2025-04-25 コメント投稿する ▼
公約大阪・関西万博「船アクセス計画」が頓挫 行政縦割りと採算甘さが生んだ“絵に描いた餅”
船アクセス構想、なぜ頓挫したのか
大阪・関西万博に向け、夢洲に整備された船着場とアクセス航路。各地から船で来場できる壮大な構想は、開幕後も定期就航ゼロという現実に直面している。華々しく発表された船アクセス計画は、なぜ「絵に描いた餅」と化したのか。その背景には、複合的な要因が潜んでいた。
主な失敗要因まとめ
① 船輸送を支える採算モデルの甘さ
② インフラ整備と運行事業者誘致のミスマッチ
③ 縦割り行政による責任の曖昧化
④ 来場者案内・動線設計の不足
⑤ 万博運営側の後手に回った広報対応
船会社側の声「採算が取れない」「リスクが大きい」
実際に取材した船会社の担当者は、運航に踏み切らなかった理由を次のように語った。
「淀川航路は水門(閘門)の通過に時間がかかり、定時運航が非常に難しい。また、川幅も狭く、大型船が出入りするリスクもある。
燃料費や人件費も高騰する中、短期イベント向けだけに船を回すのは非常に難しい決断だった。」
別の事業者はこう述べた。
「夢洲周辺は波が高くなりやすく、運休リスクが高い。アクセス利便性も電車・バスが中心で、船便の需要予測は非常に弱かった。」
つまり、物理的・経済的リスクの高さに対して支援策も薄く、採算が取れないと判断したことが、船会社側が二の足を踏んだ大きな理由であった。
万博運営側の対応「案内強化」でカバーできず
万博運営事務局は、船便案内の強化や、ホームページ上での情報整理を進めている。しかし、肝心の航路自体がほとんど存在しない現状では、利用者の混乱を完全に防ぐことは難しい。
特に問題視されたのは、
- 「中之島GATEサウスピア」と「ノース」が徒歩1km以上離れているにもかかわらず、統一して「中之島GATE」と案内していること
- サウスピア側で船を待ってしまう来場者が発生しているにもかかわらず、現地案内の修正が遅れていること
である。
他都市との比較:なぜ東京の水上バスは成功したのか
大阪と対照的に、東京都では隅田川を中心とした「東京水辺ライン」や「東京都観光汽船(水上バス)」が、長年安定的に運航されている。
成功要因は以下の通りである。
- 都市中心部(浅草、お台場、浜離宮)など、観光地を水上でダイレクトに結んでいる
- 桟橋施設が街中にあり、徒歩5分圏内でアクセス可能
- 運航本数が多く、利便性が高い
- 乗船自体が観光体験となっている(船内ガイド付き、展望デッキなど)
つまり、移動手段ではなく観光そのものとして船を位置づけたこと、さらに陸上交通とのシームレスな接続を意識した設計が成功のカギとなった。
大阪万博との決定的な違い
大阪・関西万博の船輸送は「アクセス手段」としてのみ捉えられ、観光体験としての付加価値づけがほとんどなかった。また、駅やバス停からの動線設計も甘く、「船に乗る」までの心理的・物理的ハードルが高かった。
この違いが、東京のような水上交通の定着と、大阪万博の失敗との分岐点となった。
インフラ整備の意義と今後の課題
とはいえ、十三船着場、中之島GATE、淀川ゲートウェイなどの整備は、将来的な防災・減災に寄与する可能性がある。
災害時には道路寸断が予想されるため、大規模な船舶輸送ルートの確保は重要な意味を持つ。
南海トラフ巨大地震への備えとして、完成した船着場や航路は重要な資源となり得る。
万博後も継続的に航路整備を続け、単なる一時的施設で終わらせないための戦略が求められている。
大阪・関西万博における「船輸送計画」は、行政・民間の連携不足、採算設計の甘さ、現場対応の遅れなど、複合的な失敗要素が重なった。
しかし、水都・大阪の潜在力を考えれば、今後に向けた巻き返しは可能だ。単なる反省に留めず、「水上交通の新たな未来像」を描く契機とすべきである。
この投稿は吉村洋文の公約「2025年大阪・関西万博の成功と大阪府と大阪市の連携強化」に関連する活動情報です。この公約は10点の得点で、公約偏差値35.8、達成率は0%と評価されています。