2026-02-24 コメント投稿する ▼
竹島式典への自民党三役派遣:高市政権が直面する「領土」と「外交」のジレンマ
特に、領土問題に対して強い姿勢を示すと期待されていた高市早苗首相が、閣僚の派遣を見送ったことへの落胆は大きいものでした。 今回、有村総務会長が派遣されたことは、党内での竹島問題の優先順位が一段階上がったことを示唆しています。 党三役の派遣について、有村氏は「より大きな国益を考えた判断」と説明しています。
「竹島の日」式典と政府の対応
2026年2月22日、島根県松江市で「竹島の日」記念式典が開催されました。この式典は、韓国による不法占拠が続く竹島の早期返還を求める重要な場です。しかし、今回政府が派遣した出席者は、例年通り内閣府政務官にとどまりました。
この対応に対し、会場では厳しい声が上がりました。特に、領土問題に対して強い姿勢を示すと期待されていた高市早苗首相が、閣僚の派遣を見送ったことへの落胆は大きいものでした。保守層からの支持が厚い高市政権にとって、この判断は支持基盤との間に微妙な摩擦を生む結果となっています。
一方で、自民党側は新たな動きを見せました。党の最高幹部である「党三役」の一人、有村治子総務会長を初めて式典に派遣したのです。これは、政府としての外交的配慮を維持しつつ、党としては問題解決への姿勢を強めるという、苦肉の策とも言える判断でした。
自民党三役の初派遣という「前進」
これまで自民党幹部の派遣は、組織運動本部長という役職にとどまっていました。今回、有村総務会長が派遣されたことは、党内での竹島問題の優先順位が一段階上がったことを示唆しています。有村氏は記者会見で、この派遣が鈴木俊一幹事長の指示であったことを明かしました。
有村氏は式典の挨拶で、ドイツの法学者の言葉を引用し、「領土の一部を失って黙っている国民は、すべてを失う危険がある」と強く訴えました。これは、国民の意識啓発が領土を守るための第一歩であるという、彼女自身の持論に基づいたものです。
党三役の派遣について、有村氏は「より大きな国益を考えた判断」と説明しています。これは、単に感情的な反発を強めるのではなく、政権与党として現実的な外交ルートを確保しながら、国内向けのメッセージも発信するというバランス感覚を強調した言葉といえるでしょう。
保守層の期待と現実のギャップ
今回の式典で注目されたのは、高市首相に対する厳しいヤジでした。高市首相は、2025年9月の自民党総裁選の際、「閣僚が堂々と式典に出席すべきだ」という趣旨の発言をしていました。この発言を覚えていた支持者にとって、今回の政務官派遣は「公約違反」のように映ったのです。
式典では、日本保守党の百田尚樹代表が「最も効果があるのは高市総理が来ることだ」と述べ、会場からは賛同の声が上がりました。SNS上でも、首相の姿勢を批判する声が拡散され、政権にとっては厳しい世論にさらされる形となりました。
しかし、一国のリーダーとなれば、個人の信念だけで動くことは難しくなります。特に領土問題は、相手国との関係だけでなく、国際社会全体の中での日本の立ち位置を考慮しなければなりません。高市首相が直面しているのは、理想と現実の激しいギャップであるといえます。
変化する国際情勢と韓国との連携
なぜ、高市政権は閣僚の派遣を見送らざるを得なかったのでしょうか。その背景には、激変する国際情勢があります。2025年12月以降、アメリカのトランプ大統領は「西半球重視」の姿勢を打ち出し、アジアへの関与を相対的に弱める可能性を示唆しています。
このような状況下で、中国やロシア、北朝鮮といった近隣諸国の脅威に対抗するためには、日本と韓国の連携がこれまで以上に不可欠となっています。竹島問題で韓国を強く刺激し、日韓関係が決定的に悪化することは、東アジア全体の安全保障を揺るがしかねないリスクとなります。
有村氏が述べた「より大きな国益」とは、まさにこの安全保障上の必要性を指していると考えられます。領土を守るという強い意志を持ちつつも、周辺国との決定的な対立を避けるという、極めて難しい外交の舵取りが求められているのです。
地元の冷静な視点と今後の課題
式典会場での喧騒とは対照的に、地元の島根県では今回の対応を比較的冷静に受け止める動きもあります。島根県議会の原拓也氏は、閣僚の出席が見送られたことには残念としつつも、韓国との関係を考慮する政府の立場に一定の理解を示しました。
地元関係者にとって、最も重要なのは「問題が風化しないこと」です。その意味で、自民党が党三役を派遣したことは、中央政界が竹島問題を忘れていないというメッセージとして、前向きに評価されています。ヤジを飛ばす層とは異なる、現実的な解決を望む地元の声も無視できません。
今後の課題は、この「党三役派遣」という一歩を、どのように具体的な返還運動や外交交渉につなげていくかです。単なる儀式的な出席に終わらせず、国民全体の関心を高めながら、国際法に基づいた解決の糸口を探る粘り強い努力が、高市政権には求められています。