山ガラス工房、黒部市・宇奈月温泉。13日には射水市・川の駅新湊、高岡市・能作、南砺市・五箇山。14日には砺波市・庄川峡、南砺市・いなみ木彫りの里創遊館を訪問。
こうした視察先はいずれも“北陸ならでは”の観光資源を備えており、ガラス工房や木彫り、峡谷・温泉という異なるテーマ性を持っています。旅行会社に対して“体験価値”“地域らしさ”“季節性”を訴求できるラインアップです。また県が広報で「認知度向上及び誘客促進を図る」と明言しており、単なる視察ではなく成果を見据えたプロモーションと位置づけられています。
課題と指摘されるポイント
重要なのは、視察を機に「誘客効果」をいかに実現するかです。招聘して終わりではなく、撮影・商品化・旅行会社との連携・具体的なツアー造成・広告展開を次につなげなければなりません。インバウンド観光は競合も激しく、視察から実客誘致までのプロセスを設計できているかが問われます。
また、中国市場の特性も留意すべきです。言語・決済・交通アクセス・多言語対応・マナー・旅行手配の慣習といった“受け入れ整備”が伴っていないと、現地からの旅行会社が自社商品として位置づけをためらう可能性があります。富山県でもこれまでもインフルエンサー招聘や情報発信を強めているものの、個人旅行者中心の変化もあり、更なる“高付加価値化”や“満足度向上”が背景にあります。
さらに、地域として旅行会社・観光業者側が“受け入れ体制”を整えておらねば、誘客のための前提条件に欠ける恐れがあります。たとえば、訪日中国人の移動手段・宿泊・ガイド・食事といった複合サービスを満たすことが重要です。
将来展望:地域観光振興の次のステップ
今回の招聘事業は、富山県が観光振興の中で中国市場を重視する姿勢の一端を示しています。次のステップとしては、視察の成果をもとに旅行会社がツアー商品を設定し、それを実際に中国市場向けに販売する段階へ進める必要があります。これには、ツアー造成を県が補助する、旅行会社との共同プロモーションを企画する、多言語対応や決済環境整備を促すといった支援が求められます。
また、訪日旅行者の“量”を追うだけでなく“質”を高め、地域経済への還元を意図するならば、宿泊延泊化、高額消費ツアー、地域体験・地域滞在の提案が鍵です。富山県がガラス工房・木彫り・峡谷という差別化資源を持っている点は強みとなり得ます。
ただし、中国市場に依存しすぎるリスクもあります。為替・政治・安全保障といった外的要因が旅行市場に影響を与えやすいため、アジア他地域や欧米豪市場を視野に入れた多元的戦略も必要です。
富山県が中国の旅行会社4社を招聘して視察を行う今回の事業は、インバウンド回復期において“中国市場への本格取組み”を示すものです。ただし、招聘というスタート地点に留まらず、視察成果をツアー商品化・実旅行者誘致へとつなぐ仕組みづくりが肝心です。県・地域・旅行会社が連携し、受け入れ態勢も含めてさらなる準備を整えなければ、視察効果は短期的・限定的になってしまう可能性があります。地域観光振興を志す中で、富山県が次の一手をどう打つかに注目です。